第10話 怨望の種
この作品は、映像化を想像しながら書きました。
読んだ時にお好きな俳優さんや声優さんを当てて、読書をお楽しみください。
よろしければ、誰をイメージしながら読んだのかコメント欄に書いてくださると、きっと楽しいコメント欄になると思います。
2階の自室から下りて店に入った途端、ぞわっとしたものが店主の全身を巡った。それはある種の予感や予兆のようなものに感じられて、店主は吹き出る冷や汗を1杯の水で誤魔化した。そして深呼吸をする。
みーがここに来た日のこと、開店準備に忙しかった日々、様々な客との出会い、作ってきたコーヒーの香り。すべてが走馬灯のように店主の頭の中を駆けていく。
「私、どうかしたのでしょうか」
誰に言うでもなく呟いたその問いに、いつの間にかそばに来ていたみーが人の姿で答える。
「もう近づいてるのよ。終わりが」
「終わり、ですか?」
「きっと今日にでもすべてが揃う。貴方はそれを感じ取ったの」
「揃うというのは、みーさんがお探しになっている『特別なコーヒー豆の木』のことですよね」
「探しているのは私だけど、私じゃない」
「それはどういう」
「それも直にわかる。お店の準備を進めましょ」
みーはサッと猫の姿になると、自身はお気に入りの棚の上に上って丸くなってしまった。変幻自在に姿を変えたり、不思議なことを言ったりするのはきっとみーが魔女だからだろうと、店主は自分を納得させる。
ここはカウンター席がひとつしかない小さな店。みーの助言を受けながら揃えた店内装飾。客に出すのは世界にひとつのコーヒーを入れた、みーの呪いの掛かったカップ。そして店主の相棒はこのNo.2の刻印がされた歴史感じるコーヒーミル。
店主はもうずいぶん長いことこの店をやっているようにも思う反面、始めたのがつい最近のことのようにも感じていた。突然やって来た憂いの感情を振り解くように、一心に掃除を始める。
そうしてOPENの看板を外に出し、しばらく経った頃。深い赤の夕闇の中で、店の扉が開かれた。しかしそこに立っていた客の姿は、その様子を判別し難いものだった。
たしかに人の形はしているらしい。しかし全身が黒い靄に覆われ、性別も判断できず、禍々しい異臭も漂う。頭の上には2本の角のような小さな突起も見えている。店主には霊感というものはない。それでもその姿形はまさに幽霊と言いたくなるものだった。
さすがのみーも棚の上から唸り声を上げている。しかしそんなことはお構いなしに、というより聞こえていないというようにカウンター席に座った幽霊の客。席に座ったということは店主にとって大事な客ということだ。店主は、「失礼いたしました」とお辞儀をして、それから外の看板を裏返しに行く。
この店は客が来れば必然的に貸切となる小さな店。だからこそ、コーヒーを心ゆくまで楽しめるのだ。店主は茶色い表紙の二つ折りのメニュー表を客に広げて渡す。
「こちらからご注文ください」
客はメニュー表を受け取らず、じっと文字を見つめているようだった。店主は何も言わず、客の次の動きを待つ。
すると静かに手が、と言ってもこちらも靄に覆われていてその輪郭はわからないが、きっと手であるのだろうという部分がひとつのメニューを指差した。
「『光の導き』でございますね。すぐにご用意いたします。少々お待ちください」
店主は階段を下り、地下の特別室に向かう。特別室の中には壁一面にコーヒー豆の入った小瓶が並んでいる。
みーの呪いが掛かったコーヒーカップから生まれる、コーヒー豆の苗木。そこから採れるコーヒー豆はちょうどコーヒー1杯分。その豆を丁寧に焙煎して、また次の客がひと息つくためのコーヒーにする。ここにあるのはそんな特別な豆たちだ。
