半年間で
師匠の弟子になって最初の一か月、私はずっと魔力のコントロールの稽古をしていた。実践などはせず、ひたすら魔術陣の構築と魔力の循環のみを行い、魔術のスピードを上げる練習をしていた。その時、少しでも流れがゆがむと、師匠は私の魔力をコントロールして修正してくれた。師匠のコントロールは美しかったが、強引に魔力を奪われるので大きな倦怠感と痛みに襲われた。それでも稽古は止めず、師匠は自分の魔力を私に付与して再び構築をさせた。とてもしんどかったが、それでも師匠は「立て」としか言わず、構築をさせ続けた。厳しかったがそのおかげで師匠の求めたファイアーボールの構築を一秒で行うことができるようになった。そして、魔力循環が早まり体に魔力を流す身体強化もある程度使えるようになった。まだまだ体ができあっがていないから足をメインにして逃げれるように鍛えた。それによって稽古は次のステップに移行した。
次は、実践で動揺せずに術を構築させる練習が始まった。始まる前、師匠は50センチほどのレッサースネークを創造し、私の従魔としてくれた。あまりにも驚いて突っ立ていたら
「いつまであほ面をしている、生命の創造ぐらいできて当たり前だ。とっとと移動するぞ」
あきれ顔でそう告げ、次元門を潜っていってしまった。急いで追いかけ、小さな蛇にアポピスという名前を付けて一緒に狩りをすることになった。
師匠に連れてこられたのは、大量のゴブリンが支配している世界だった。そこでは知能あるゴブリンが都市を築く一方で、進化の過程で知能が発達しなかったゴブリンを外に追放して定期的に狩り、共食いをしてさらに進化をしていくという構図になっていた。私たちは少し大きめの山に転移し、ひたすらゴブリンと戦う毎日を送った。師匠は
「魔力と食料の供給をしてやるから、そこで2種間ぐらい戦ってろ」
とだけ言い残してどこかに転移してしまった。私がポカーンとしていると、ぐぎゃぐぎゃと汚い声で私に群がってきた。
(こんなに早く襲われるなんて!?!?)
そう思いながらも、すぐにファイアーボールを連発して襲い掛かってきたゴブリンを追い払った。使った魔力が師匠から供給されていることが分かったが、あまりにも数が多くきりがなかった。そんな時、アポピスがシャーッ!と鳴き、正面を張ってくれた。生まれたばかりでまだまだ強くはないが、それでもかなりありがたかった。その後、ゴブリンを振り払って山頂に到達し、そこで初めて一息付けた。師匠が渡してくれた、魔力を流すと周囲に知能が低いと忌避感を感じる霧を放つ魔道具を使い休息をとる。
そしてパンを食べて休息をとっていると、横でバリバリッ!!と音を立ててアポピスが脱皮を始めた。おそらく今日の戦闘でかなり魔力を吸収し、成長しているのだろう。そんな時、急に次元門が開き、師匠が出てくる。そして袋を渡してくる。
「これが明日の分の食糧だ。アポピスもこのペースなら、明日ぐらいには進化するだろう。それと、この山を束ねているゴブリンどもがお前の存在に気付き始めてる、明日以降は相当過酷になるだろうから頑張れよ」
突然現れて、珍しく励ましの言葉を投げかけたと思ったらまたすぐにいなくなってしまった。
(あのイカれ師匠がぁぁぁぁぁぁぁ!!)
大声で叫びたいを抑え、内心で師匠にキレる。そうしていると脱皮を終えたアポピスがこっちに来て、袋をつつき始めた。
「そういえばあなたにまだご飯渡してなったわね、今日は頑張ってくれてありがとう」
袋から大きめの生肉のブロックを取り出して、アポピスに食べさせる。キシャー!!と嬉しそうにしっぽを振りながらその肉を丸呑みする。そして、消化するために速攻で寝てしまった。
「はぁ、私も寝るか」
明日以降がかなり不安になったが、とりあえず寝て忘れることにした。
まだ日が昇っていないにもかからず、アポピスに頭をつつかれて目が覚めた。
起こされてイライラしていたが、近くにゴブリンらしき感覚もあり、「ありがとう」とアポピスの頭をなでて広げていたものを全部マジックバッグにしまう。そして今日も移動を始める。
(さすがに一か所にとどまり続けると包囲されちゃうよね、、)
そんな考えのもと移動を開始してすぐ、昨日師匠が言っていたことが分かった。
普段は棒しかもっていないゴブリンたちが、棍棒や弓、さびていて形が悪いが剣を持っている個体まで出始めた。第二位階程度だが魔術も飛んでくるようになり、明らかに上位種も混ざっていて朝からハードな戦闘になった。
「アポピス、5秒間私にゴブリンを近づかせないで!!」
そう指示を出し、私は魔術の構築を始める。アポピスは身を挺して私を守り、飛んできた矢や魔術から私を守ってくれた。
「ファイアーウェーブ!!」
私を中心に炎が広がる。これは自分を中心に、広範囲に炎をまき散らす魔術だ。構築に5秒もかかるので使うことはないと思っていたが、今回はアポピスがいたおかげで何とか使うことができた。昨日同様、一度霧を張り休憩する。相変わらず師匠から魔力供給が来るが、絶対に一発殴ると決意する。
(とりあえず、この山を束ねているとかいうゴブリンどもを一掃しないと、、、!!)
目的を決め、移動しようとしてアポピスを見ると進化していた。約2メートルほどの大きさである、ボアスネークに進化していた。師匠の座学の知識で知っていたが、かなり大きいうえに太さも10センチほどあり、心強い前衛になってくれた。進化したアポピスはとても強く、ゴブリンの上位種たちを寄せ付けず、向かってくるゴブリンはアポピスが、弓や魔術で攻撃してくるゴブリンを私が対処することによってスムーズに移動することができるようになった。