ジャイアントメタルスコーピオン⑤
砂嵐が、止まらない。
ついに前線で耐えていたラースグリズリーの一体が、膝をついた。
長く砂嵐の中にいたために、もう体を再生する魔力も残っていない。
レイチェル自身多くの魔力を吸われ体が重い。
――それでも。
視界の端で、仲間が吹き飛ばされた。
悲鳴が、砂に飲み込まれる。
胸の奥が、軋んだ。頭に血が上る。
「……もう、いい」
呟いた瞬間、角が熱を持つ。今までとは異質のオーラを放った。
指先の感覚が消えた。痛みではない。冷たくもない。ただ、自分の腕ではないような違和感。
魔力が、止まらない。
呼吸に合わせて循環させているはずなのに、勝手に脈打ち、角へと引きずられていく。
それを認識した瞬間、ジャイアントメタルスコーピオンが大量の砂を飛ばしてくる。
レイチェルは先ほどまでとは段違いの速さで跳んだ。
考えるより先に、身体が動いていた。
甲殻の亀裂。
そこに、拳を叩き込む。
ぬるりとした、嫌な破裂音。
次の瞬間。
ジャイアントメタルスコーピオンの体内から、濁った魔力が噴き出した。
「……っ!?」
砂嵐が、悲鳴を上げる。
生成される砂が、黒く変色し量を増す。
ジャイアントメタルスコーピオンが、絶叫した。
地面を叩き、尾を振り回し、周囲を無差別に破壊する。
「やった……?」
誰かの声。
だが、レイチェルは違和感を覚えていた。
確かにジャイアントメタルスコーピオンの格を壊したような感覚がった。
それなのに砂の密度が増している。
砂嵐はさらに濃くなり、荒野全体が歪む。
「下がれ!!」
レオンハルトの叫び。
全員が一斉に下がるが、それに対しジャイアントメタルスコーピオン自体は動きを止めている。
「ギ、ギギギギギギィィィィ――――ッ!!」
叫び声をあげたジャイアントメタルスコーピオンの脚は再生せず、むしろ崩れ始めている。
レイチェルは分かっていた、まだ決着ではない――むしろ、始まってしまったのだと。