店主は客が注文した『光の導き』という豆を持ってカウンターへと戻る。今でこそ豆の名付けにみーからダメ出しを受けることは減ったが、最初のうちはなかなか名前を決められず苦労していた。そういう才能が店主には無いのだ。
「こちらが『光の導き』になります。今から粉にしていきます。ぜひその香りもお楽しみください」
店主はただ静かに待っている客にそう断りを入れると、相棒のグラインダーに豆を入れる。このグラインダーは、みーがこの店にやって来た時にその存在に気づいた物だ。みーに言われるまで、店主は抜け殻のようになっていたせいで周りにある物に全く気づいていなかった。
それがなぜかこのグラインダーを手にした途端、どこか懐かしい気持ちになり、ずっと昔から使っていたかのようにしっくりきた。それから店主は、ここで喫茶店を営むようになった。
ガリガリと豆が砕けていく音、微かに広がる豆の香り。しかし客から漂う禍々しい臭いの方が強いようで、コーヒーの香りは打ち消されてしまっている。店主にとってもこんなことは初めだ。
それでも客は静かに待っていた。顔であろう場所の靄の奥から、赤い光が2つ、目のように光を放っている。
すべて粉になり、ドリッパーを使ってカップにコーヒーを作っていく。少しずつ、少しずつ、なるべく香りを楽しんでいただけるように丁寧に作る。
「お待たせいたしました。『光の導き』です」
完成したコーヒーを客の前に差し出した。小さなミルクポットと角砂糖も添える。
客はゆらり、ゆらりと体を左右に揺らすと、ぬるりと手を伸ばしてカップを持ち上げた。たぶん目であろう赤い光の少し下側に、カップのふちを当てがう。そこが口なのだろう。
店主は、そしてみーも、静かに客を見守る。黒い靄に覆われた客は、カップをそっと置くと、赤い目を細めた。
「お口に合いましたでしょうか」
ゆらりとまた、客の頭が前後に揺れる。どうやら口に合ったようだ。
「お客様の特別な一杯をお楽しみください」
店主がそう言うと、客は靄と一緒に消えてしまった。店に漂っていた臭いも消える。
「ふぅー」
私は思わず息を大きく吐き出した。すかさずみーに質問する。
「みーさん、あのお客様は一体・・・・・・」
みーは棚から床へ下りる間に人の姿に戻った。客が置いたまだ温かいコーヒーの入ったカップを優しく撫でながら、彼女は静かに言った。
「あれはね、彷徨人」
「さまよい人、ですか」
「そう。心、もしくは魂がなんらかの物理的か精神的かの強いショックを受けて肉体と離れてしまって、元に戻れず、だんだんと自分を失い、生と死の間を彷徨い続けてしまった人。あの様子だと、ずいぶん長い間生きることも死ぬこともできずに彷徨っているようね。でも私の知ってるそれとはちょっと違うというか」
「違うのですか。私は初めてお会いしましたからなんとも」
「聞いたことない? たとえば、事故で意識を長い間失ってしまって、もう戻らないって言われていた人が黄泉の世界を体験して戻ってきたって話」
「聞いたことはあります。それではあのお客様は今、魂だけで動き回ってここにいらしたということですか?」
「んー。当たらずとも遠からず」
「んー」
「動いているのは、私たちよ」
「え、それはどういう」
店主が聞き終わる前にみーが猫の姿に戻ってひらりと棚の上に上っていってしまった。どうやら客が戻ってきたようだ。客の姿が形を得た時、客にはもう靄はかかっていなかった。異臭もしない。
客はあちらこちらが破れたりほつれたりした灰色のスーツを着ていて、ひとつにまとめて結われた髪の毛はぱらぱらと乱れている。まだ20代中頃にも行かない、若々しいお嬢さんだ。放心した顔のまま固まってしまっている。
「コーヒーはお気に召しましたか」
店主は一瞬驚きはしたものの、自分の仕事をしっかりと果たす。今ここにいるということは、店主が出したコーヒーを飲んだのは間違いないのだから。
