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 思ったとおり、今までの物置小屋よりは広い一軒家だった。

 大人四人くらいは寝られそうな広さの部屋がふたつと、風呂場と座るタイプのトイレ付き。

 おまけに料理をするための場所と道具まで揃っていた。

 今までの生活と比べると大幅に上がっている。


「ソフィーナはどうしてそんなに嬉しそうなのでしょう?」

「嬉しいからですよ」

「説明になっていませんよ。今までよりも窮屈でしょう?」

「そんなこと……こほん。レオルド様が用意してくれた部屋なのですから嬉しいに決まっています」


 嘘はついていない。

 私にとっては十分すぎるほどのクオリティである。


「問題なのは、私は魔力がほとんどないので、部屋のライトや料理の炎がわずかしか使えません。使用人やライフライン専用魔導士を雇うことは現状厳しいですからね」

「魔力? 私が使っても良いのですか!?」


 子爵邸の物置小屋にいたときは、魔法の使用の一切を禁止させられていた。

 今まで一度も魔力を外に出したことなどないが、イメージトレーニングだけは毎日欠かさなかった。

 身体中に流れている魔力の循環だけはコントロールできているため、多分魔法はもう使えると思う。

 それに、ここ数日間だけ屋敷で過ごせた。

 魔力を使ってライトを灯したり、便座付きのトイレで水を流したりする魔導師という人たちを直接見たからやり方もわかる。


 しかし、レオルド様はくすりと笑う。


「まだ学園で魔法科の授業を受けていないでしょう。私もトイレの水を流す程度のことしかできませんよ」


 レオルド様は教えてくれた。

 十五歳までに婚約を決め、学園生活で魔法を含む勉強をする。親と独立して生活できるような一人前になり十八歳で卒業の年で結婚するのが一般的なのだそうだ。

 だからレオルド様は、入学前に二人での生活に関して驚かれていたのかもしれない。


 とにかく魔法を試してみよう。

 むしろ試したい。

 綺麗なトイレに、私の手から水を具現化させて放出してみる。


「あっ!!」

「…………」


 初めてだったため、コントロールが難しかった。

 便座の外側にもこぼれる勢いで勢いよく出てしまった。


「申しわけございません」

「いえ、むしろ驚きました」

「なにか?」


 レオルド様は口を開きながら唖然としていた。


「今、どうやって水を具現化したのですか?」

「へ? 手に魔力を集めて、水を意識しました」

「無詠唱ですか……。魔力で水を具現化させる際、詠唱しないと出てこないものなのですよ。しかも、こんなに勢いよく水が出るなんて……」


 もしかしていきなりマズいことをしてしまったのかもしれない。

 これくらいのことは、貴族家であれば常識なのだとすれば、今までの生活がバレてしまう可能性がある。

 それだけは絶対に避けなくては。


「お父様からもまだ魔法は使うなと怒られていました。自重します……」

「さすが、モンブラー子爵様の血を引くだけのことはありますね。思ったとおり、ソフィーナも魔力が強い」


 うまく誤魔化せたようだ。

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