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―転―

「「魔王ッ!?」」

 勇者二人は驚愕しました。

 

 確かにその女の人は魔王っぽい格好をしていました。

 頭には山羊のような曲がりくねった角が。背中からは蝙蝠のような翼が生えていて、手には巨大な鎌を持っていました。

 

 服装も刺激的です。マントを着ていますが前は空いています。彼女が肌の上から着ていたのは水着のような服でした。服と言っても殆ど肌をさらけ出しています。隠すべき所がギリギリ隠れてるエロ水着。勇者(♂)は思い出します。確かあのような水着を〝すりんぐしょっと〟と呼んでいたなぁ、と。


「妾が魔王だっていう証明が必要かえ?」

「必要ないわ。あなたから邪悪な魔力がドロドロ溢れ出てるのが感じられるから」

「まさかそちらから出向いてくれるとはな」

 勇者二人が剣を構えます。

 

 それに対し魔王は魔法でも使ったのか蝙蝠のような翼と手に持つ鎌を消しました。戦う気はないとでも言いたいのでしょうか?

 代わりに両手でその豊満なバスト(勇者♀より大きい)を強調するように、自分の体を抱くような姿勢で話をします。


「今日ここに来たのはある交渉があって来たの。交渉と言うよりお願いといった方が適切か」

「お願い? 魔王が?」

「そうそこの殿方。お主、妾の城に来ないか? 妾の夫という形で」

「「ええッ!?」」

 勇者二人は再度驚愕しました。しかし魔王は気にせず続けます。


「率直に申す。妾はそなたの子供が欲しい。つまりそなたと子作りしたいということじゃ。精力続く限り、何人でも」


「え、えええええええええええ? ちょ、ちょっと何言ってんのあんた!? 魔王が子作りってどういうことー!?」

「そんなに驚くことかえ? 我ら魔族かて元を辿れば人間。ならば子孫を残す方法も人間と同じという事じゃ。つまり♂と♀の合体。妾は♀だから♂を求めるのは必然であろう?」

「つ、つまり……」

 勇者(♂)は一旦区切り、一呼吸置いて言葉を繋げました。

「オレに婿養子になれってことか?」


「そんなに難しい事ではない。そなたは妾の城に来て妾と年がら年中合体していればよい。それ以外にやってもらうことなどない。勿論、用済みになったら殺すとか、一生鎖付きの奴隷とかではない。お主に不自由などさせぬ。まあ、城から出たいと言うのであればそれなりの覚悟はしてもらうが」


「ヒモになれってか」

「妾が求めるのは純粋にお主の精子のみ。逆にお主の欲望のままに妾を犯しても構わぬ」

 美人でないすばでぃな魔王様はまたしてもその大きなお胸を強調しながら言いました。

「欲望のまま……」

 魔王の言葉に、勇者(♂)の頭の中は揺らいでしまいます。

 

 理性と欲情。

 使命と人生。

 未来と現在。

 

 他にも色々な感情が渦巻いていました。

 勇者(♂)はしばし黙ってしまいます。そんな姿を見た勇者(♀)はすかさず正気を取り戻させようとします。


「ゆ、勇者様っ!! なにを葛藤なさっているのですか!? 魔王の甘い誘惑に乗ってはいけません! 私達は魔王を倒し、世界を救うという使命があるのですよ!!」

「使命…………でも…………」

「ウフフ。お主の好みのプレイをしても良いのだぞ? コスプレ、ローション、玩具、痴漢、野外、縛り、調教…………あとは一人でも子供が出来さえすれば尻も構わぬが……大前提としては子作りが基本じゃ」

「ろ、ローション…………だと?」

 どうやら勇者(♂)はぬるぬるプレイがお好みのようです。


「勇者様っ!! ダメです! お気を確かにッッ」

「何なら姉妹丼も可能じゃ。妾は長女。下に美乳の次女、微乳の三女がおる。妹たちも妾に劣らぬ美少女であるぞ。勿論、妹たちに個別で子作りしても構わぬ。……三女に至っては見た目幼女じゃぞ幼女」

「幼女を犯してもいいのか……」

「わ――――――――っ!! ダメですよ勇者様! 犯罪ですそれは!! ……それより今大事なことを聞きましたでしょ? 魔王は三人いるんです。一人残らず倒さないとまた後世に魔王が復活しちゃいますよ!」

「一人残らずってお前……幼女を殺せってのか? この人でなし!!」

「幼女を犯そうとした人に言われたくありませんっ! とにかく魔王が復活する理由が分かったでしょう? 隠し子がいたんですよ。もしかしたら今言った三人ってのもウソである可能性がありますね。もっといるかもしれません!」

 

 名探偵のように勇者(♀)は魔王を指さしました。ですが、魔王の方は特に慌てたりしません。余裕たっぷりの笑みで更なる新事実を告げます。


「なら妾の城に来て確かめてみると良い。ああ因みに、我ら魔族の子供は性別が皆『女』なのじゃ。男は絶対に生まれぬ。これは本当じゃ。でなければわざわざ出向いて男を誘惑する理由など存在せぬ。魔族同士で子供をつくれば良いのだからな。……もし、女勇者の言っておることが真実なら、そこはお主にとって桃源郷パラダイスではないか?」


「…………!!」

 もう勇者(♂)の中の天秤は魔王の方へ傾いています。この勇者が世界を裏切るのは時間の問題でしょう。


「ストップストップ! 勇者様落ち着いて考えてください! 仮にその話が本当だとしても、男が欲しいなら近隣の村や町からさらえば済む話です。世界中を旅している勇者を誘う理由はありません! やっぱりこれは私達をはめる罠なのです!!」

「そ、そう……だな……。おかしい、よな……」

「フフ。妾が勇者を求めるのは一重に〝強さ〟。強い男。そこらの村人Aとかと子供を成しても交わる度魔族の血が弱まるのみ。我ら魔族に対抗するほどの力が欲しいというわけじゃ。だから今の世に欲しい男は勇者であるお主のみ。……最近人間の王はその事に気付き、男女二人一組という対抗策をしてきたようじゃが、かえって誘い易くなったがのう」


「成る程。そういうことだったのね」

 勇者(♀)は納得しました。

 

 何故男女二人一組のパーティなのか?

 つまり魔王に誘われる前に勇者同士をくっつけようという目論みだったのです。長い旅の中、男女二人で行動していればきっとナニかあるに違いありません(このパーティ以外)。現に勇者(♀)の両親は魔王を倒す前に聖剣を股に突き刺して勇者(♀)を孕んでくれたのですから。


「さて勇者よ。話が長くなったが、そろそろ妾の城へ共に参ろう。妾の妹たちもそなたが来るのを待っておるぞ。今宵は乱交うたげじゃ」

 

 魔王はここで最強呪文を使ってきました。

 ただでさえ少し動いただけでズレてしまいそうなエロ水着を、自ら胸を隠している部分をズラしてきました。おっぱい丸見えです。

 

 ある男は言います。

〝確かに見えそうで見えない水着はエロい。しかし、そのきわどい水着がズレて見えちゃいけない所が見えたらもっとエロい!!〟……と。

 

 フラフラ……と、勇者(♂)は、魔王の方へ吸い寄せられるように歩いて行きます。

 

 勇者が世界を裏切る瞬間です。

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