第04話 岬での夜。
翌日早朝、。私たちは、香織の父親の運転で、佐田岬半島の灯台にあるキャンプ場まで出かけました。
「みんな懐中電灯は忘れてないかね。あのキャンプ場は辺りに外灯がないから気をつけないといけないよ。」
休憩所付近でおやつを買って、お喋りをしながら外を眺めていると、瀬戸内海と宇和海が一望できます。途中でしらす丼で昼食を済ませました。
岬の駐車場に着くと香織のお父さんから色々と注意を受けます。
「変な人に声を掛けられても無視すること。後、沖へは行かないでなるべく近くで泳ぐこと。いいね。」
「お父さん、もう高校生なんだから判ってるって。」
「じゃあ、明日の夜に迎えにくるから。怪我に気をつけて。」
昔から崖の方は自殺の名所をして知られていますが、それは過去の話。
私たちは反対側の安全な場所を選んでテントを貼ります。
ドーム型のテントを張ると、私たちは水着になり、ゴーグルをして海に潜りました。
海の中は澄んでいて、視界も良く魚たちを観測する事ができます。足ひれを使い縦横無尽に泳いだ後は、水中に潜ったまま、空を見上げ楽しみました。
「そろそろ晩ご飯の準備をしようか?」
私たちは、ウインドブレーカーを羽織って、下ごしらえした野菜を入れて鍋に煮込み、飯盒でご飯を炊きます。
泳いだ後なので、みんなお腹ぺこぺこです。
「鍋にルーを入れたから、みんな後はこの焚き火台で濡れた身体を乾かして。」
他にもキャンプをしている人たちが居ましたが、家族連れがいらしたので安心して過ごしました。
「まだ、陽が高いね。これからどうする?」
「交代でカレーを混ぜながら遊んでみようよ。焦げちゃうと勿体ないし。」
「そうだね。枯れ木を追加して夕方までこの辺りを散歩して、それから。」
「それから?」
「夜にみんなで夜光虫を見ながら、外で食べよう。一度、ポリタンクにある水を使って身体に付いた潮を洗い流して。」
順調に、キャンプは進んでいました。
夜中、知らない一人の少女がテントに近づいてきます。
「あの、もし良かったら、一緒に居てもいいですか?」
「あれ、一人?ご両親は?」
「私、この近くに住んでいるので、家にいます。退屈なので、よくこの海岸に遊びに来るんです。」
「そうなの?慣れてるんだね。いいよ。お姉ちゃんたちと一緒にお喋りしよう。」
潮騒の中、私たちは少女の話を聞く事にしました。
「へぇ、学校までバスで通ってるの。大変だね。」
「うん。でもお友達や弟も一緒だし、慣れているから。」
「学校で、いじめとかないの?」
「あまり聞かないよ。」
私たちは出会った少女の話を聞いたり、私たちの学校での様子を話しながら時間を潰します。
「いいなぁ。私も早く高校生になりたいな。」
「もうすぐなれるよ。」
陽が沈みかけた頃。少女は家に帰りました。
私たちはカレーライスを食べた後、予定通り夜光虫を見て過ごします。
「あの子無事に帰ったかな?」
「地元の子供だから、平気なんじゃない?心配し過ぎだと思うよ。」