隣にいるということ
碧人は、変わらなかった。連絡の頻度も。距離感も。
「大丈夫?」と何度も聞かない。「頑張れ」とも言わない。
ただ、必要なときに、そこにいる。
週末、学校近くのカフェ。
参考書を広げて、二人で勉強する。
「……この問題、どう解いた?」
優希が聞くと、碧人はペンを走らせながら説明する。
「なるほど」
理解できた瞬間、自然と口角が上がる。
「顔、明るくなった」
碧人が言った。
「そう?」
「うん。最近、前より」
その一言に、胸が少し熱くなる。
「ねえ、碧人」
「なに」
「もし、私が泳げなくなったら……どう思う?」
碧人は、少し考えてから答えた。
「どうも思わない」
「……え」
「水城は、水泳してるから好きなんじゃない」
その言葉は、さらっとしていた。 でも、嘘がなかった。
「努力してるとこ、前に進もうとしてるとこが好き」
優希は、言葉を失った。
水泳ができない自分。結果を出せない自分。
それでも、ここにいていいと言われた気がした。
「……ありがとう」
それだけしか言えなかった。
帰り道。
並んで歩きながら、夕焼けを見上げる。
距離は、近い。でも、触れない。
その曖昧さが、心地よかった。
(この人がいるなら)
水がなくても。結果がなくても。
前に進めるかもしれない。
優希は、そう思い始めていた。
初めまして。お読みいただきありがとうございます♪
白瀬翠と申します。
水泳部を舞台とした健全なストーリーが少ないと感じたので今回このような作品を執筆させていただきました。
皆様に楽しんでいただけると幸いです。
また、誤字・脱字、不適切な表現等がありましたらコメントで教えていただけると嬉しいです。
その他なんでもお待ちしております。
この作品が日々努力するあなたの背中をそっと押せるような一作となりますように。




