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ドジっ子女神と借金だらけの王国へ  作者: マーたん


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三女神目を全力で止めた結果、神界が騒然となる

神は、世界を正すために降りる。

それが、長い間の常識だった。


だが――

もし世界のほうが、

「正されること」を拒んだら?


奇跡を断り、

管理を拒み、

それでも崩れなかった世界は、

神にとってもまた“異物”となる。


これは、

神を止めた結果、

神界そのものが揺れ始める物語。


ドジな女神と、

完璧だった女神と、

神に頼らない人間たちが、

知らぬ間に境界線を踏み越えていく章である。

三女神目を全力で止めた結果、神界が騒然となる




三女神の降臨未遂から、三日後。


人界では王都の屋根修理と税制会議が同時進行していたが、

神界では――それどころではなかった。


「聞いたか!?」

「第三席が止められたらしいぞ!」

「誰に!?誰がそんな無謀なことを!?」


神界評議会は、かつてない騒然に包まれていた。


雲でできた議場。

神々が円卓に集まり、全員が同時にしゃべっている。


「降臨権限は正当だったはずだ!」

「いや、あの世界は“再建中”扱いだろう!?」

「弱体化した女神が前に出たという報告が――」

「待て、“止めた”とはどういう意味だ?」


議長神が杖を叩く。


「静粛に!」


一瞬だけ、静まる。


「……報告を読み上げる」


光の記録板が浮かび上がる。


《対象世界:再建指定世界No.771》


第三女神リュミエラ、降臨を試みるも


・現地女神アステリアによる“拒否宣言”

・人間王族および民衆の集団意思表示

・奇跡依存率ゼロ


により、降臨不成立。


沈黙。


次の瞬間。


「はぁ!?」

「前代未聞だろ!?」

「人が“神を止めた”だと!?」


第三席女神リュミエラ本人が、腕を組んで立っていた。


「……屈辱です」


「あなた、相当ショックだったようですね」

「当然でしょう!」


彼女は美しく、完璧で、正しい神だった。

奇跡も、秩序も、管理も、すべて計算通り。


――だからこそ。


「“結構です”って何ですか!?

 神の好意を断るなんて!」


「いや、でも……」

と別の神が恐る恐る言う。


「記録によると、あの女神……アステリアは」


「失敗担当です」

「権限乱用歴あり」

「現在、神力は平均以下」

「階段で転ぶ」


「……そんな存在が?」


議場がざわつく。


「なのに、なぜ止められた?」

「なぜ“拒否”が通った?」


議長神は重く息を吐いた。


「それが問題だ」


記録板が切り替わる。


《補足》


アステリアは、神としてではなく


“当事者”として前に出た模様。


「当事者……?」


「神が“管理者”ではなく、“同行者”を選んだ世界だ」


神々が黙り込む。


「それは……」

「ルール外では?」


「だが、違反ではない」


議長神は静かに言った。


「神界の規約にはこうある。

『世界の意思が一致した場合、介入は拒否され得る』」


「……そんな条文、誰も使わなかった」


「使われなかっただけだ」


そこへ、使い神が飛び込んでくる。


「た、た、大変です!」


「今度は何だ!」


「第四女神、第六女神が――」

「“様子見”を宣言しました!」


「何だと!?」

「介入を控えるってことか!?」


「それどころか……」


使い神は震えながら言った。


「“人界研修を希望”しています……」


一瞬、完全な沈黙。


次の瞬間。


「やめろ!?」

「前例が増えるだろうが!」

「神界が揺らぐぞ!」


リュミエラは歯を噛みしめた。


「……あの世界」


彼女は呟く。


「神を拒んだ世界」


議長神は、遠くを見つめるように言った。


「いや――」


「神を“対等にした”世界だ」


神界は、ざわめき続ける。


一柱のドジな女神と、

奇跡を信じきらなかった人々が――


神々の常識を、静かに壊し始めていた。


そしてその頃。


人界の王都で。


「アステリア、書類逆さまです」

「あ、ほんとだ!?」


神界が揺れているなど露知らず、

女神はインクまみれで慌てていた。


――それが、

神界最大の混乱の原因だとも知らずに。




神界評議会が紛糾してから、七日後。


事態は、まったく収まっていなかった。


「前例が増えすぎだ!」

「拒否世界が三つに増えました!」

「“神は選ばれる存在ではない”という思想が――」


議長神は頭を抱えた。


「誰だ、こんな概念を流行らせたのは」


全員の視線が、一斉に同じ記録板を見る。


再建指定世界No.771

通称:

