博多弁女神 vs 蜂須賀王女の静かな冷戦
国が平和であることは、
必ずしも静かさを意味しない。
女神が口を開き、王女が眉をひそめるとき、
世界の平穏は一瞬で揺れる。
だが――
巻き込まれる者もまた、運命の一部。
静かな図書室や会議室は、戦場と化すことがある。
この章は、
強烈な個性同士の衝突と、被害者として耐える者の物語である。
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博多弁女神 vs 蜂須賀王女の静かな冷戦
王城の図書室。
棚には歴史書、戦略書、魔導の資料。
その間で――静かに張りつめた空気が漂っていた。
「……この資料、並べ方がめちゃくちゃやね」
ミズハが、肩を組んで棚を見上げながら言う。
「上から順に読めばわかることやろ?」
「……整理整頓は私の美意識に関わる」
蜂須賀・レオニア・ヴェスパリアは、腕を組んだまま冷静に答える。
「無駄な混乱は、国を危険に晒す」
「危険?ちゃうちゃう、これくらい問題なか!」
ミズハは腰に手を当て、広げた資料をバサバサと揺らす。
「そんだけで戦争始まるんやったら、毎日戦争ばい!」
レオニアは一歩も動かず、冷ややかな視線を送る。
「あなたの“勢い”は便利だが、制御せねば命取りになる」
ミズハは鼻で笑う。
「勢いこそ神の魅力たい!
それに、王女様はちょっと固すぎるばい」
図書室の空気は、厚く重い――
だが、二人とも声を上げて怒鳴ることはない。
静かに、しかし確実に、相手を封じようと心理戦を繰り広げている。
「……この書類、順番変えるなら、理由を説明せよ」
レオニアが淡々と言う。
「理由?理由は“楽になるけん”たい!」
ミズハは腕を広げて無邪気に笑う。
「効率よかろ?読みにくいとか、気にしすぎやけん」
「……効率だけでは、国は守れぬ」
王女の言葉は静かだが、鋭く突き刺さる。
互いに一歩も譲らない。
でも戦いは、言葉と視線だけで進む静かな戦争だ。
剣も魔法も使わず、
ただ存在と意思で相手を押す。
秘書がそっと横からメモを取りながら呟く。
「……この二人、今のところ戦争になってないのに、全員疲れそうです」
アステリアは、困った顔で観察する。
「……これ、収まるのかな」
ミズハは、肩をすくめて答える。
「収まらんやろうけど、慣れるばい」
レオニアは腕を組み直す。
「……慣れるだけでは、勝てない」
二人の視線が交わる。
戦争ではなく、静かな牽制。
王女の冷静さに、博多弁女神の勢いがぶつかる。
でも、衝突の先にあるのは、単なる破壊ではない。
「……互いに、歩み寄る気はあるんですか?」
アステリアは、そっと尋ねる。
ミズハはにっと笑う。
「歩み寄る?それは無理ばい!」
「でも、慣れたらうまくやれるっちゃけん」
レオニアも少しだけ眉を緩めた。
「……諦めずに、見守るしかなかろうな」
図書室の窓から、朝の光が差し込む。
光は二人の影を、長く床に落とす。
影は絡み合うが、決して交わらない。
静かな冷戦は、今日も続く。
だが、この世界は少しだけ安定している。
王女と女神、両方の存在を、誰も否定できないからだ。
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静かな冷戦、ついに爆発
王城の昼下がり。
書類の山が積み上がる図書室。
空気は、昨日より明らかに張り詰めていた。
「……この順番じゃ、予算案が意味を成さん!」
蜂須賀・レオニア・ヴェスパリアの声は、普段より低く、冷たい。
「意味?そんなもん、考えすぎやん!」
ミズハが大きく手を振る。
「数字だけ見とったら、楽しみも減るっちゃけん!」
アステリアは二人の間に立つ。
「……落ち着け、二人とも」
しかし、その声も空気に溶け、届かない。
