表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
太陽なき世界のアストロ  作者: 夕凪


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/8

遠い太陽

 今日も町は暗く静かだった。住民がひそひそと話す声だけが聞こえる。日常の光景だ。


 おでんを売る闇市の屋台に、一人の客が席に着いた。酒を飲みながら談笑する客をよそに、男は大根とちくわを頼んだ。男は黒いローブのようなものを身に纏い、仮面をつけている。まぁ、今の世の中ではおかしな格好ではない。


 男はおでんの皿が目の前に出されると、傍の割り箸を取った。そして、一口、また一口と静かに口に運んだ。口へ運ぶ間隔はとてもゆっくりで、よく味わっている様子だった。


 男がおでんを頬張っていると、傍で爆発音が響いた。店内は一瞬だけ静まり返り、客は爆発音が聞こえた方を向いた。しかし、店内はすぐにまた談笑で満たされた。この爆発も、もはや日常となっている。


「…ごちそうさん。」


 男は代金千二百五十円を支払い、颯爽と店内から走り去った。そして、懐から奇妙な形をした銃を取り出し、爆発音が聞こえた方へ向かった。


 男が現場に到着すると、そこでは巷で話題の強盗集団、【Dead Sky(デッドスカイ)】の構成員が民家に車で突撃し、金品を持ち去っている最中だった。男はすぐに銃を構え、構成員に向かって発射した。水色の閃光が、構成員に向かって飛んだ。構成員は全員で七人。そのうちの三人は何が起こったのか理解する間もなく倒れた。


 男の銃の発射音があたりに響く中、集まってきた野次馬の視線と、残った四人の構成員の視線が男に向けられる。


「…Dead Skyか。」

「…殺せ!」


 構成員は銃を構え、男に向かって発射した。男は華麗に避けていく。男の装甲にレーザーが掠めていく。避けると同時に銃を撃ち、一人、また一人と構成員が倒れていく。とうとう、残ったのは最後の一人だった。


「殺し屋風情が!!!」


 残った構成員は刀を抜き、男に襲い掛かった。男は銃を腰にしまい、構成員に殴りかかった。首の横に一撃、腹に三発。そして、足をかけて転ばせ、最後は銃を撃った。


「…末端か。」


 男は殺した男のバッジを取った。階級を確認すると、すぐにバッチを地面に捨てた。男は、腕に取り付けられているデバイスで連絡を取り始めた。


「Dead Skyの末端構成員を七名殺害した。」

「了解。ところで、例の件の情報は掴めたか?」

「あぁ。お前の予想通り、【夜葬(やそう)】が主犯だ。これからアジトを潰す。」

「応援は必要か?」

「必要ない。一人で十分だ。」


 男はそう言って通信を切った。傍で子供が壊れてしまった家を見て泣いている。一瞬その様子を見て立ち止まる。右手は小刻みに震えていた。直視したくなかった。


「お父さんが…お母さんが…!!」

「…」


 男は黙ったままだった。脳裏に蘇る、幼いころの自分。焼け焦げた家、倒れてくる燃え盛る棚、やけどと傷だらけの両手。


 あの日々を思い出すと、また頭痛が襲ってくる。そして、いつもの気落ちした気分に落とされる。実に悪い気分だ。


 子供は男の方を向き、泣きながら問いかけた。


「あんたは…ヒーローじゃないの?」

「…どうだろうな。」


 男はそう呟き、次の目的地を目指した。


 男は次の目的地に到着した。夜葬のアジトだ。夜葬はDead Skyと同様の犯罪者集団だ。人身売買から殺し屋稼業まで行う極悪非道な集団である。


「…始めるとするか。」


 男は右手に短刀、左手に銃を持ち、アジトへ侵入していく。隠れることなく正面から侵入したため、当然警報が鳴った。これは、男の計画の一部だった。


 すぐさま大量の人間がやってくる。刀を持った人間が男を取り囲んだ。男は歩みを止めることなく、ゆっくりと歩いていく。


「止まれ!殺すぞ!!」

「殺す殺す…どこへ行ってもそれしか聞かなくなったな。」


 男はそう呟き、すぐに敵三人を撃った。すぐに敵が刀を振り上げるが、男は短刀で相手の刀を弾いた。敵の刀は次々に宙を舞い、その瞬間に敵は倒れていく。敵は気づかぬ間に撃たれている。


「…上か。」


 男は視線をゆっくりと二階へ向けた。


 次の瞬間、天井が赤く裂けた。熱線が床を薙ぎ、木材が一瞬で炭化する。焦げた匂いが広がる。


 男は横へ滑るように移動し、壁に背を預ける。光線が通過した跡は、煙を上げて赤く輝いている。


「…NR-KS “Akatsuki”」

「よくも我々のアジトを荒らしてくれたな。」


 そこに現れたのは、夜葬の幹部だった。装甲を身に纏い、赤く光る刀を構えている。レーザー刀だ。


「答えろ。お前らの悪事を隠すことなく白状しろ。」

「はいそうですか、と答えるわけがないだろう!!」


 幹部は刀を振り、赤い斬撃を無数に飛ばしていく。赤い斬撃が飛んでくるとき、男の目が光る。世界がわずかに遅くなり、点と点が線でつながる。軌道が見えてくる。同時に、眉間のあたりに表現しにくい不快感が押し寄せる。男は銃で斬撃を撃つ。わずかに軌道がずれ、男へと直撃することはない。


男のローブに斬撃が当たるが、掠り傷程度である。途中、僅かに男の足や脇腹から出血が見られたが、男に斬撃が直撃しないことに、幹部はだんだんと腹を立てていった。


「畜生!!なんで当たらねぇんだ!もう一度!!」


 その時、刀の赤い光が消えた。幹部は突然武器が機能しなくなったことに驚き、刀を見つめてしまった。


「何で…!どうしっ…」


 その時、男の銃から水色の光が放たれた。幹部はその場に倒れた。即死だった。男は幹部の死体に近づき、NR-KS Akatsukiを拾い上げながら呟いた。


「…Noah Reactor製の武器は冷却が必須だ。オーバーヒートには気をつけろ。」


 男はもう動かない死体に向かって言った。返答は、もちろん返ってこなかった。その時、男のデバイスに一本の着信がきた。


「アストロ、順調か?」

「あぁ、たった今幹部を撃破した。残党が残っていないか確認が終わり次第帰還する。」


 男――アストロはそう言って通信を切った。この一部始終が、傍に置かれている監視カメラに収められていることを、アストロが知ることはなかった。この映像を遠くから確認している()()()()が、一言呟いた。


「あれが…イーグルアイか。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