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ドジっ子女神と借金だらけの王国へ  作者: マーたん


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第一章 王国は、すでに詰んでいた

国が滅びる理由は、いつだって一つではない。

借金、失政、無関心、諦め――それらが少しずつ積み重なり、ある朝、気づいた時にはもう引き返せなくなっている。


この物語の王国も、まさにそうだった。

英雄がいないわけではない。努力がなかったわけでもない。

ただ、「間に合わなかった」だけだ。


そんな世界で、若き王子は神に祈る。

奇跡を求めず、栄光も望まず、ただ「どうすればいいのか」を知りたくて。


――だが現れたのは、威厳もなく、転んで登場するドジっ子女神だった。


これは、完璧な救済の物語ではない。

神頼みだけでは何も変わらず、人の覚悟だけでも足りない。

失敗と笑いと絶望の中で、それでも国を立て直そうとする者たちの物語である。

第一章 王国は、すでに詰んでいた


王城の朝は、いつも重苦しかった。

鐘の音は鳴っても、希望は鳴らない。


王子レオンは玉座の前に立ち、並べられた重臣たちの顔を一人ずつ見渡した。

誰もが疲れ切り、誰もが答えを持っていない。


「……で、結論は?」


財務大臣が咳払いをする。


「今月末の利払いが不可能です。

支払えなければ、三つの商会が同時に債権回収に動きます」


「兵糧は?」


「二か月分」


「民の税負担は?」


「限界です。これ以上は暴動が――」


レオンは静かに目を閉じた。

怒鳴る気にもならない。


この国は、もう努力ではどうにもならない段階に来ていた。


夜。

王子は礼拝堂で一人、冷たい石床に膝をつく。


「神様……」


声は掠れていた。


「奇跡なんて望みません。

せめて……何をすればいいのかだけ、教えてください」


その瞬間。


「はーい!奇跡担当です!」


バァン!と天井が光り、女の子が落下した。


「ぎゃっ!?ちょ、ちょっと待って!」


ドン。


「いったぁぁ……!」


王子は完全に固まった。


「……神様?」


「はい!女神アステリアです!

あっ、羽根踏まないでください!折れます!」


「……本当に神様?」


「一応!」


この時点で、王子はすでに嫌な予感しかしなかった。




この時点で、王子はすでに嫌な予感しかしなかった。


女神アステリアと名乗った少女は、慌てて立ち上がろうとして、再びよろけた。

羽根が礼拝堂の床に引っかかり、身体が傾く。


「ちょ、ちょっと待ってください!羽根が!羽根がぁっ!」


「動かないでください!」


王子レオンは反射的に彼女の腕を掴んだ。

その拍子に二人の距離が一気に縮まる。


「あ……」


目が合った。


間近で見る女神は、想像していた“神”とはあまりにも違っていた。

威厳も、神秘的な光輪もない。あるのは、困ったように泳ぐ金色の瞳と、埃まみれのローブ。


「……神様って、もっとこう……」


「荘厳で怖くて雷とか落とす感じ、ですよね?」


「はい」


アステリアは照れたように笑った。


「私、新人なので!」


「新人……」


その言葉が、王子の胸に嫌な音を立てて落ちた。


「……帰ってください」


「えっ」


「今は国が滅びかけています。

冗談を相手にする余裕はありません」


王子はそう言って、彼女から手を離した。

礼拝堂の空気が、再び冷え込む。


アステリアは一瞬、口を閉じた。

そして、少しだけ真面目な顔になる。


「冗談じゃ、ありません」


彼女は指を鳴らした。


光が弾け、空中に文字が浮かび上がる。


――《国家存続率:12%》

――《財政健全度:致命的》

――《王国消滅予測:4年8か月後》


王子の喉が鳴った。


「……これは」


「神界の観測結果です」


アステリアは小さく息を吸う。


「あなたの国は、もう“詰んでる”んです」


王子は歯を食いしばった。


「……分かっています」


「いいえ」


アステリアは首を振った。


「あなたは、まだ“諦めていない”」


その言葉に、王子は何も言い返せなかった。


「だから私は来ました」


女神は、少しだけ胸を張る。


「あなたを、異世界に送ります」


「……は?」


「そこで国を立て直してもらいます」


王子は一拍置いてから言った。


「説明が足りません」


「えへへ!」


王子は頭を抱えた。


「……聞きましょう。どうせ他に道はない」


アステリアはぱっと表情を明るくした。


「はい!

異世界には、あなたの国とよく似た状況の世界があります!」


「似ている、とは」


「借金まみれ!民心最悪!貴族腐敗!資金ゼロ!」


「最悪の見本市ですか」


「そこで国家再建を成功させれば、

あなたの世界にも“修復因子”が発生します!」


「修復……?」


「簡単に言うと、

“やり直せる未来”が生まれます!」


王子は、ゆっくりと礼拝堂の床に視線を落とした。


神に祈った。

奇跡は望まないと言った。

だが――


「……失敗したら?」


アステリアは、少しだけ言葉に詰まった。


「その場合は……」


「その場合は?」


「世界が、終わります」


沈黙。


王子は、静かに笑った。


「……どのみち、終わるのなら」


顔を上げる。


「賭ける価値はありますね」


その言葉に、アステリアは目を見開いた。


「本気ですか?」


「本気です」


王子レオンは、まっすぐに女神を見据えた。


「国を救えるなら、どこへでも行きます」


アステリアは、ぎこちなく笑った。


「……やっぱり、選んで正解でした」


次の瞬間、礼拝堂の床が光を放った。


「え、ちょっと待ってください!

心の準備が――」


「ありません!今行きます!」


「やっぱり雑すぎませんか!?」


光が視界を覆う。


王子が最後に見たのは、

崩れかけた礼拝堂の天井と、

自分の国の――未来だった。

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。


この物語で描きたかったのは、「詰んだ状況」から始まる希望です。

すでに手遅れに見える時、選択肢がない時、それでも人は前に進めるのか――

その問いを、王子レオンと、どこか頼りない女神アステリアに託しました。


ドジな女神は万能ではありません。

奇跡も乱発しません。

だからこそ、この物語の再建は“ご都合主義”ではなく、“積み重ね”になります。


借金は一瞬では消えず、信頼は簡単には戻らない。

それでも、諦めなかった者だけが次の一歩を踏み出せる。

そんな思いを、この物語に込めています。


この先、王子はさらに厳しい選択を迫られ、

女神もまた、自分の過去と向き合うことになります。


もし続きを読みたいと思っていただけたなら、

それはこの物語が、あなたの中の「まだ終わっていない何か」に触れた証です。


また次の章で、お会いできることを願って。


――物語は、まだ始まったばかりです。

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