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ドジっ子女神と借金だらけの王国へ  作者: マーたん


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十章 ――神は救われるか、人は試されるか(神奪還編)――

奇跡は、人を救う。

だが同時に、人を弱くもする。


神が手を差し伸べるたび、

人は「考える理由」を一つ失っていく。


この章で描かれるのは、

神が力を失った物語ではない。

人が、神を拒絶した物語でもない。


それは――

並んで歩くことを選んだ、最初の瞬間だ。


救う者と救われる者。

その境界線が、静かに消えていく朝の話である。

十章 ――神は救われるか、人は試されるか(神奪還編)――




Ⅶ.神と人の、次の関係


夜明けの光は、以前よりも淡かった。


王都の屋根を照らすそれは、

奇跡のように眩しくはない。

だが、確かに――温かかった。


アステリアは、崩れかけた城壁の上に立ち、

ゆっくりと空を見上げていた。


祈りは、まだ少ない。

神殿は半壊のまま。

人々の生活は、決して楽ではない。


それでも――

胸の奥が、不思議と軽かった。


「……ありがとう」


その声は、かつての女神のものとは違っていた。

命令でも、祝福でもない。

ただの、素直な感謝だった。


隣に立つ王子は、少しだけ眉をひそめる。


「礼を言うのは早い」


アステリアは首をかしげる。


「え?」


「国はまだ立て直し途中だ。

借金も、争いの火種も残っている」


彼は空ではなく、

まだ眠りから覚めきらぬ王都を見下ろしていた。


「ここから先は、楽じゃない」


「……はい」


「だから――」


王子は、はっきりと言った。


「もう、神に頼らせるつもりはない」


その言葉に、

アステリアは驚かなかった。


むしろ、少し嬉しそうに目を細めた。


「それで、いいんです」


女神は言う。


「奇跡に慣れた人は、

奇跡がないと生きられなくなる」


「でも――」


彼女は、自分の胸に手を当てた。


「一緒に考えることは、できる。

悩むことも、失敗することも」


「……ドジることも?」


王子が皮肉めいた口調で言うと、

アステリアは慌てて否定した。


「そ、それは減らします!」


夜明けの空気に、

小さな笑いが混じる。


それは、

神殿で鳴らされていた厳かな鐘よりも、

よほど人間的な音だった。


「私はもう、守護者じゃありません」


アステリアは続ける。


「上から見下ろして、

正解を与える存在じゃない」


彼女は、王子を見る。


「隣で迷う存在です」


王子はしばらく黙り、

やがて小さく息を吐いた。


「……面倒な神だな」


「はい。

でも、逃げません」


その言葉に、

王子はようやく微笑った。


王と女神。

支配者と守護者。

そんな関係は、もう終わった。


今ここにいるのは――

国を背負う一人の人間と、

力を持ちすぎた一人の隣人。


神は、奇跡を振りまかない。

人も、祈りにすがらない。


だが――

手を取り合うことは、できる。


失敗したら、やり直す。

迷ったら、話し合う。

借金が増えたら――また働く。


それだけの、当たり前の関係。


王都に、朝が満ちる。


人々は目を覚まし、

今日も生きるために動き出す。


その中に、

神が一人、混じっていることを――

誰も、特別だとは思わない。


それでいい。


それが、この国の選んだ、

神と人の、次の関係だった。

神がすべてを解決する世界は、

一見すると幸福に見える。


だが、そこに「責任」は残らない。


この物語でアステリアは、

神であることをやめたわけではない。

奇跡を禁じたわけでもない。


ただ――

「使わない」ことを選んだ。


そしてレオンは、

神を失っても立て直せる国を目指した。


それは強さではなく、

覚悟の話だった。


失敗しても、やり直す。

裏切られても、また信じる。

奇跡がなくても、生きていく。


神と人が手を取り合うとは、

依存ではなく、対等であること。


この国は、

その不器用で、遠回りな道を選んだ。


物語は終わる。

だが再建は、続いていく。


それこそが、

奇跡よりも確かな希望なのだから。

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