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「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」
プールサイドにいる全員が絶句していた。
私も含めて……。
時はほんの少しだけ前に遡る。
「ソフィーナ君。普段やっているような水魔法をここで放ちなさい」
「はい」
今度こそ、セドム先生からだけでも困らせないようにしなきゃ!
今度こそ、セドム先生を安心させなきゃ!
そればかり気にしていて、セドム先生ばかりを見ていた。
「ねぇ、ソフィーナ!」
「ひゃ!!」
声の主はヴィーネ義姉様。
後ろからいきなり声をかけられ、驚きのあまり私の右手にある魔力が垂れ流れてしまった。
しかも、水を具現化させる準備万全状態。
右手からは滝が流れるような勢いでプールに水が注がれてしまう。
私は当然として、そばにいたヴィーネ義姉様も水しぶきに打たれて全身水浸し。
二人とも私服だったため、色々と微妙に透けている。
慌てて魔力を止めるがすでに時遅し。
「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」
私も含め、プールサイドにいる全員が絶句していた。
最初は空っぽだったプールには、プール開きができるほどの水が溜まってしまった。
トイレ数百回分の水を出してしまい、途方に暮れていた。
セドム先生がようやく口を開いた。
「と、まぁこんな感じで、ソフィーナ君は次席に見合う魔力を持っているからな。今後彼女をバカにしないように」
「いや、次席ってより世界一じゃね……?」
「ってことは、首席のヴィーネ様ってもっと強力な魔力を持っているってことか!」
「見てみたいぜ。俺たちのアイドルヴィーネ様の実力も!」
私の魔力無力疑惑は晴れたらしい。
だが、今度はヴィーネ義姉様に注目が集まった。
「「「「「ヴィーネ様! ヴィーネ様っ!!」」」」」
「う……」
ヴィーネ義姉様の顔から汗が流れ、唾をごくりと飲み込んでいた。
「今はこっち見ないでっ!」
ヴィーネ義姉様は透けた服を押さえながらいちもくさんに退散した。
私も主要箇所は手で覆って隠しておく。
だが、ここで今までではあり得なかったことが起こる。
男子の嫌らしい視線から守ってくれるかのように、女子たちが私を囲ってくれたのだ。
「すごいですわソフィーナ様!」
「え?」
「やっぱり入学試験での魔力は本物だったのですね!」
「これだけの水を手から放出したところを間近で見ましたもの。これが不正だなんて疑うはずもありませんわ」
「むしろ、ずっと疑ってしまっていてごめんなさい」
あたたかい言葉を聞き、心もあたたかくなった気がする。
「こほん……。生徒諸君。ソフィーナ君の魔力はこのとおり素晴らしいものがある。だが、このことは決して家族含め他言しないように!」
「「「「「「「「「「はーい」」」」」」」」」」
この日、一日中男女問わずクラスメイト(ヴィーネ義姉様以外)からずっと話しかけられ、賑やかな学園生活を過ごすことができた。
魔力のことはバレてしまったけれど、大丈夫だよね?




