仇の情報
「まず帝国がどのような国か説明しよう」
そうしてゾシモスによる帝国の説明が始まった。
「まず帝国と呼んでいるが正式名称はヴァルノス魔道帝国だ。空間属性の使い手のおかげで他の世界に侵入して略奪をし、本国を潤すということをしている。ヴァラガスを含めて現在は30人の将軍と、それを束ねる元帥が三人いる。実力主義で将軍の入れ替わり自体はあるが、ここ最近はあまりない。植民地として征服された地の人間でも実力さえあれば立身出世できるシステムによって、様々な種族の強者が集まっている。帝国に強者がとられるから独立も厳しいし、帝国はそれによって更なる力をつける。こうして帝国は成りあがってきた。
ヴァラガスのように魔物に分類されていても言葉が通じて、実力さえあれば軍隊に加入して市民権を得られるからな。セラフィーナたちが殺されたのは、ヴァラガスの駒を増やすためだろうな。ネクロマンサーは個人の実力と使役している死体の質が大事だからな。これがざっくりとした帝国の説明だ。何か聞きたいことあるか?」
とゾシモスは聞いてきた。
「ヴァラガスは帝国の将軍の中だとどれぐらい強いの?」
「最近のは知らんが、それでも上位ではあるが最強ではないぞ。働かないが、帝国が将軍として雇うことによって自分たちに攻撃してこないようにしている奴もいるからな。帝国を滅ぼしたいのか、ヴァラガスを殺したいのかで、だいぶん難しさが変わってくる。帝国を滅ぼしたいのか?」
「ううん、帝国は正直どうでもいいかな。ヴァラガス以外どうでもいいし」
改めて、私の復讐の道のりが過酷なことが分かった。そしてふと気になることを聞いてみた。
「師匠は帝国に勝てるの?」
師匠が強いのはなんとなくわかっていたが少し興味があった。その問いにゾシモスは、はっはっはと笑い始めた。
「変なことを聞いたの?」
「面白いことを言うな、お前は。将軍全員と元帥同時に来ても俺に勝てるわけないだろ」
そういってまたゾシモスは笑い始めた。
(師匠ってちゃんと化け物なんだ、、、)
改めてやばい人なのだと再認識した。
「この遺跡を含めてこの空間自体が俺の魔術によって作られた世界だ。帝国の奴らはそれすらできないから他を植民地にしに行っているのだ」
「え???」
と思わず声が出た。
(この世界を作った??)
そんな私の疑問を感じたのかゾシモスは言う。
「空間魔術をある程度極めれば、自分自身で空間を作れるようになる。ここはその発展版で俺のアトリエだ。セラフィーナがここにお前を送れたのはやつが学生時代に俺が招いて座標を知っていたからだ」
いろいろ情報が多すぎて私の頭はパンクしてきた。
「お前も学院を卒業したら空間の作成ぐらいは教えてやる。まあ、まずは学院を生きて卒業できるようになる必要があるがな」
そういってまた師匠は笑った。
「え、学院って死ぬことあるんですか?」
「なんだ、セラフィーナから何も聞いていないのか。お前レベルなら大丈夫だろうが、大体卒業できるのは3000人の入学生に対して2000人ほどだ。六年制だが、それまでに死んだりきつくなってやめるやつがいるからな」
衝撃の事実を師匠から知らされた。
「お前は俺からの推薦で6年制なのは変わりないが、いろいろ融通が利くようにしてやるから心配するな。なにより入学予定は10歳と子供だからな、基本12歳からだから同期や上級生が助けてくれるさ」
そう師匠は言ったが、それでも心配がこみあげてくる。
(もし死んで復讐することができなかったら、、、)
心配になっていると師匠は
「死なないためにも明日からは炎以外もバシバシ教えていくら覚悟しろよ」
不安を和らげるように、師匠はにこっと笑いながらそう言った。