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寮の仲間

 入学式を終えた私は、ひとまず寮に移動することにした。四人一部屋で、同じクラスの人たちと同部屋になるシステムになっている。クラスは1~75組まであり、1~5組までが特進クラスであり様々な特典が存在している。ほかのクラスには序列はないが、特進クラスに関しては数字が若い方がより成績が高いことを意味している。そして私は師匠の推薦によって1組であり、宿舎も一番きれいなで後者に近いものを使うことになっている。

「わあー!!!!」

 思わず声が出てしまうほどきれいな宿舎だった。

 そわそわしながら寮に入ると、玄関で恰幅の良いおばあが出迎えてくれた。

「よく来たね、レイチェルであってるかい?ここの寮母をしているセリアだ。これからよろしくね!」

 そう大きな声で言ったセリアは、私のことをじーっと見て、

「ゾシモスから話は聞いていたが、随分可愛らしい少女じゃないか。これから6年間よろしくね!」

 豪快に笑いながら、バシバシと私の背中をたたいてそう言った。

 結構痛いな~、と思いながら疑問を口にする。

「私のこと知ってるんですか?」

「もちろんさ、この寮に住む子は20人いるが、全員顔も知っているさ。とくにレイチェル、あんたはあのゾシモスの紹介だからね」

 そう言ってセリアは笑っていた。

「もしかして、師匠って結構すごい人なんですか?」

 その問いを聞いて、セリアはお腹を抱えて笑い始めた。一しきり笑い終わって口を開いた。

「ゾシモスから何も聞いてないなら、あまり多くは教えられないかな。機会があったら、図書館で本を探してみるといいよ。さ、部屋に案内するよ、レイチェルの部屋はレイチェル以外皆着いてるよ」

 そう言って、セリアは部屋に案内してくれた。


 案内された四人部屋にノックして入ると、黒髪の少女と獣人、エルフが談笑していた。入ってきた私にみんな注目し、黒髪の少女が自己紹介してきた。

「こんにちは、同じ部屋になった山本木葉よ。聖王国に勇者として召喚されたの。神様には光魔術と、聖女っていうスキルをもらってるの」

「私はセシリア・グレイと言います。エルフが統治しているユグドラシルという国からきています。ようろしくお願いします」

「私はライ・ヴァルデンだ。獣王国の王女でウェアウルフだ、君は?」

 わたしも自己紹介をする。

「私はシャル・レイチェル。鬼人族で、今はゾシモス師匠の推薦でこの学院に来ています」

 その説明を聞いて、山本以外が驚愕の表情を浮かべる。

「その師匠って、緑の髪の毛でかなり破天荒な方ですか?」

 セシリアが聞いてくる。

「はい、多分あってます!」

「有名な方なんですよ?いつから存在してるのかは誰も分からないですが、この世界の魔術の基礎を作成したり怒りを買った国が滅ぼされたなど逸話が多い方です。ユグドラシルもかつて、ゾシモス様から世界樹をいただき、それによってエルフは繁栄したと言われています」

 全く知らなかった師匠の過去を知り驚いた。

(師匠って実は優しい人なのかな?)

 普段の言動やぶっ飛び具合から忘れてしまっていたが、見ず知らずの私を育ててくれることから優しいことはわかる。それでも、魔術の基礎を作ったことなどは知らなかった。

 果たして、師匠は本当に優しいのだろうかという疑問が出てくる。

「獣王国の伝承とは少し違うな。獣王国に魔術を広めたあと、その魔術を使ってゾシモスを殺そうとした連中を笑いながら血祭りにあげたと伝わっている」

 ライが獣王国の伝承を伝えてくれ、やっぱり師匠はそうだよなと再認識できた。

(普段からの言動を考えれば、積極的に危害は加えないけど気に障ることですぐキレることぐらいはわかるよね)

 師匠の性格を再度確認することで、落ち着きを取り戻す。

「その人って帝国側の人じゃないよね?私の能力なんて後方よりだから、戦うとか無理だよ…」

 その説明を聞いて、山本が少しおびえた顔で聞く。それを聞いてう〜ん、と悩んで

「私は帝国に復讐するために師匠のもとにいるんだけど、そんな私を育ててくれてるから帝国側ではないと思うよ?そもそも強すぎるから、国に所属する意味がないと思う、物欲とかもないし」

 山本を落ち着かせようと答えるが、その話を聞いて3人の顔色が悪くなる。

「ごめん、変なこと聞いちゃって…」

 山本は謝っているが、首を横に振り大丈夫だと伝える。

「今は大事な相棒もできたし、師匠のもとで生活できてるからいいんだ。もちろん家族と会えないのはつらいし、復讐はしようと思ってる。それでも過去と区切りをつけるための復讐で、その後のことは学院にいるときに考えるんだ」

 そう言って微笑むと、山本が目に涙を浮かべながら抱きついてきた。

「つらかったね」

 一言告げて、私の頭を撫でてくれる。家族との記憶がよみがえり、泣きそうになる。

「もう大丈夫だよ、新しい家族との生活も楽しいし。これから6年間よろしくね!」

 明るく笑いながら、山本から離れる。

(復讐するまでは絶対に泣かないし、弱音は吐かない。でも復讐が終わったら、アポピスとゆっくり暮らそう…!!)

 決意を新たにし、私の学院生活が始まる。

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