誰かの味方②
どれくらい時間が経ったか分からず時計を見ると、時計の針は両方とも12時を差していた。
もう5時間も経っているのか。
寝室の鏡台の前で、ずっと座り込んでいたみたいだ。
酷い顔だろうなと思い、とりあえず洗面所に向かって顔を洗った。
鏡を見ると、やはり両目は腫れている。
思わずため息が出たが、自業自得だ。
間の悪いことにピンポーンとインターホンが鳴り確認すると、宅急便だ。
「こんにちは!お届け物です!印鑑をお願いします!」
「お疲れ様です。」
印鑑を押し荷物を受け取ると、拓也宛だった。
なんだか嫌な予感がして荷物を開けると、そこには拓也の下着やシャツなどが入っていた。
メモ用紙が入っており、
『家に私物置きすぎだから、半分送り返すね!下着とか減ってたら奥さんにバレるよ! まなみ』と書かれている。
いや、こんな物を夫が留守の間に家に送ってくるなんて、バラす気満々だろう…。
拓也から、妻とは離婚する予定だからとかなんとか言われているんだろうな。
また吐き気がしてきて、思わずトイレに駆け込んだ。
何も食べてないから胃液しか出ない。
さっきうんざりするぐらい泣いたはずなのに、また涙が出てきた。
胃液を吐ききると少しスッキリし、頭が冴えた。
メモと送られてきた荷物と一緒に写真を取り、メモは回収して、探偵からの証拠品を入れている封筒に入れた。こんな不倫の証拠だけせっせと集めて、なんだかバカらしくなってきた。
簡単に身だしなみを整えて、いつでも出て行けるようにとまとめていた荷物と不倫の証拠品を持って家を出た。普段だったらこんな目が腫れた顔だとどこにも出掛けたくないし、何より気分がいつも最悪で外出なんか出来なかったのに、何故だか今日は足が動いた。
どこにも行く宛なんかないのに。