客は店主の声を聞いて正気を取り戻したのか、今初めてここに来たと言わんばかりに周りをキョロキョロと見て驚きだした。カウンターの椅子から転げ落ちるほどには、驚いたらしい。
「い、痛い・・・・・・」
「大丈夫ですか? まだ混乱してらっしゃるようですが、ここにいらしたことは覚えていらっしゃいますか?」
店主は慌てて客のそばへ駆け寄り、体を支える。客は頭が痛い時によくそうするように、眉間に皺を寄せて頭を押さえる。
「い、いえ・・・・・・。あたし、気づいたら外をフラフラと歩いてて。だんだん、意識が薄れていって」
「それはご不安だったでしょう」
「えっと・・・・・・ここは」
「ここは喫茶ブレイクタイムでございます。お客様は今しがた、コーヒーをご注文なさって、お飲みになったところですよ」
「喫茶店・・・・・・コーヒー・・・・・・。だんだん思い出してきた。なんか、不思議な夢を見ているみたい」
「みなさん、そうおっしゃいます」
店主が微笑みかけると、客もふふと小さく笑った。どうやら緊張が解けてリラックスしたらしい。客は席に戻ってひと息ついた。
店主もカウンターの中へ戻り、みーも静かに丸まっている。どうやら全員が落ち着きを取り戻したという様子だ。
「あたし、ここでコーヒーを飲んだんですか?」
「はい。お客様は『光の導き』というコーヒーをご注文くださいました。お口に合ったようでしたよ」
「光の導き・・・・・・そっか。じゃあさっきのあれは・・・・・・?」
「あれ、と申しますと?」
「あの、変だと思われるかもしれないんですけど・・・・・・」
「そんなこと思いません。ここはお客様がひと息つくための場所。誰もお客様を否定したりしません」
「有難うございます。あの、うまく言えないんですけど、さっき、ひーちゃんに会ったんです。昔飼ってた猫で。でもあたしが高校生の時に死んじゃって」
「それはおつらかったでしょう。そのひーちゃんという猫さんに、お会いになられたんですね」
「はい。あ、ひーちゃんはホントはヒカリって名前なんです。明るく光るの光るって字の」
「とても良いお名前ですね」
「それで、濃いオレンジっぽい赤茶色の目の子で。真っ黒な子だったんです。あたし、すごく可愛がってて、ひーちゃんも懐いてくれてて。あたし以外は家族だろうと懐かなくて」
「よほど、愛情たっぷりにお過ごしになられていたのですね。私にも伝わってきます」
「・・・・・・でも。ある日、学校から帰ってきたら、死んじゃってたんです」
客はそれはそれは悲しそうに俯いて、今にも泣き出しそうに肩を振るわせる。その様子は、悲しみと怒りを同時に抑え込もうとしているようだ。
「父が・・・・・・あたしの居ない間に・・・・・・蹴り殺してて・・・・・・」
客は今にも血が出てしまうのではないかというほどに、カウンターの上の拳を握り締めている。店主は思わずその拳にそっと触れた。
客がハッと顔を上げ、店主と目が合う。そしてとても寂しそうに顔を歪めて無理に笑顔を作った。
「・・・・・・懐かないのがムカついたって、父は言ってました。こいつは悪魔だって。そんなわけありません。ひーちゃんはいつだってあたしを慰めてくれる天使でした。父は仕事にも行かず飲んだくれで、母はあたしが中学の時に蒸発。なんとか高校には行ったものの、生活費のためのバイトと勉強で寝る時間も取れなくて、おまけに祖母の介護まで。それが当たり前だと思ってたんです。だから、それをつらいと思うあたしは悪い子だって」
「そんなことはありません。現にお客様の光ちゃんはお客様だけを慕っていたのです。お客様が悪い子なわけありません」
客の目から、大粒の涙が溢れる。店主はそっと、タオルを渡した。
