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やさしい嘘  作者: 仙道 神明


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2/10

Ep.2「友情の嘘」

好きと友情。その境界に生まれた“やさしい嘘”が、二人の少女を少しだけ大人にしていく物語。

「好きな人、できたんだ」


 放課後の教室。窓から差し込む夕陽が、遥の横顔を柔らかく照らしていた。


 真央は、一瞬だけ笑顔をつくるタイミングを忘れた。


 彼女の言葉は軽やかだったけど、その“誰か”の名前を聞いた瞬間、胸の奥で何かが軋んだ。

 それは、真央がひとりで密かに好きだった人の名前だった。


「いいじゃん。応援するよ」


 言葉が、口の外に出たときにはもう、嘘になっていた。

 でも、遅かった。その嘘を取り消す勇気は、どこにもなかった。


 それからの日々、真央は「友達として」遥の恋を支えた。放課後、恋の相談に乗り、笑顔で背中を押した。

 そのたびに胸の奥が少しずつ冷えていった。


 “友情”の形を保つための嘘。


 それが、自分を壊していくなんて思わなかった。


──卒業式の日。


 校門の桜が満開で、花びらが舞っていた。二人は写真を撮り終えると、少し離れた場所に並んで座った。


 沈黙のあと、真央がぽつりと言った。


「ねぇ遥。私ね、ずっと嘘ついてたんだ」


 遥が顔を向ける。


「嘘?」


 真央は笑おうとしたけど、声が震えた。


「ほんとはね、あの人のこと……私も、好きだったの」


 遥はしばらく何も言わなかった。春風が、二人の間を通り抜けた。


 やがて、遥が小さく呟いた。


「……知ってたよ」


 真央の目が見開かれた。


「え?」


「真央が、あの人見てる時の顔。なんか違ってたもん。……でも、言えなかった。自分が先に“好き”って言っちゃったから。それで真央が何も言わなかったの、たぶん……私のせいなんだよね」


 遥の笑顔が、泣き出しそうに滲んだ。


「……ごめんね。私もずっと、嘘ついてた。“気づかないふり”してた」


 二人は、泣きながら笑った。その笑顔は、少し大人びていた。


 “友情の嘘”は、誰かを守るために生まれ、そして、互いを許すことで終わるものなのかもしれない。

本当の気持ちを隠すことも、優しさの形のひとつ。

その嘘が、二人を結ぶ橋になりますように。

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