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 国王陛下は、プリドラ学園を卒業するまではこれ以上高い地位に叙爵しないと言っていたような……。

 それに、いくらなんでも伯爵はありえないと思うのだが。


「レオルドはすでにいくつもの物づくりを完成させ、商品として販売しそれが国の大きな発展に繋がっている。ソフィーナはすでに魔力のことは学園には知られているのだろう? それに、二人とも首席で入学しているだろうし、ここまで目立ってしまえばむしろ今叙爵しておかねば示しがつかぬ。どこぞの貴族に利用されるかもしれぬしな」

「ありがとうございます」

「ありがとうございます。ところで、私は……次席で入学していますよ」

「な⁉︎ そんなばかなことがあるわけなかろう!」


 国王陛下とセバル侯爵様もひどく驚かれていた。

 この件は私が説明した。もう赤の他人なのだし、国王陛下がそばにいてくれるから話しても問題ないと思っていた。

 学園長から教えてもらったことを話す。デズム子爵の治安維持部隊が関係していたことなどをだ。


 徐々に国王陛下とセバル侯爵様の表情が強張っていく。


「どうやら私はとんでもない勘違いをしていたようだ。もしくは国王の私が騙されていたと考えたほうが正しいか」

「同感です。デズム子爵の評価は非常に高く、もうじき伯爵にさせる予定だったのでしょう? そのようなお方がこのような不始末をしていたとしたら……」

「当然罰を与える。ソフィーナよ。他にデズム子爵に不審な点があったのなら教えてほしい。血が繋がっていなかったとはいえ、今まで共に過ごしていたのだろう?」


 もうこの際だ。

 レオルド様も知らないこと、誰にも話していなかったことを洗いざらい話すことにした。

 今の私には頼れる人がここにいる。

 学園の友達もいる。

 学園長やセドム先生とも魔法の話で親しくさせてもらっている。

 デズム子爵から報復があるかもしれないが、恐がっている場合ではないのだ。

 私も前へ進む。レオルド様と一緒に。


 四歳のころからずっと物置小屋で生活していたことや、ミアからの仕打ち、全てを話してしまった。

 しばらく誰も言葉にすることはなかった。

 レオルド様は、歯を噛み締めていたのか、口に赤いものが……。


 最初に口を開いたのはレオルド様だった。

「どうしてすぐに教えてくれなかったのですか?」

「申しわけございません。レオルド様にも危害が及ぶと思っていたからです。絶対しゃべるなと口封じをされていまして、喋ったら本当になにをするかわからなかったもので……」

「謝る必要などありませんよ。私のことを心配していてくれたのでしょう」


 婚約関係なのに隠し事をしてしまったわけだから、幻滅されてしまってもおかしくないと思っていた。

 しかし、レオルド様はむしろそんな素振りを見せず、私の頭をそっと撫でてくれた。


「今までずっと大変な思いを抱え込んでいたのですね。気がつかずに申しわけありません」

「レオルド様……」


 なんと優しいのだろう……。

 国王陛下の前だというのに、レオルド様にギュッとしてもらいたくなってしまう。

 もちろんそのようなことにはならなかったが、帰ったら……。


「こほん。国としては見過ごすわけにはいかぬ。特に、貴族たる者が幽閉生活を強要させるようなことはあってはならん。合わせて調査するが、ソフィーナよ。もう心配しなくて良い」

「ありがとうございます……」


 みんな優しすぎだ。

 この人たちに精一杯恩返しができるように、プリドラ学園でもっと勉強して、魔導士でもなんでも、国の役に立てるようになりたいと思うようになってきた。

 魔力のことはもう知られているし、将来国の王宮魔導士になる運命なのだろうが、今はそれでも良いかなと少しだけ思っている。


「なおソフィーナには将来、希望があれば王宮直属魔導士になれるようにしておく」

「はい? 希望ですか? 確定ではなく……」

「まだ若い。学園で色々なことを学んでいき、その中でなにかやりたいことも出てくるかもしれぬだろう? 焦ることはあるまい。そのうえで国に仕えたくなったら言ってくれ」

「ありがとうございます!」


 デズム子爵様も、国王陛下の優しい言葉を聞いて少し驚かれているようだった。

 私のことを、国王陛下がこんなに考えてくださっていることが嬉しい。

 レオルド様もホッとひと安心してくれたようだ。


 この日、私が今まで抱えていた悩みは全て解決した。

 軽くなった足取りで、レオルド様と王宮をあとにする。

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