「高校を卒業したら就職して家を出てやるって決めて、実際父がパチンコに行ってる間にひーちゃんのおもちゃとか持って飛び出しました。たまたま寮のある会社に就職できたので、そこからはひたすらに仕事して。・・・・・・でも自分のために生きるって実感が湧かなくて。つい、誰かのためばかりに動いちゃうから、だんだん生きてるのか死んでるのかわからなくなっちゃって」
客が息を整えようとしていたので、店主は静かに待った。ここでは誰も客を急かしたりしない。
ここは、おいしいコーヒーを飲んだ後の満たされたため息と一緒に、さまざまな思いを吐き出す場所。そうして心と体を軽くして、ゆったりする場所なのだ。
「それから・・・・・・。父に住んでる場所がバレて。出勤しようとしたら突然掴み掛かられて。力いっぱい殴られました。何度も。引きずられて、父はあたしを連れ戻そうとしてました。父からはお酒の臭いも。外だったお陰でたまたま居合わせた人たちが警察に通報したり父を取り押さえてくれたりしましたが、意識を保てなくて。気づいたら・・・・・・ここに」
「そうだったんですね。自分の子どもをそのように殴るなんて・・・・・・あまりにも非道です。差し出がましいようですが、お客様は十分、人様のために生きられました。十分過ぎるほどです。ご自分のために生きろと言われてもわからなくなるほどというのはよっぽどです。ですから、まずは光ちゃんのために生きるというのはどうでしょう?」
「ひーちゃんのために?」
「はい。先ほど、久しぶりにお会いできたのですよね」
「・・・・・・はい。ひーちゃん、あの頃のままで。もう痛くないって。ずっと見てるって言ってました。ずっと守ってやるからなって。すみません、猫なのに喋るなんておかしいですよね」
客は話しながらボロボロと涙を零す。愛しい存在を奪われて、生活を脅かされ、普通の暮らしすら奪われて。誰がこの客を否定できるというのか。
「おかしくなんてありません。きっとここへは、その光ちゃんが導いてくれたのでしょうね」
店主は優しく微笑んで、客に自分の考えを伝えた。
「え、ひーちゃんが?」
「そうです。お客様がご注文されたのは『光の導き』です。そしてここにご来店した時、お客様の周りには黒い靄がかかっておりました。その靄は、赤い目をしておりましたよ」
あの角のように見えた2本の突起は猫の耳だったのだろう。
「ひーちゃんが、あたしを」
「きっと、光ちゃんはお客様を守ってくださっています。だから、お客様がご自分のために生きる気持ちを取り戻すまで、光ちゃんのために生きるのです。そばに居てくれているのですから」
客がタオルに顔を埋めて、カウンターに突っ伏して号泣する。店主は心の中で光ちゃんに断ってから、客の背中をそっと撫でた。少しでも、客が安心できるように。
たくさん泣いて落ち着いた客は、目を腫らして、髪もさらに乱れていたが、とても晴れ晴れとした顔になった。今ならどんな壁でも飛び越えていけそうなほど、体も軽そうだ。
「あたし、頑張ります! ひーちゃんも居てくれるし。思い出したんですけど、ちょうど異動の話を貰っていたんです。ずっと遠くの場所に。新生活のお金も貯まってたし、引き受けようと思います。まだ会社に席があればだけど」
「今度は誰にも邪魔されずに、平穏に暮らせるよう応援しております。あ、そうだ。少々お待ちください」
店主は小走りで地下の冷蔵庫へ向かい、冷やしておいたデザートを持って客の元へ戻りました。本日のデザートのメニューだった、プリンタルトだ。
「わぁ! おいしそう!」
「これは私からのサービスです」
「え、でも!」
「新生活祝いです。ご遠慮無く。光さんにも味を教えてあげてください」
「・・・・・・はい。有難う、ございます」
