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リモートブックストーリー  作者: 北佳凡人


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ウェブ収入


 花とか木とか。狭いながら、庭はちょっとした植物園だ。オレが植えたものはひとつもない。親とか妻は可愛がっていた。目の保養にはなってるし、遺産といえばそうといえる。


 雪の消える春になると、雪に溜まったゴミやら草が庭に出現し、景観を非常に損ねた。


「しかたない」


 たまった枯草やゴミを集めるのは、いつのまにか日課になっていた。春のそれは、一大イベントだが。オレは、ほとんど外にでないので、数少ない身体を動かす機会。熱心に拾い集める仕事は、意外に集中できて苦にならない。拾うほどにすっきりキレイになっていく庭をみるのも好きだった。


「おはようございます」


 隣りに住む女性があいさつ。何人かいる娘さんのひとり。なんという人だったか、10年以上ここにいるのに、隣りの苗字さえしらない。スマホの時計をみれば10時。この時間に、この人が出かけるということから、今日が平日じゃないとわかる。


「……ども」


 そっちを見ないで頭を下げ、家の中にもどる。





 コーラとポテチ。クッキーを3枚。

 それを机に並べて、立ち上げっぱなしのPCの前に座る。


「アクセスはまぁまぁだな。今月も生活分はクリアだ」


 先週たちあげたブログの商品リンクが好調だ。

 キーワード選びに迷ったので、迷ったキーを主軸に、5つのブログを立ち上げた。そのうちの1つの伸びがよかったので、ほかの4つをサテライトブログにして、底上げに徹する。


 アフィリは日進。稼ぎの方法は、新しいウェブ方式が現われるたびに、対応していく必要がある。昔はメルマガにYohott!リンクがあれば確実だったが、いまは多岐に渡り、どれかに絞ることは命取り。


 GUGU先生が進歩したせいで、寄生キーワードでトップなんてことも不可能になった。黎明期にはゆるかったウェブサイトの商標取り締まりも厳しい。どうみてもニセサイトが、キーワードを連呼1000個並べるだけで、本物通販サイトより上位になる……なんてことは不可能だ。アフィリの通信教育が現れた時点で、そんな方法は破綻していたのだが。


 だがオレは、古きブログ方式を貫いてる。キーワードを地道に選定。HPとブログの量産。10個つくって、1個儲かればラッキー。真面目に就職したほうが稼げることだろうが、人嫌いのオレには無理だ。


 よそ様のサイトから、情報をコピー。それをキーワードを散りばめてリライトすれば、自分オリジナル文章が完成。ブログに貼り付ける。それを複数サイトからもってきて、混ぜる。圧縮したり、順序を変えたり。手抜き文はサテライトブログに、気合のはいった長い分はメインブログに投降。


 ほか。それ以外のサイトも、ちょこちょこっと更新して本日の仕事は終わる。時間は午後1時。あとは趣味の時間だ。


「ふぅ……小説。続き書こ……DM?」


“しゅらぶっかー”。オレが小説を書いてる投降サイトだ。「キミも今日から小説家だ」と銘打ってる創立1年の若手サイト。参加作家は3ケタ台と少なく、マンモス投稿サイトの足元にもおよばないが、シンプルなシステムは気に入ってる。自分でもホームページ作ってる感覚から、ごちゃごちゃ飾りたてるページより好ましい。


『面白いです先が気になります』『つまらない消えろ』『文体が古くさいね』


 そんなコメントたまにあったが、DMは始めてだ。

 送り主は、


「運営……だと?」


“貴殿の作品に興味がわきました。出版の相談をしたいと存じます。お会いすることはできますでしょうか”


 原稿用紙2枚。800文字。あいさつにしては長文だったが、かいつまめばそんな内容だ。


「出版? オレの小説が? なんということでしょう!?」


 聞く人のない部屋で、数代前に使い古された冗談が突いて出る。オレは返事を返した。


“ありがたい申し出ですが、直に会うなら辞退します”



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