「数字優先!精密に計算せんと、国が破産するたい!」
レオニアの指先が書類を指し、机を軽く叩く。
「楽しくなきゃ意味なか!国民が喜ぶのが先たい!」
ミズハは両手で資料を振り回す。
風でページが飛び、机の上は大混乱。
「きゃあっ!書類が――」
秘書が慌てて飛びつくも、
飛んでくる書類の勢いに負ける。
アステリアは深呼吸。
「……やっぱり、もう無理」
しかし次の瞬間、二人の視線がぶつかる。
その瞬間、空気がバチバチ弾けた。
「あなた、全然話を聞かんやろ!」
ミズハがレオニアに飛びかかる勢いで詰め寄る。
「あなたこそ、余計なことをやりすぎる!」
レオニアが机を軽く叩き返す。
その音に、アステリアも秘書も、思わず後ずさる。
机の上の資料は、舞い散る紙吹雪のように宙を舞う。
「……これは、戦争ですか?」
秘書が小声でつぶやく。
「戦争たい!」
ミズハが笑顔で答え、両手を振る。
「でも、勝負は資料整理能力で決まるっちゃけん!」
レオニアは腕を組み、睨みつける。
「……面倒だが、負けるわけにはいかぬ」
王女の瞳には、真剣さと怒りが混じる。
アステリアは、天井を見上げて小さくため息。
「……もう、この国は無事じゃ済まないかも」
だが、そこに救いの光が差し込む。
紙の山の間から、子供たちが顔を覗かせる。
「わぁ、楽しそう!」
「え……?」
二人の女神が振り向くと、子供たちは無邪気に笑い、
散乱した書類の上で遊び始めた。
アステリアは、そっと微笑む。
「……まあ、こうなるのは予想通りかもね」
ミズハは、子供たちを見ながら笑い声を上げる。
「ほらね、国は笑顔で回すのが一番たい!」
レオニアは、眉を少し下げるが、溜め息混じりに呟く。
「……仕方なかろう。少なくとも、壊れてはいない」
こうして、静かな冷戦は完全に爆発。
書類は散らかり、玉座の間は戦場のよう。
だが――誰も怪我はしていない。
国は、奇妙な形で回り続けているのだ。
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商人、巻き込まれる
王城の廊下。
「う、うわあああ!」
蜂須賀王女・レオニアの婚約者である商人が、書類と資料の山に押され、廊下を転がるように逃げてきた。
「な、なんで僕がこんな目に――!」
汗だくで、ネクタイは斜め。
靴は片方どこかに飛んでいる。
「そっちも参加したと?」
アステリアが苦笑混じりに言う。
「巻き込まれるのは、想定の範囲内だけど」
「いやいやいや!範囲内じゃない!」
商人は転がる途中で机にぶつかり、書類がさらに舞い散る。
「なんで女神と王女が、僕の仕事場で戦争してるんですか!」
廊下の端で、ミズハが得意げに手を広げる。
「巻き込まれるのは、神界の基本ルールたい!」
レオニアは腕を組んだまま、商人を一瞥。
「……王女の婚約者として、巻き込まれるのも覚悟の範囲内やろ?」
「覚悟の範囲外ですっ!!」
商人は叫ぶ。
その瞬間、アステリアが小声で呟く。
「……でも、後で助ける」
ミズハは肩をすくめる。
「まあ、笑い話になるけん!」
「ええ、絶対笑えないんですけど……」
商人の叫びが、廊下にこだまする。
その後、王城の会議室。
散乱した書類の山の中、商人は腰を下ろし、目をつぶって息を整える。
「……僕は、この国の何に婚約したんだろう……」
小声でつぶやく。
アステリアが肩を叩く。
「心配すんな。生きてるだけで勝ち」
レオニアは、冷静に書類を整理しながら言う。
「……王女としても、商人としても、君は経験値が増えるだけやな」
商人はゆっくり目を開け、二人を見上げた。
「……それ、褒め言葉ですか……?」
ミズハがニヤリと笑う。
「褒め言葉やろうが、全力で迷惑受けとるだけやけどな!」