タルト生地は手作りビスケットを細かく砕き、溶かしたバターを混ぜて焼き上げる。ビスケットにしてからタルト生地にする方が、食べた時に口の中で簡単に砕けて、味が混ざりやすいのだ。タルト生地が焼き上がる間に、卵と牛乳、砂糖、バニラエッセンスをしっかりと混ぜて漉しておく。卵が少し多めだと硬めのプリンになる。硬めのプリンが店主の好みだ。焼き上がったタルト生地にプリン液を静かに入れて、低温のオーブンでじっくりと焼いていく。焼き上がったら食べる直前まで冷蔵庫で冷やして、しっとりとジューシーなプリンタルトが完成する。
店主はそのプリンタルトの最後の仕上げとして、客の目の前でカラメルソースを作る。お湯と砂糖を小鍋で煮立たせ、色が変わったら火から下ろし、スプーン1杯のお湯をかけて色止めをする。煮立たせる時に鍋を強く動かさないのが滑らかなソースを作るコツだ。
完成したカラメルソースをそっとプリンタルトにかけて、客にスプーンと一緒に出す。客は、「いただきます」と言って一口食べた。
「おいしいー! 口の中で味がひとつになる! これすごい! 今まで食べたデザートの中で1番おいしいです‼︎」
「恐れ入ります」
客はあっという間にプリンタルトを食べ終えて、店を出て行った。きっと、もう迷うことはないだろう。
さて、客が帰った後、店主とみーは沈黙の中でカップから芽が出るのを待っていた。なんとなく、店主は気まずく思っていた。それが店主の顔に出ていたのか、みーが先に沈黙を終わらせた。
「さっきの話だけど」
「はい」
「彷徨人にあんな靄がかかるのなんて聞いたこと無かったの。でも、猫ちゃんが彼女を守ってたんなら納得」
「とても強い絆で結ばれていたのでしょうね」
「あそこまでの異臭を放っていたら、普通は戻れなくなって悪霊になるか、地獄へ堕ちるかなんだけど、きっと猫ちゃんが藁にもすがる思いでここを呼んだのね」
「あの、私たちが動いてるというのはどういう」
店主は我慢できずに聞いてしまった。2人の間は再び沈黙が横たわる。
「それも説明する。ほら、芽が出たわ」
みーの言う通り、カップからは光り輝く芽がすくすくと育ち、黒々とした美しい幹を持つコーヒーの苗木になった。みーさが探している、『特別なコーヒー豆の木』の4つ目の苗木だ。
「これは『悲哀の種』。これで全部揃った」
「しかしみーさん、これは4つ目です。たしかみーさんのお話だと、全部で5つ。喜怒哀楽怨の種があると。あと1つ足りませんよ」
「あと1つはね、ここにあるの」
そういうとみーは目を閉じて、両の手を盃のようにして胸に当てた。みーの髪や服が、風に舞うようにそよそよと動き出す。
店主がその様子に呆気に取られていると、みーの心臓の辺りから光り輝く苗木が出てきて、その手の中に収まった。みーは少し疲れた顔になって、店主を見つめる。
「これが5つ目の、『怨望の種』よ」
店主は理解が追いつかない頭のまま、みーを見つめ返すことしかできなかった。みーが2つの苗木を並べて、苗木を囲むように手で円を描くと、あっという間にコーヒー豆をつけたコーヒーの木に成長する。店主はますます言葉を失ってみーとコーヒーの木を交互に見やる。
みーが小さく顔だけで笑った。2本のコーヒーの木からそっと実を摘むと、それを手のひらに広げて店主に差し出した。
「これと、残りの3つの豆を使って、コーヒーを作ってくださらない? それと、2人だけでおしゃべりも。そのくらいの時間はまだあるから」
「・・・・・・かしこまりました。少々お待ちください」
店主は頭の中の雑念を一切捨てて、コーヒー作りに集中することにした。雑念があってはおいしいコーヒーは作れない。店主は看板を店の中にしまい、みーから受け取った豆を大事に持って地下へと行った。
『もう近づいてるのよ。終わりが』
そう言ったみーの声が、店主の頭の中で何度も繰り返されている。
次話 『最後の客 前編』




