はじめまして、こころ先生③
私の足元で寝ていたゆめさんが、ゆっくり伸びをしながら起き出した。
「あ、ずいぶんゆっくりしちゃった!今何時だろう⁈」
慌てて携帯を見ると、もう0時半くらいだった。
「ごめんなさい!ずいぶんゆっくりしてしまって。帰ります!」
「いえいえ、大丈夫ですよ。それより、もう夜中なので危ないです。タクシー呼びましょう。」
こころさんが携帯電話で電話をかけ始めた。
「いえ、ここからなら歩いても15分くらいだと思うので大丈夫です!」
それに深夜タクシーって高いし!断りを入れたが、こころさんは電話を切ることなく、誰かと話している。
「…はい、お願いします。…はいはい、待ってますね。」
電話を切ると、「知り合いが車で送ってくれます。」とこころさんが言った。
「そんな!お茶まで頂いて悪いです!」
慌てて断るも、こころさんがあの有無を言わせない笑顔をした。
「今は顔色も良くなって来ましたが、体調不良なのは間違いないです。無理しないで甘えて下さい。それと…。」
こころさんが私の前にきて、私の両手をこころさんの両手で包み込まれた。
「一度、病院には行って下さい。眩暈、食欲不振、睡眠不足、身体のだるさが続いているのは、身体からの何かしらのメッセージです。身体からのメッセージに答えてあげて下さい。」
とても真剣な顔つきでこころさんが言う。なんでだろう…。今日初めてあった奴に、どうしてそこまで心配してくれるんだろう。
「…病院行きます。だから、またここに来てもいいですか?」
そう言うとこころさんは「もちろんです。」と微笑んでくれた。
ピンポーンとインターホンが鳴り、こころさんは私から手を離して玄関の方へ行った。
私も後をついていくと、玄関口に1人の男性が立っている。
20代くらいの黒髪で、背も高い。
この背の高さだと、170後半は絶対あるよな。
ってか、イケメンだな!いや待って、よく見ると両耳に小さな石のついたピアスしてる。
不良⁈不良なの⁈ごめんなさい!
ピアス男性=不良みたいな考え方の私でごめんなさい!
「…この人?」
不良イケメンが私の方をじっと見ながら尋ねてくる。え?なんのことだろう…。
ってか、この人は誰なの?
「新井柚子さんです。柚子さん、この方は葵くんです。葵くんが柚子さんを車で送ってくれるので、安心してください。」
え⁈この不良イケメンが⁈無理、無理!!
「こ、こころさん!大丈夫です!私、本当に歩いて帰れますから!」
首をブンブン振って断った。イケメンだけど、不良とドライブは勘弁だよ!
「…確かに深夜に男性と2人で車は怖いですよね。」
「…俺なんだと思われてるの?」
ジロっと葵くんに睨まれるも、自分の命の方が大事だ!こころさんは少し腕を組みながら考え込んでいると、いきなりゆめさんの前にしゃがみこんだ。
「…よし、ゆめさんもついていってあげて下さい。ゆめさん、柚子さんの護衛よろしくお願いします!」
「……。」
…葵くんからの睨みがさらに増した気がする。ヤバいと思っていると、お座りしていたゆめさんが、了解というようにワンっ!と軽く吠えた。