神界に労基が入った日
前書き
良き良き
神界に労基が入った日
それは突然だった。
神界本庁に貼り出された、
見慣れない通知。
《立入検査のお知らせ
― 神的労働環境是正のため ―》
「……労基?」
「神界に?」
「誰が呼んだ!?」
事務神が青ざめて答える。
「えっと……
A-17世界からの“参考資料”が……」
全員、悟った。
「あの世界か」
白衣の調査官が入室する。
「勤務時間、見せてください」
「神に時間の概念は――」
「ありますね、残業記録」
「え?」
「奇跡即応待機、
三千年連続」
会議室が凍る。
「休日は?」
「世界が壊れそうな時だけ……」
「それ、休日じゃないです」
赤ペンが走る。
「神格ストレスチェック、未実施」
「羽根の折損、放置」
「女神の過労転落事故、多数」
アステリアの名前が、
報告書に太字で載っていた。
「改善命令です」
「・奇跡は当番制」
「・新人教育必須」
「・ドジ属性はフォロー対象」
議長が小さく手を挙げる。
「……拒否権は」
「ありません」
⸻
数日後。
地上。
アステリアは、定時で帰っていた。
「今日はもう終わり」
「珍しいですね」
リュミエラが驚く。
「労基がね……」
レオンは即座に理解した。
「神界、壊れたな」
空は今日も穏やかだ。
奇跡は減った。
だが――世界は困っていない。
神も人も、
少しだけ健康になったからだ。
後書き
良い良き




