ドジっ子女神と借金だらけの王国へ
ドジっ子女神と
『ドジっ子女神と借金だらけの王国へ』
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王城の謁見の間は、静まり返っていた。
沈黙の理由は一つ――王国の財政が、完全に破綻していたからだ。
長机の上に積み上げられた帳簿は、もはや紙の山ではない。絶望の塊だった。
金貨の収支は赤字、借金の数字は毎月増え続け、利息だけで城の維持費を超えている。
王子レオンは、額に手を当ててため息をついた。
「……終わってるな」
重臣たちは目を逸らし、誰も言い返さない。
軍備拡張に失敗した先代王、無謀な交易、災害による不作。
そのすべてのツケを、まだ二十歳にも満たない王子が背負わされていた。
夜。
王子は城の礼拝堂に一人、膝をついた。
「神様……もし本当にいるなら……どうか、知恵をください」
それは切実な祈りだった。
奇跡など望んでいない。ただ、どう進めばいいのかを知りたかった。
――その時。
「はーい!呼びましたかーっ!?」
天井が光り、勢いよく“何か”が降ってきた。
「うわっ!?」
ドンッ!という音と共に、女の子が床に転がる。
白いローブ、金色の髪、背中には小さな羽。
どう見ても――神様、なのだが。
「いったたた……あ、ごめんなさい!着地ミスです!」
女の子は慌てて立ち上がり、ぺこぺこと頭を下げた。
「えっと……あなた、誰ですか?」
「わ、わたし!?
えへへ……女神アステリアです!新人です!」
王子は一瞬、言葉を失った。
「……神様って、そんなにドジなんですか」
「ドジじゃありません!ちょっと操作を間違えただけです!」
そう言いながら、アステリアは足を滑らせ、再び転びそうになる。
王子は思わず、笑ってしまった。
――久しぶりに、心から。
「それで、あなたは何をしに?」
「えっとですね!
あなたの王国、借金まみれで“世界線崩壊寸前”って表示が出てまして!」
「さらっと恐ろしいこと言いますね……」
アステリアは胸を張る。
「なので!特別救済措置として!
あなたを“異世界再建ミッション”にご案内しまーす!」
「……はい?」
次の瞬間、床が消えた。
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気がつくと、王子は見知らぬ荒野に立っていた。
遠くには廃れた街、壊れかけの城壁、そして貧しそうな人々。
「ここが……異世界?」
「正確には、あなたの王国の“少しズレた未来”です!」
アステリアはにこにこしながら言う。
「この世界で、国を立て直せたら!
元の世界でも借金問題、いい感じに解決します!たぶん!」
「たぶん!?」
「細かいことは気にしない派なので!」
王子は頭を抱えた。
だが、逃げ道はない。
「……つまり、ここで国を救えば、現実も救える、と」
「そうです!
あ、ちなみに私はサポート役なので、基本ドジります!」
「いらない情報をありがとう……」
しかし、王子は前を向いた。
民が苦しむ世界は、どこであっても同じだ。
「いいでしょう。
借金だらけでも、滅びかけでも――国は、立て直せる」
アステリアは、少しだけ真剣な顔でうなずいた。
「さすが王子様。
……あ、でも最初の資金、ゼロです!」
「そこからか……」
こうして、
ドジっ子女神と若き王子の、異世界・国家再建物語が始まった。
笑いと失敗、時々奇跡。
そして、神頼みだけでは終わらない、本当の覚悟の物語が――。
〇〇へ




