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32【Side】

 プールサイドで水浸しになった日の少しあと。

 ヴィーネはとんでもなく慌てながら父デズムのところへ全力疾走した。


「ヴィーネよ。騒がしいぞ」

「大変なんです! とんでもなくマズいことになってしまいましたの」

「なんだ? 変な男にでも告白されたのか? その者を私の権力で退学にさせてやろうか」

「いえ、そんな次元ではありません!」

「ほう……」


 ヴィーネが前回よりも血相を変えた表情を見て、デズムは唾をごくりと飲み込む。


「ソフィーナの魔力が本物だったと認められてしまいました」

「なんだと⁉︎」

「プールに水を出すという授業がありまして。ソフィーナったら、プールから水が溢れるくらいに一気に水を具現化してしまいまして」

「ばかな……。そんな規格外な魔力を……? 王宮直属魔導士でもプール一杯に水を一気に具現化させるなど不可能だ」


 ソフィーナの魔力が桁違いにあり、魔力測定器を簡単に壊してしまったことに関しても信憑性が出てきてしまったのだ。

 デズムは今まで見せたことのない勢いで慌てていた。


「まずい……。これはまずいぞ。もしもソフィーナを不正で次席にさせた黒幕が私だとバレれば、ただでは済まない……」

「今のところはお父様の部下が学園に異議申し立てをしたのでしたっけ?」

「あぁ。念のためにな。だが、これはいずれバレる可能性もある。そうなる前に、ソフィーナをなんとかするしか……」

「なんとかって……。もうすでに教師も生徒もみんなソフィーナの魔力を知ってしまっていますよ。おかげで今まで注目を浴びていた私がお払い箱のようになってしまっていて……」


 ヴィーネはすでにクラスメイトから不審の目で見られていた。

 ソフィーナ以上の魔力に期待していた生徒たちだったが、ヴィーネは誤魔化してその日に魔法を使わなかった。

 一部の女子生徒からは、ヴィーネの魔力よりもソフィーナのほうが高いと確信してしまうほどにもなっていた。

 だからこそ一部の生徒からは疑惑が浮上する。


 なぜヴィーネが首席だったのかと。


 ヴィーネもその視線は理解していて、今日の学園は早退したのだ。

 逃げるように。


「こうなったら、あいつに任せるとしよう」

「もしかして、ブルクシアお兄様ですか?」

「あぁ。あいつはプリドラ学園の生徒会長をやっている。なんとかしてソフィーナを学園内で問題を起こさせ、退学に追いやるしか方法はない」

「退学ですか。それなら私もなんらかの罠を仕掛けて、はめてやりますわ!」

「いや、すでに疑いの目を向けられているヴィーネが動くのは危険だ。ここはブルクシアに任せたほうが良い」

「わかりましたわ……」


 ヴィーネはホッとひと安心した。

 すでにソフィーナの本来の魔力を見て、魔力では勝ち目など全くないことを理解してしまったのだ。

 散々馬鹿にしてきた相手が自分よりも魔力が上だということに苛立ちを隠し切れないヴィーネではあるが、それも退学させるまでの辛抱であった。


 しかし、ブルクシアに任せたことによってモンブラー子爵家の雲行きが怪しくなっていくことを誰も知らない。

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