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17【Side】

 プリドラ学園試験日の夜、ヴィーネは父デズムに猛抗議をしていた。


「絶対にあり得ませんわ!」

「どうしたのだヴィーネよ。おまえの魔力量と実技なら首席確実だと言っただろう? ブルクシアも魔法学科を首席で入学している。ヴィーネも同じ道を進んでもらいたいのだ」

「それが……。試験でインチキをした女がいますの!」

「治安維持担当としても聞かなければならない話だな。いったいどうしたのだ?」


 ヴィーネは悔しそうにしながら、試験当日のことを細かく話した。


「どうやったのかは知りませんが、ソフィーナが魔力測定器を破壊したのですよ」

「なんだと⁉︎」

「直前で、試験官に無駄に聞いていましたもの。どれくらいの数値で破壊されてしまうのかと」

「あれは確か、数値が10000を大きく超えないと壊れない作りになっていたはずだ。大人ですら並大抵の魔導士ですら壊すことなど不可能だ」

「でも、ソフィーナが魔力10000超えなんて絶対にありえないでしょう⁉︎」

「あぁ、ブルクシアですらも3450と言っていた。ブルクシアはすでに大人の魔力量を遥かに超え、将来王宮直属魔導士のトップすらも約束されているようなものだが」

「試験官は一瞬だけ数値の振り子が伸びているのを確認したとかふざけたことを言っていました。あれはソフィーナが男爵だからって知っているから文句を言えなかっただけですわ……。このままではインチキした女なんかに首席を奪われてしまいます……」


 ソフィーナは元々規格外の魔力量を持っている。

 しかも、ヴィーネの挑発のせいでより気合いを入れてしまったのだ。

 魔力測定が10000程度の機械では、ソフィーナの500000近くある魔力量など測れるはずもない。


 ヴィーネやデズムは、当然事実を知らなかった。


「これは不正で間違いはない。いくら私の血を引いているとはいえ、魔力10000超えなど、小さいころから鍛錬をしなければ無理だ」

「どう対処してくださるのですか?」

「むろん、私の権限を使い、ヴィーネを首席とさせよう。実際にソフィーナがいなければ首席は間違いなかったのだろう?」

「はい。私の測定時に、試験官が実技も受ければ確実ねと言っていましたから」


 デズムはそれでも一歩踏みとどまり、考えていた。


「なんで躊躇するのですか?」

「ヴィーネよ。抗議して首席にさせることはできる。だが、その分お前にのしかかる責任も重くなるぞ?」

「責任って、どういうことですの?」


 ヴィーネも心配になり、しっかりとデズムの説明を受ける。


「まずひとつ。裏の圧をかけて首席にすれば、教師たちがヴィーネに注目する。本当に首席にふさわしい人材かどうかを見定めるためにだ」

「それは問題ありませんわ。魔力測定で3000近く出しました。受験生全員の魔力量を確認しましたが、私の次に高かったのが1800でしたから」

「そうか。ならば魔力に関しては問題ない。もうひとつ。これはまぁあり得ないが念のためだ。ソフィーナが本当に機械を壊すほどの魔力量を持っていたらの話だ」

「どうしてありえないことを聞くのです?」

「仮にそうだとしたら、本来の成績を操作することになる。国の最高機関の学園で貴族の圧や不正はあってはならない。ヴィーネだけでなく私の立場も危うくなるからだ」


 ヴィーネはそれを聞き安心した。

 笑顔に戻りながらデズムに話す。


「大丈夫です。絶対にそんなことありえませんから。せっかくですから、ソフィーナを次席にでもしておいてくれません?」

「なぜだ?」

「私の手で、学園の授業を通してソフィーナが不正を働いて魔力測定器を壊してまで首席になろうとしていたことを証明してあげますよ。そうすれば、ソフィーナは退学。爵位も返納することになるでしょう」

「ふむ。それは良い案だ。私も、ソフィーナなどが男爵になるなど許せぬと思っていた。ミアなんか何日も悔しさで寝込んでしまっていたくらいだしな」

「えぇ。復讐してみせましょう!」


 ヴィーネは、ソフィーナの魔力など本来合格基準に満たない80以下だと思い込んでいた。

 レオルドが妙なものを作っている噂は聞いていたため、受験のために不正して合格できるための道具を作ったのだと思っていたのだ。


 ヴィーネの復讐は、これから始まる。

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