『神を止めた世界』


「名前が悪い!」

「煽りすぎだ!」


そこへ、第三女神リュミエラが再び前に出る。


「……私は、再挑戦を希望します」


ざわっ。


「今度は“管理者”ではなく」

「“観測者”として」


議長神が目を細める。


「あなたが?」

「はい」


「……プライドは?」


「粉々です」


即答だった。


神々が静まり返る。


「それでも、知りたいのです」

「なぜ、あの女神が」

「なぜ、人が――神を止められたのか」


しばしの沈黙の後。


「……条件付きで許可する」


議長神は言った。


「干渉禁止」

「奇跡使用禁止」

「ドジ禁止」


「最後のは不要では!?」

「必要だ」


こうして――

神界公式観測ミッションが始動した。


一方、人界。


王都の広場で、レオンは頭を下げていた。


「ですから、神はいません」

「います」

「いますけど、奇跡は出ません」

「じゃあ何を信じれば?」

「……努力を」


ざわめく民。


そこへ。


「失礼しまーす!」


空から降りてきた影。


「降りるな!?」

「いや、階段使いました!」


現れたのは――

白衣の女性。


「私は神界観測員、リュ……」


言いかけて、止まる。


「……えーっと」


アステリアが首を傾げた。


「どなたです?」

「……初対面です」


第三女神リュミエラは、平然と嘘をついた。


「ただの……」

「研修生です」


レオンは、嫌な予感しかしなかった。


「研修内容は?」

「“人として暮らす”です」


アステリアがぱっと笑う。


「じゃあ、まずは掃除当番ですね!」

「えっ」


その日から。


・神界エリート女神、雑巾の絞り方が分からない

・市場で値切られてショックを受ける

・パンが焦げると落ち込む


という神界的に大事件が連発した。


夜。


屋根の上。


リュミエラは星を見上げていた。


「……不合理ですね」

「何がです?」


隣でアステリアが座る。


「奇跡もなく」

「命令もなく」

「それでも、人は動く」


「そうですね」


アステリアは笑う。


「でも、だから楽しいんですよ」


沈黙。


やがてリュミエラは、小さく言った。


「……少しだけ」

「分かってきた気がします」


その瞬間。


神界で。


「大変です!」

「第三女神の信仰値が……」


「……増えてる!?」


議長神は天を仰いだ。


「やめろ……」

「“人として好かれる神”が増える……!」


こうして。


一つの世界を全力で止めた結果、

神界そのものが、方向修正を迫られることになる。


そして当の本人。


「アステリア、明日会議ですよ」

「えっ!?また!?」


「神界と人界の合同で」

「聞いてない!」


ドジっ子女神と、

学び始めた完璧神と、

奇跡を信じきらなかった人々。


――物語は、まだ終わらない。

神界は、完璧だった。

少なくとも、自分たちではそう思っていた。


失敗は管理され、

奇跡は配分され、

世界は上から眺められていた。


だが、

一つの世界がそれを拒んだだけで、

神々は戸惑い始める。


弱い神が、

人と並んで立ったこと。


奇跡を持たぬ人が、

神を迎え入れも、追い払ってもいないこと。


それは革命ではない。

反乱でもない。


ただ――

選択だった。


神は、支配する存在ではなくなる。

人も、すがる存在ではなくなる。


それでも共に歩くことはできる。

この章は、その可能性が

神界にまで届いてしまった瞬間を描いている。


そして物語は、

「神がいるかいないか」ではなく、

「どう在るか」へ進んでいく。


――次は、

その答えが、世界に問われる。

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