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ゴブリンとの死闘

 アポピスが進化してからの戦闘は、とにかく楽だった。基本はファイアーボールで敵を倒し、たまってきたらファイアーウェーブで一掃する、これの繰り返しだった。いくつかの小さいゴブリンの集落を潰したが、めぼしいものもないしおそらくこの山のボスでもないのだろう。そう思いながらこの山に来て10日目を迎えたとき、大きな変化があった。

 今まで通りアポピスを前衛として戦っていると、ゴブリンからファイアーボールが飛んできてアポピスに直撃した。

「ギジャァァァァァァァッ!!!!」

「アポピスッ!?!?!?!?」

 燃え始めたアポピスはすぐに体をよじり、木々に体をこすりつけて何とか炎を消そうとする。急いで水の第一位階のウォーターを唱えて火を消すが、アポピスの表皮はただれてしまった。それでもアポピスは持ち前の生命力を使い傷は癒え始めるが、間髪入れずに全身を金属鎧に包んだ大柄のゴブリンたちがアポピスに襲い掛かる。私のファイアーボールを剣で打ち消し、そのままアポピスに切りかかる。再生しようとしていたアポピスはよけきれず、深手を負ってしまった。それでも力を振り絞って周囲の木々もろともゴブリンたちを薙ぎ払った。

「逃げるよ、アポピス!!!」

 アポピスにそう声をかけて、私たちは撤退を始める。

「ファイアーウォール!!」

 アポピスが襲われてるときに準備した、炎の第五位階魔術を使い追っ手を防いで逃走を始めた。

(油断した、師匠の忠告をちゃんと考えていなかった、、、!!!)

 たかがゴブリン相手だと慢心していた自分の愚かさに奥歯をきつくかみしめ、アポピスとともにゴブリンの追っ手を撒く。何時間かもわからないほどの追跡を受けたが、その都度魔術で追っ手を攪乱して辛くも逃げることができた。そして霧を張り、一息ついてアポピスの傷を見る。かなり消耗しているが、内臓は幸い傷ついておらず死ぬことはなさそうだった。

「良かった、本当に良かった、、、」

 アポピスが襲われたとき、私の脳裏に鬼人族の皆が浮かんだ。わたしは泣きそうになりながらも、薬草を塗ろうとしたとき

「あれほど忠告したというのに、ばかな弟子だ」

 次元門を潜って師匠が現れ、アポピスの傷を回復してくれた。

「師匠...!!!!」

 半泣きになりながら師匠に抱きつくと、師匠は嫌な顔をしたが、それでも振り払うことはなかった。アポピスを治療しながら、あきれ顔で、今日戦ったゴブリンたちについて教えてくれた。

「ファイアーボールを使ってきたゴブリンはゴブリンウィザード、そして金属鎧はゴブリンナイトだ。知能なしとされて追放されたゴブリンの中から生き残った個体が、たまたま進化したことによってなったのだろう。こいつらがいるということはおそらくゴブリンキングも誕生しているだろうな」

 師匠は何ともないように言っているが、座学ではゴブリンナイトとウィザードはCランク、キングは単体でBランク上位、群れだとAランク下位に分類され、下位のドラゴン並みである。

(よく命があったな、、、)

 心の中で震えていると、師匠が続けて

「まだ9歳なんだから敗北するのはしかたがない、命があったことを運とアポピスに感謝しておけ」

 そう告げて、私の傷や疲労を魔術で癒し始めた。どうやらアポピスの回復が終わったようだ。

(あたたかい、、)

 師匠の魔術は私を包みこむように広がり、傷をいやし始めた。

「そのままゆっくり聞け、さっき確認したところクイーンとキングが一匹、そしてナイトとウィザードがそれぞれ50匹ほどいた。ここでの修業は今の状態では厳しいと判断し、ゴーレムをいくつかつけておく。そう簡単に壊れないし、最悪使い潰してしまっても構わない。個々の強さはナイトよりも少し強いぐらい程度にしてある。打たれ強いから生半可な攻撃では傷はつかん。あと数日だ、頑張れ」

 私の傷が癒えたのを確認した師匠は、いつも通り食料を置いた袋を置き、4メートルほどの全身黒の重装甲で、盾と剣をもつオーソドックスなゴーレムを5体作成して門を潜って帰っていった。

(中断じゃないの!!!!)

 心の中で絶叫して、10日目の夜を終えることになった。


 そうして迎えた11日目、朝から移動しながらのゴブリンたちとの戦闘が始まる。ゴーレムが加わったことにより、移動速度は少し落ちたが前衛の安定感が段違いだった。ウィザードの魔法を盾で防ぎ、襲い掛かって来るナイトも連携して返り討ちにする。ゴーレムがいるおかげで、第五位階魔術の詠唱を余裕をもって行うことができるようになったし、アポピスもゴーレムを盾にしながらの遊撃に回れるようになった。もちろん油断することはできないが、昨日と比べれば安定感は段違いである。

 そしてついに、キングたちがいると思われる巨大なゴブリンの集落を発見した。崖をくりぬいて作られた巨大な都市といっても過言ではない大きさで、ゴブリンが一万匹以上住んでいそうな場所だった。さすがに突入も殲滅もできそうにないので諦めることにした。

 入口の門からして金属製でとても重厚感があり、並大抵の魔術では傷一つつかないだろうということがわかる。都市からは定期的にゴブリンが出入りしているが、どの個体も一度は進化しているようで、おそらく進化した個体のみが入れるのだろうと思う。

(ここまで発展するなら、キングはかなり知能が高そうだな、、)

 そう思いながらも、できることは特にないのでキングの討伐はあきらめてアポピスの進化と魔力の吸収を目的に変えて、再びゴブリン狩りに戻ることにした。


 ゴブリンキングたちから距離をとり、刺激しないように過ごすことにした。途中から無駄だとわかったのかナイトもウィザードも襲ってこなくなり、無事に14日目の夜を迎えることができた。最終的にアポピスは進化を果たし、グランドスネークというBランク下位の魔物に進化することができた。体長は10メートルを優に超え、太さも一メートルほどになり、重力に干渉することができる角を手に入れいる。

(今のアポピスなら私より強いんじゃない?)

 そう思いながらも、一緒に死線を潜り抜けた相棒のような存在が強くなることは純粋にうれしかった。師匠も悪くない進化だ、とアポピスをほめていた。師匠のゴーレムにも助けられたが、無事に生き残れてほんとによかった。こうしてゴブリンの世界での私の修業は終わった。




 ゾシモスはゴブリンの都市を上空から観察する。

「ふむ、キングからエンペラーに進化したか。レイチェルがもう少し成長したら、学院の授業の一環で討伐させるか。今のままでは巻き込まれて死にかねない」

 そう残して次元門を潜るゾシモスを、エンペラーとなったゴブリンは認識していた。

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