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 私だけ王宮から緊急の呼び出しがあった。

 私のお父様かもしれないヴァーンが王宮に来ているそうだ。

 ついにこの日が来たのかと、ワクワクしている。

 授業中ではあるが、早退して王宮へ向かった。


 応接室には、すでに国王陛下が待機していた。

 さらに、三十代くらいの男性が一緒にいる。


「ソフィーナよ。彼がヴァーンだ」


 優しそうな目をしているが、顔に大きな傷がある。

 なにかで切られたような痕だ。


「俺の……娘かもしれないという者か……」

「ソフィーナと申します」

「ヴァーンだ。さっそくですまないが、血縁関係を確認できるという不思議な道具で試してみたいのだが」

「はい。もちろんです」


 私も楽しみだった。

 すぐに血縁判定紙を使い、それぞれ魔力を込めた魔石を置く。

 すると……。


「赤……。やはりソフィーナとヴァーンは親子関係だったか」


 国王陛下が分かっていたかのような反応だった。

 私は嬉しすぎて、その場で涙を溢してしまいそうだったがグッと堪える。


「お父様……」

「本当に俺の娘なのか⁉︎ 俺はユメでもみているわけではないんだよな……?」


 お父様は自分自身の頬をつねりながら確認をして納得していた。

 つねった頬が赤くなっている。

 どれだけ強い力でつねったのやら。


「すまなかった。そして、陛下! 感謝します。まさか俺の娘だったとは……」

「ヴァーンは魔力騎士ともに優秀だった。ソフィーナの魔力を考えるとキミくらいしか心当たりがなかったのだよ」

「いえ。俺などメンタルにやられて逃げ出した男ですので」

「だが、こうして王宮へ戻ってきた。それに、事情もあったのだろう」


 お父様は国王陛下に対して深々と頭を下げていた。

 本音は私を産んでくれたお母様のことも知りたかった。

 だが、この雰囲気だと、あまり過去のことを聞くのは自重しておいたほうがよさそうだ。


「ソフィーナよ。俺のことを父親だと思わなくとも良い」

「はい⁉︎」

「俺は大人としても最低な男だ。今までも知らなかったとはいえ、子育てのなにひとつしてこなかったのだからな……」

 せっかく探してくれていたのに

 このとき、私は父親だと思っていたデズム子爵が言っていたことを思い出した。

『おまえを育てるつもりなど微塵もない。最低限のエサは提供してやるが、あとのことは知らん。自力で生きるよう努力することだ。私のことも父親だとも思うな』

 デズム子爵が言っていたことと似ているような気もするが、言われたときの重みがまるで違う。

 デズム子爵にはなにひとつ聞き返すこともできなかったが、ヴァーンになら聞くこともできそうだ。


「どこが最低なのですか?」

「俺は……、ソフィーナの母を信頼できていなかったんだ。あれだけ愛していたというのに……」



 お父様が今度は私にも頭を下げてきた。

 どうして謝ってくるのかが理解できなかった。


「なんで謝るのですか? こうして会ってくれて、親子関係だって知れました。お父様が王宮へ来てくれたおかげですよ。それになにか理由があったから私はモンブラー子爵家にいたのでしょう?」

「優しいのだな。……ソフィーナには話す義務がある。俺の過去を」

「嫌な思い出なのでしょう? 無理に話さなくても」

「いや、俺ではなく、亡き妻のためにも話しておこうと思う。聞いてくれるか?」


 私は首を傾げながら疑問になる。

 イメージではお父様はお母様が不倫していたから嫌っているのではないかと思っていた。

 しかし、お父様はとんでもないことを語り始めた。


「妻は……、ソフィーナの母親は俺が遠征している最中に寝取られた。今思えば無理やりだったのだと思う」

「あぁ……」

「妻は泣きながら謝っていたのだが、当時の俺は悔しさで許すことができず、受け入れることもできずに夫婦関係も崩壊へ進んでしまった」


 私と国王陛下はこのまま黙って聞く。

 すでに国王陛下は歯をガリガリと噛み締めていて、今にも口から赤いものが出てしまいそうな状態だ……。

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