休息と次の修行
ゴブリンたちとの戦闘を終えて、師匠の空間に帰ってから三ヶ月の間は戦闘をせずに,、新しい術の習得をしていた。前回の戦闘で痛感したが、火力の高い魔術があまりなく決め手にかける事が多かった。
今までは第5位階の魔術を使うのが限界だったが、この期間に師匠のスパルタのおかげで、なんとか第6位階まで実戦で使えるレベルになった。炎の第6位階「プロミネンス」は、炎を広範囲に素早く放出する魔術で、前方のみと方向は限定的だが、さらに威力が上がっている。
炎魔術だけではなく、雷魔術の習得もした。前回のゴブリンとの戦闘でファイアーボールを剣で消されたこともあり、防がれづらい魔術の強みを理解できた。雷属性は着弾までが早く、防ぎようがほぼないがその分威力が低いことが問題だった。しかし牽制に使う分にはかなり有用だった。
また、修行の最初に教えられていた錬金術を、改めて師匠から学びなおした。それによって、師匠ほどの強さはないが以前の木偶の坊ではなく、自立して防御などを行えるゴーレムを作成することができるようになった。さらに、毒薬なども少しではあるが作れるようになった。あまり上等な毒薬を作って戦闘を楽にしてはいけない、という師匠の考えのもと強力なものは作っていないがそれでもゴブリンぐらいの皮膚なら爛れさせることができる。
これらの準備期間を経て、私たちは聖王国に旅立った。
冒険者登録をしたはいいが、ランクを上げなければ上位のランクの魔物を狩れないと言われ利用することはないと思っていたが、師匠が職員と話して裏に言ったと思ったら度のランクで儲けれるようになった。改めて師匠のやばさを実感できた。
そんなこんなで、だらだら狩りを続けながら聖都に着いたのである。
私の半年間の旅路を聞いたリリアは、「とても大変でしたね」と声をかけてくれた。そして師匠をキッとにらみ、
「年端もいかない少女をゴブリンの巣に放り出すなんて、普通しませんよ!!!」
私の心を代弁してくれた。かなり大きい声でびっくりしたのか、パフェを食べていた師匠は肩をビクッと震わせた。
「これが一番効率がいいのだから仕方ないだろ、いちいち大声を出すな」
悪びれもせず反論をするが、リリアはかなりご立腹のようだ。その後も説教は続き、30分ほど師匠は怒られていた。話半分程度にしか聞いていなかっただろうが、それでも気分爽快である。
(リリアさんよく言ってくれた!!)
内心でガッツポーズをする。はーとため息をついた後、リリアは真剣な面持ちで私を見る。
「学院を出たら聖王国に来ませんか?復讐のサポートもしますし、好待遇で迎えますよ?」
魅力的な提案をしてきた。
「もちろん今すぐ決めろとは言いません、学院には聖王国の生徒もいます。卒業の時に伝えてくださるか、その生徒と一緒に聖王国に来てくれれば構いません」
微笑みながら、リリアはそう言った。どうしようと思って師匠を見ると、視線に気づいたのか
「お前を強く育てるまでが約束だ、復讐の方法や自分の未来は、自分の意志で決めろ」
そういわれて、私は何をしたいのかがわからなくなった。
(みんなの仇は取りたい、でも復讐した後の私は何をして生きていくの、、、?)
急に目の前が真っ暗になったような気持ちだ。
「まあ、まだまだ子供なんだ、ゆっくりやりたいことを探せ。学院にいる間に、好きなことが見つかるかもしれないしな。やりたいことが分からなくなったら、俺のとこに来ればまた旅に連れていくし、リリアのもとで帝国とたたかってもいい。学院にいる間に、強さだけじゃなくいろんな奴らと関わって自分なりに成長してみろ」
師匠からの言葉は、一筋の光明のようなものに感じた。
いつの間にか食べ終えたパフェを片付けさせ、「帰るぞ」と私に告げる。次元門を開き、
「またな、リリア。エラフィオンの奴にもよろしく伝えといてくれ」
そう言ってさっささと帰ってしまった。わたしも急いでアイスを食べ終え、
「お誘いしてくれてありがとうございます、リリア。お世話になることがあったらお願いします」
そう頭を下げて、私も続いた。「また遊びに来てくださいね~」と手を振りながらリリアは見送ってくれた。わたしも手を振り返し、次元門を潜った。
「先生には、エラフィオン様がいたのも気づかれてましたよ?」
「そう言うな、あいつは怖いんだよ。新しい弟子はいいやつなのかもしれないが、あいつは昔私を半殺しにした挙句、間違えたとか言ってどっか行ったんだぞ?」
妖精のような羽が生えた、青髪の少女は顔色を悪くさせながら言う。
いつもの空間に帰ってきたわたしたちは、とりあえず入学準備を始めることにした。ここで、服をはじめとした生活用品をどうするのかが問題になった。パジャマと軽鎧しかもっていなかったのである。制服でいいかと思っていたが、寮の住み込みになるらしく、休みの日の外出用の服が必要になってくる。アポピスに、脱皮した皮で何とかしたいと言って持ってきてもらい、何とか加工しよう頑張っていた。横でアポピスが頑張れがんばれ、と尻尾を振っているのは微笑ましかったが、思ったよりも柔らかくうまくいかなかった。
しかし、これらの問題は一瞬で解決した。皮に四苦八苦していると、師匠が「何してんだ?」と突然現れ、服を作っているんだ伝えると、笑いながらマジックバッグを取り出した。
「その中に制服やパジャマ、最低限の私服と下着、一生困らない程度の金を入れてある。学院に行ったら好きに使え」
そう言って、またどっかに行ってしまった。アポピスと二人でじーと見つめ合って、簡単に解決したねと訓練場に行って魔術の練習をすることにした。