表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ドジっ子女神と借金だらけの王国へ  作者: マーたん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/40

三女神目、未然に防止される

世界が落ち着いたとき、

次にやって来るのは――だいたい厄介事だ。


神がいない世界に、

神が来る。


それは奇跡ではなく、

調整ミスであることも多い。


この物語は、

戦争でも革命でもない。


ただ一つの目的のために、

全力を尽くした記録だ。


――

「これ以上、神を増やさない」。


人と神が協力して、

世界を守るという、

少し変わった戦いが始まる。

三女神目、未然に防止される


その兆候は、実にささやかだった。


王都上空、

雲が「やる気のある形」に並び始めたのである。


「……あれ、やばくない?」


城壁の上で洗濯物を干していたアステリアが、空を見て呟いた。


「どの“やばい”だ」


レオンが即座に返す。


「降臨前兆・レベル2」


「何基準だ」


「光の渦が“ちょっと張り切ってる”」


同時刻。

丘の上。


新任女神リュミエラは、分厚いマニュアルをめくっていた。


「えーっと……

『二女神体制が安定した場合、

神界は追加派遣を検討する』?」


顔が青くなる。


「え、ちょ、聞いてないんですけど!?」


その瞬間。


空が、ぴかっとした。


「来るな」


レオンが即断した。


「止めるぞ」


「どうやって!?」


「全力で」


作戦会議は、三分で終わった。


理由:

時間がない。



第一防衛線:書類


アステリアとリュミエラは、神殿跡(今は役所)に駆け込んだ。


「申請書!

神降臨一時停止申請書どこ!?」


「棚の下!

『緊急用』って書いてあるやつ!」


「字、薄っ!」


雲の渦が、さらに回転を増す。


神界通信が割り込む。


《――三柱目、まもなく着地予定――》


「待って待って待って!」


リュミエラが叫ぶ。


「この世界、もう定員オーバーです!」


《――理由を――》


「会議が増えます!」


《――却下――》


「洗濯物が乾かなくなります!」


《――却下――》


アステリアが横から紙を叩きつけた。


「神が増えると、

奇跡の責任所在が曖昧になります」


一瞬、通信が沈黙した。


《……詳細を》


「はい今送ります!」


第二防衛線、突破。



第二防衛線:現場説得


それでも雲は止まらない。


「物理的に来る気だな……」


レオンは城壁の上に立ち、叫んだ。


「降りてくる前に言っておく!」


雲の中心に向かって。


「この世界では――

神は会議に出る!

議事録を書く!

責任を分担する!」


一瞬、光が揺らいだ。


《……聞いてない……》


「さらに!」


「奇跡は事前申請制!」


《……え……》


「失敗したら報告書三枚!」


《……待って……》


雲の回転が鈍る。



最終防衛線:人の一言


そのとき、

城下から子どもの声がした。


「ねえー!」


空に向かって、無邪気に。


「神様が増えてもさー!」


「宿題、減らないよね?」


完全沈黙。


雲が、止まった。


《……撤退します……》


《この世界、

自力で回りすぎです……》


光が消え、

空はただの青に戻った。



事後処理


丘の上で、三人は座り込んだ。


「……止めた?」


リュミエラが恐る恐る聞く。


「止めた」


レオンが頷く。


「完全に」


アステリアは深く息を吐いた。


「これで当分は……」


その瞬間、

空の向こうで小さく光った。


「……今のは?」


《※神界メモ:

この世界、

“要観察”指定に変更※》


三人同時に叫ぶ。


「やめろ!!」


風だけが、楽しそうに吹いた。


この世界は今日も、

奇跡なしで回っている。


そして神界は、

ちょっとだけ距離を取ることにした。


――三女神目、

未然に防止成功(暫定)。

三女神目は、来なかった。


それは偶然ではない。

努力でもない。


全力で止めた結果だ。


書類を使い、

理屈を並べ、

子どもの一言で決着する。


それが、この世界の強さだった。


奇跡よりも、

現実的な理由が通る世界。


神ですら、

「やめておこう」と思う世界。


アステリアが選び、

リュミエラが学び、

人々が築いたバランスは、

意外なほど頑丈だった。


この世界では、

神は支配者ではない。


隣人であり、

同僚であり、

ときどき余計な存在だ。


物語はここで一区切り。

だが空を見上げるときは、

少しだけ注意したほうがいい。


雲が、

やる気を出して並び始めたら――

また会議が始まるのだから…。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