vsジャイアンメタルスコーピオン①
ついに始まったジャイアンメタルスコーピオンとの闘いは、こちら側が押されていた。
アポピスをはじめとした前衛が、うまくジャイアンメタルスコーピオンの攻撃をいなしてはいるが、私たちの攻撃はジャイアンメタルスコーピオンの分厚い装甲を貫けないのである。
最初にセシリアが足を吹き飛ばしたが、それ以降は足に攻撃を集めているがあまり有効打になっていない。さらには最初に吹き飛ばした足もすでに生え切り、私たちはジリ貧になっている。
ノアが召喚したBランクのラースグリズリーとアポピスが上手く足を止めているが、巨大な鋏による攻撃は着実にこちらにダメージを与えてきている。
ノアがBランクを召喚できたことも驚いたが、それでも劣勢だった。山本さんが生命魔術で傷をふさいでいるが、いつまで魔力が持つかもわからない。
(このままだと削り切れずに負ける、、、)
あまりの強さに焦りが生じる。
今は上手くいなしているが、少しでも失敗すると一気に全滅の可能性が高くなる。
うまく装甲を貫通して攻撃を通さないと勝てないのに、私の魔術だと貫通できない。
Aランクをなめていたわけではないが、Bランクとの差を改めて感じる。ふがいなさを嘆いていると、カルミナ先生に突っかかっていた高橋という生徒が全身に黒いオーラをまといながら突っ込んでいった。
「オラアア!!!」
彼と同じ大きさがある大剣を振りかざし、体の右側の胸当たりの装甲を砕くことに成功した。
さらに彼のまとっていたオーラが傷口にまとわりついて再生を阻害している。
高橋は追撃をしようとしたが、ジャイアンメタルスコーピオンはアポピスとラースグリズリーを振りほどいて高橋を鋏で迎撃し、それ以上の追撃は無理と判断して高橋は一度陣地側まで撤退した。
「ギジャアアアアアア!!」
この戦いで初めて装甲を砕かれ、よほど攻撃が効いたのか身をよじって苦しんでいる。
高ランクの魔物の再生能力もオーラが残り続けて阻害し、こちら側が大きな有利を作れた。
しかし、高橋を見てみると肩で息をしていて先ほどまでまとっていたオーラも霧散してしまっている。
顔色も悪く、オーラを再び出すことができるのかも怪しい。
(高橋がもう戦えないとしてもこれは大きい!)
ラースグリズリーとアポピスを一度は振りほどいたが、即座に抑えに動いていたためジャイアンメタルスコーピオンは反撃の機会を作ることができなかった。
高橋が作った傷に向けて多くの魔術を放ってみるが、装甲に阻まれないおかげで魔術の効きが段違いである。
ほかのクラスメートも魔術を集中させることにより、うまく有効打を与えることができている。
(カルミナ先生に突っかかるだけのことはあるんだな)
ただの馬鹿だと思っていたけど少し見直した。
どういう絡繰りかはわからないが、おそらく勇者特有の能力なのだろう。
畳みかけるようにほかの生徒も傷に攻撃を集中している。
セシリアは再びストームカッターを使用して傷口をえぐり、ほかの生徒も切り札を使い始める。影魔術を使っていたヤエルという小柄な少女がまずは動いた。
「シャドウスナップ」
影魔術の第六位階魔術を使用して、ジャイアンメタルスコーピオンの左の鋏の影を地面に縫い付けることによってバランスを崩す。
さらに力が抜けたジャイアンメタルスコーピオンをラースグリズリーが頭を押さえ、アポピスが首元を締め上げた。こうして動きを完全に封じ、さらなる大技を放っていく。
レオンハルトとライアが獣化して5メートルほどの巨大な虎と狼になり、魔力を最大限込めた爪を傷口に差し込んで付近の装甲ごとえぐり取った。
こうしてできた弱点に私も炎の第六位階プロミネンスを使い、ジャイアンメタルスコーピオンの肉体を溶かしていった。
「グオオオオオオオ!!」
身をよじって攻撃から避けようとするが、完全に拘束されているため体を動かすことができない。
魔術が降り注ぎ、ジャイアンメタルスコーピオンがボロボロになってきたころ、ついにシャドウスナップを引きちぎり咆哮を上げた。
「ガアアアア!!」
するとジャイアンメタルスコーピオンの体を中心に巨大な砂嵐ができ、ラースグリズリーとアポピスの二体が飲み込まれて砂嵐の中に消えていった。
さらに砂嵐は巨大になり、あたり一面に砂塵が巻き上がり始めた。
「目を魔力で保護しろ!!」
獣化を解除したレオンハルトが大きな声を上げる。とっさに目を魔力で保護する。
しかしレオンハルトの言葉に反応できなかった者たちは、目を押さえて倒れ始めた。
「おそらくこの砂にはやつの毒が染み込んでいる!目をやられた者を今すぐ後ろに下げろ、やつが来るぞ!!」
砂塵によって悪くなった視界の中から巨大な鋏が目の前を通り過ぎた。
冷や汗が止まらない。もし今のに当たっていたら即死だっただろう。
(師匠に全滅するかもと言われていたのに調子に乗っていた、まさかここまで馬鹿げた生命力をしているとは思わなかった、、、)
「一度この砂塵を抜け出すぞ、全員土塁に撤退しろ!!」
その言葉のもと、撤退戦が始まった




