戻るための時間
リハビリは、想像以上に地味だった。ストレッチ、体幹トレーニング、可動域の確認。
「焦らないでください」
理学療法士は、何度もそう言った。
分かっている。頭では。
(レースの苦しさとは、違う)
帰り道、スマホを見る。
部のグループLINE。練習メニュー。タイム報告。
画面を閉じる。
(今は、比べない)
そう決めたはずなのに、 夜になると、どうしても考えてしまう。
――戻れるのか。戻って、同じ場所に立てるのか。
机に向かい、英語の長文を読む。
でも、思考は水に引き戻される。
「……だめだ」
一度、ペンを置く。
そのとき、スマホが震えた。
碧人からのメッセージ。
〈今日はリハビリどうだった?〉
〈地味だった。でも、やることは分かってきた〉
少しして、返信が来る。
〈それ、進んでるってことだと思う〉
画面を見つめながら、優希は小さく息を吐いた。
(ちゃんと見てくれてる)
結果じゃなく、過程を。
翌日。久しぶりに、プールサイドに立った。
入水は禁止。見学だけ。
水面が、眩しかった。
(また泳ぎたい)
強く、そう思った。
初めまして。お読みいただきありがとうございます♪
白瀬翠と申します。
水泳部を舞台とした健全なストーリーが少ないと感じたので今回このような作品を執筆させていただきました。
皆様に楽しんでいただけると幸いです。
また、誤字・脱字、不適切な表現等がありましたらコメントで教えていただけると嬉しいです。
その他なんでもお待ちしております。
この作品が日々努力するあなたの背中をそっと押せるような一作となりますように。




