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ドジっ子女神と借金だらけの王国へ  作者: マーたん


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オークとの交流

ダンジョンとは、本来、

踏み込めば争いが避けられない場所である。


剣を抜くか、

魔法を構えるか、

その二択しかないと思われてきた。


だが、

そこに一柱の女神が加わったことで、

選択肢は静かに増えた。


転び、迷い、

それでも立ち上がる女神。


これは、

敵とされた存在と、

言葉を交わした記録である。



オークとの交流


――敵対しないという選択


ダンジョン第二層。


湿った空気の奥から、

重い足音が聞こえた。


「……来るぞ」


剣士が剣に手をかける。


「待って!」


アステリアが、

思いきり手を挙げた。


「ちょ、女神様!?」


「大丈夫!」


その瞬間、

彼女は――


石に足を取られて転んだ。


ごろっ。


静寂。


曲がり角から現れたのは、

武装したオークの一団。


筋骨隆々。

牙。

低い唸り声。


冒険者たちが身構える。


だが。


オークたちは、

倒れている女神を見て――

動きを止めた。


「……?」


オークの長らしき個体が、

首を傾げる。


アステリアは、

床に寝転んだまま言った。


「こんにちは!」


「今日は調査で来たの!」


冒険者全員、

心の中で叫んだ。


(挨拶した!?)



オークの長は、

しばらく黙っていた。


やがて、

低い声で言う。


「……神か」


僧侶が息を呑む。


「通じている……」


アステリアは起き上がり、

服の埃を払う。


「うん、そう!」


「でもね」

「今日は怒られに来たわけじゃないよ」


オークたちがざわつく。


「このダンジョン、最近」

「冒険者いっぱい来てない?」


長は、

ゆっくり頷いた。


「……奪われる」

「食糧」

「寝床」


剣士が、

剣を下げた。


「……それは、事実だ」



アステリアは、

少し考えてから言った。


「じゃあさ」


「戦わない代わりに」

「話そう?」


オークたちが困惑する。


「……何を」


「どこまでなら入っていいか」

「どこはダメか」


冒険者たちがざわつく。


魔術師が小声で言う。


「……ダンジョン利用規約を」

「現地交渉で?」


「そう!」


アステリアは笑う。


「だって、住んでる人がいるんだもん!」



しばらくして。


焚き火。


オークと冒険者が、

向かい合って座っていた。


距離はある。

武器も置いていない。


オークの子どもが、

冒険者の盾をつつく。


「……固い」


斥候が苦笑する。


「そりゃそうだ」


僧侶は、

オークの傷を見て言った。


「……治療、しますか?」


オークの長は、

驚いたように目を見開いた。


「……なぜ」


アステリアが答える。


「敵じゃないから!」


簡単な理由だった。



別れ際。


オークの長は、

アステリアに言った。


「……神」

「また、来るか」


「うん!」

「次は転ばないようにする!」


冒険者たちは即座に言う。


「それは無理です!」


オークたちが、

低く笑った。



ギルドへの報告書。


第二層・オーク集落

敵対行動なし

理由:女神が先頭だったため

備考:通行区域の取り決め完了


受付嬢は、

今日も頭を抱えた。


だが――

ダンジョンから、

争いの気配は消えた。


転んだ女神が、

境界線を踏み越えた日。


それが、

この世界で初めての

「オークとの交流」だった。

オークとの交流は、

平和的解決と呼ぶには、

あまりにも不格好だった。


恐れは消えていない。

疑いも残っている。


それでも、

武器を下ろし、

火を囲んだ時間は確かにあった。


女神は奇跡を起こしたわけではない。

ただ、先に転び、

先に声をかけただけだ。


それがこの世界では、

十分すぎる変化だった。


争わずに済んだ一歩は、

いつか争わずに進む道になる。


その始まりを、

ここに記しておく。

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