第五都市・王都帰還公演
ドジっ子女神は〇〇
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第五都市・王都帰還公演
――地獄の晩餐会、王都に帰る
ついに、この日が来た。
王城前広場。
かつては戴冠式と軍事閲兵にしか使われなかった場所。
そこに今、
屋台、長机、鍋、酒樽、人、人、人。
過去最大規模。
民衆は王都だけでなく、
巡業を追いかけてきた者、
噂を聞きつけた者、
「よく分からんが面白そうだから来た」者で埋め尽くされていた。
舞台袖で、アステリアは呆然と呟く。
「……これ、ほんとに国政の一部?」
即答が返る。
「なっとるな」
蜂須賀・レオニア・ヴェスパリアは、腕を組んだまま一切の迷いなく言う。
「なっとるたい!」
ミズハも、すでに袖から身を乗り出している。
アステリアは頭を抱えた。
「私、王様だよね……?」
商人夫はもう達観した顔で、書類と胃薬を懐に押し込みながら言う。
「……ほな、始めましょか」
「地獄の晩餐会、王都公演」
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開幕の合図は、鐘でも太鼓でもなかった。
ミズハの声だ。
「待たせたねーーーっ!!」
王都が揺れた。
「今日はな!」
「神も王女も王様も!」
「同じもん食う日たい!!」
歓声。
それを、レオニアが即座に締める。
「並べ」
「押すな」
「奪うな」
「刺すな」
最後だけ、少し間が空いた。
「……刺すなは、王都でも必要なんですか?」
近衛兵が小声で聞く。
「念のためや」
レオニアは即答した。
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料理は、これまで巡業で集めた“国の味”。
港町の魚。
山岳都市の肉。
平原の穀物。
そして王都の酒。
アステリアは運ばれてくる料理を見て、息を呑んだ。
「……これ」
「全部、誰かの生活なんだ」
誰かが獲った。
誰かが育てた。
誰かが守った。
奇跡で生まれたものは、一つもない。
アステリアは、少し震える声で言った。
「……じゃあ」
「いただきます、しよっか」
その一言で、
王都は「国」として一つになった。
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途中、案の定トラブルは起きた。
・酒樽が倒れる
・子供が舞台に上がる
・アステリアが段差で転ぶ
「大丈夫かー!」
民衆の声が一斉に飛ぶ。
アステリアは、助け起こされながら笑った。
「……ありがとう」
「転ぶ王様で、ごめんね」
誰かが叫ぶ。
「それでええ!」
「逃げん王様や!」
レオニアは、その光景を黙って見ていた。
ミズハが、彼女の横で囁く。
「……悪くなかろ?」
「……悪くない」
レオニアは認めた。
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宴の終わり。
夕焼けが王城の壁を染める。
商人夫は、広場を見渡しながら、深く息を吐いた。
「……ワイな」
「最初、これは全部、地獄やと思っとった」
アステリアが隣に立つ。
「今は?」
「……」
商人夫は苦笑した。
「国や」
ミズハが大きく頷く。
「そうたい」
「祭りは、国の顔たい!」
レオニアは、静かに結論を出す。
「……この国は」
「もう奇跡だけで立つ国やない」
アステリアは、空を見上げて微笑んだ。
「うん」
「でも、奇跡を知ってる国ではいたいな」
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夜。
広場には、まだ人が残っている。
笑い声が消えない。
王城の壁に、新しい標語が貼られた。
「完璧じゃないが、見捨てない」
その下に、こっそり追記。
※ 地獄の晩餐会は前例となる
※ ただし責任者:全員
商人夫は、それを見てため息。
「……ほんま、逃げ場ない国やな」
ミズハが肩を組む。
「でも、帰りたくなるやろ?」
レオニアは頷く。
「……ああ」
「不思議とな」
アステリアは、広場の明かりを見ながら、いつもの言葉を口にした。
「さあ、出かけよう——
パレードが、始まるよ。」
今日もこの国は、
だいたい平和だった。
さあ、はじめよー
paradeが始まるよー