こうして、商人もまた、**世界の騒乱に巻き込まれる“被害者兼観察者”**となった。
王女と女神の喧嘩は、まだまだ続きそうだ――
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地獄の調停任務(商人夫編)
王城の会議室。
書類は散乱。
資料は床に落ち、机はガタガタ。
アステリアとミズハは互いに譲らず、雷鳴のような声を飛ばしている。
「……あの、ちょっと待って!」
商人夫が手を上げる。
「わ、ワイが間に入るから、とりあえず落ち着いてや!」
「間に入れるなら、どうぞ!」
ミズハが笑顔で返す。
「でも無理やったら、どっか飛ばされても知らんけん!」
「飛ばされるとか、誰が思うねん!」
商人は両手を広げ、床に散らばる書類を必死で押さえつける。
レオニアは腕を組み、冷静に睨む。
「……商人、巻き込まれるのも覚悟しとけ」
「覚悟ちゃうわ!巻き込まれるの嫌や!」
商人は叫ぶ。
その瞬間、アステリアがすっと近寄る。
「……落ち着いて」
「商人は、私たちの喧嘩の被害者枠や」
「……なんでやねん!」
ミズハは手をパチンと叩き、笑顔で言う。
「まあ、ワイらが騒ぐんは自然の理やけん」
商人は深呼吸。
「しゃあない……しゃあないけど、せめて国民に迷惑かからんようにせなあかんやろ!」
アステリアは苦笑。
「……そう、それがあなたの仕事」
レオニアもわずかに眉を緩め、低く呟く。
「……商人、我慢強いな」
商人は書類の山を片手で抱え、もう片方で二人の女神を制するように腕を広げる。
「ほんなら、国民の前では、ちゃんと話つけようや!」
ミズハとアステリアは視線を交わす。
「……しゃあない、今回は手加減するばい」
「……仕方なかろう」
こうして、商人夫は王城の戦争調停役として、巻き込まれつつも大活躍することになった。
廊下の奥で秘書が小声で呟く。
「……商人って、いつからこんなに耐性ついたんだろう」
商人は笑顔で書類を抱えながら、心の中でつぶやく。
「……耐性じゃない、これは生存戦略や」
世界はまだ騒がしい。
だが、巻き込まれ被害者が一人増えただけで、国はどうにか回っている。
おまけ
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商人、巻き込まれる(関西弁版)
廊下で商人が書類の山に押されて、転がるように逃げる。
「うわぁぁ、なんでワイがこんな目に遭わなあかんねん!」
汗だくで、ネクタイは斜め。
靴も片方飛んでどっかいっとる。
「そっちも参加したんか?」
アステリアが苦笑混じりに言う。
「巻き込まれるんは、まあ予想範囲内やけど」
「予想範囲外やろがい!」
商人は机にぶつかり、書類がさらに舞い散る。
「なんで女神と王女が、ワイの職場で戦争してんねん!」
廊下の端でミズハが得意げに手を広げる。
「巻き込まれるんは神界の基本ルールたい!」
レオニアは腕を組んで、商人をチラリ。
「……王女の婚約者として、巻き込まれるんも覚悟の範囲やろ?」
「覚悟ちゃうわっ!!」
商人は叫ぶ。
アステリアは小声で、
「……でも、後で助けるけん」
ミズハが肩をすくめて笑う。
「まあ、笑い話になるけん!」
「笑えんわっ!」
商人の絶叫が廊下に響き渡る。
喧嘩の激しさは、王城を揺らす。
書類は飛び、資料は散乱し、床は戦場のよう。
だが――
巻き込まれた商人夫は、耐え抜いた。
巻き込まれた分、成長もした。
そして、女神と王女の双方の声に耳を傾けられる存在となった。
世界は依然騒がしい。
しかし、誰かが間に立つことで、
その騒動は破滅には至らない。
強烈な個性たちの喧嘩と、巻き込まれ者の忍耐――
この国の奇妙な安定は、今日もこうして守られている。




