初めての戦闘訓練
「これより戦闘訓練を始める」
全ての特進クラスを運動場に集め、師匠が宣言した。
他のクラスの人たちも緊張した面持ちで師匠のことを見つめていて、誰も無駄口を叩いていない。
そんな私たちを満足そうに眺めながら、師匠は巨大な次元門を開いた。
「これから、それぞれのクラスごとに別の世界で戦闘を行ってもらう。
強いクラスは、より強い魔物と戦ってもらう。考えて動かないと普通に死人が出るだろうし、下手を打てば全滅することもあるだろう。各々覚悟を決めて臨むように」
こうしてクラスごとに次元門の前に集まって、それぞれが準備をしている。
10組から次元門を潜っていて、私たちのクラスは最後で時間が少しある。
「俺たちなら絶対に行ける、みんなで生きて帰ろう!!」
同じクラスの大きな虎の獣人が、周りに檄を飛ばしていた。
「ウォー!!!!」という歓声がクラスから湧き、引きつった顔から覚悟を決めた顔になった。
(いくら師匠でも、流石にBランクとかだよね…)
相手の強さがどれほどなのか、少し不安になる。
Bランクなら1人でも勝てるが、Bランクが複数だった場合やそれ以上のランクだと勝てるかわからない。
「大丈夫だよ、勇者は戦闘向きなら1人でBランクを討伐してきてるから!!」
山本がそう言って勇気づけてくれた。
勇者たちや先ほどの獣人は堂々としているが、他の生徒はやはり少し不安そうだ。私たちの番が回ってきて師匠がアポピスを連れてやってきた。
「今回君たちが戦ってもらう魔物はそれなりに強い、各々死なないように気をつけろよ。アポピスを連れて行け、こいつがいないと全員死ぬぞ」
そう告げると、師匠はアポピスを置いて満足そうな顔でどこかへ行ってしまった。
みんながポカーンとした表情を浮かべ、困惑している。そんな中、私に気付いたアポピスが嬉しそうに頭をこすりつけてきた。
そうして私たちの番が回ってきた。
私たちの前の巨大な次元門が開き、おそるおそるみんなが入っていった。
「ここは、、、」
次元門を潜った先は、草木が一本も生えていない荒野だった。
ひとまずクラスの皆で固まり、魔物の襲撃に備えることにした。
全身を黒の軽鎧で包んでいるノアという女の子が、Cランクのフレイムホークを召喚して偵察に向かわせた。
また、門を潜る前に檄を飛ばしていた虎の獣人であるレオンハルトは、魔法で土塁を築いて敵の襲撃に備えていた。
こうして事前準備を整え終わり、後は魔物が来るのを待つのみになった。そんな時、ノアが叫んだ。
「巨大なサソリが、南からすごい勢いでこちらに向かってきている!」
全員に緊張が走った。
サソリの魔物は基本小さく弱いが、進化して巨大化した種は脅威度が格段に上がる。
急いで南の方に向かい、急ごしらえではあるが前衛と後衛で分かれて魔物を待つ。
「あの大きさは反則だろ、、、」
前衛の誰かがそう漏らした。よく見てみると、全長40メートルほどはありそうな巨大なサソリがこちらに向かって突進してきていた。
アポピスがかわいく見えてしまうほどである。
「あの魔物は、ジャイアントメタルスコーピオンだ!Aランクの魔物で、尻尾の毒と分厚い装甲で関節以外は守られている。足の関節に攻撃を集中しろ!」
聖王国の勇者である、柳という人がそう指示を出した。
山本から聞いたが、彼は鑑定という能力を持っていて対象の情報を閲覧して弱点を探すことができる。
私たちのところまで1Kmほどになったところで、アポピスが動いた。
角に魔力をためてから一気に解き放ち、サソリに強力な重力をかけて押しつぶそうとした。ギシギシと装甲がきしむ音がしてひびが入ったが、すがに格上ということもあり潰せなかったが、
それでもジャイアンメタルスコーピオンの動きを止めるには十分だった。アポピスが魔力を維持している間に、私たちも攻撃を開始した。
魔術師は、準備していたそれぞれの最大火力の魔術を放っていた。
特にセシリアの、風の第6位階のストームカッターを使い足を3本吹き飛ばした。続いて私が使える魔術で最も火力の高いプロミネンスを使い、炎でジャイアンメタルスコーピオンの体を包み込んだ。
「やったか?」
誰かがそういったが、炎が消えると装甲がところどころ黒くなってはいるが死んでいなかった。
「グオオオオオオオオ!!」
咆哮を上げながら巨大な鋏を振りかざし、魔力を込めてアポピスの重力を打ち消した。
さらに、セシリアが吹き飛ばした足も既に生え始めている。
(もう少し削っておきたかった、、、)
内心で歯噛みするが、やれるだけのことはやったのだ。ここからは全員で時間をかけて削っていくしかない。師匠が、アポピスがいないと全滅だと言っていた理由が分かった。
「俺らも行くぞ!!!」
レオンハルトの号令の下、前衛が突進してくるジャイアンメタルスコーピオンに向かっていった。こうして初めての戦闘訓練が幕を開けた。




