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「あー、暇だー、なんか面白いことないかなぁ」


 俺は自分の部屋のベッドの上で思わずぼやく。

 俺は現在高校一年生の冬休み真っ最中。

 普通ならウキウキ気分で有意義に休みの時を過ごしたりするのだろうが、あいにく俺はとてもそんな気にはなれなかった。


 まず第一に寒い。外に出たくない。

 そして遊ぶ友達がいない。いや、もちろん全くゼロというわけでは決してないのだが、そんなにワイワイやるような感じでもないので結局は一緒だ。

 となるともう自室にこもるくらいしかなくなるのだが、結局テレビを見たり漫画を読んだりの繰り返していずれは飽きてきてしまう。

 それゆえここまで暇な状態に陥っているのだ。


「やっぱり何か始めた方がいいのかな……でも面倒なんだよな。何をすればいいのかも分からないし」


 ちょっとやそっと動いたところで自体が簡単に好転するとも思えない。あーあ、もういっそのこと別世界にでも行けたりしないかな。もっとスリルある日常を味わいたいよ。


「まぁそんなとこあるわけないけど」


 すっかり多くなってしまった独り言を吐きながら、俺は階段を降りて一階に行く。

 喉が渇いたのでお茶でも飲もうかと思ったのだ。


「はー、喉乾いた」


 俺は慣れた手付きでお茶の粉をコップに入れ、そこにポットでお湯を注ぐ。

 ほんとに簡易的なものだが、これがやっぱり一番落ち着くのだ。


「いただきまーす、ごくごく……うっ、うぐ……ごほ」


 普段通り口につけたのだが、かなり喉が乾いていたためか結構勢いよく口に放り込んでしまった。そのためめちゃくちゃ熱く、取り乱していたら今度は気管にお茶が入り込んでしまいもうとんでもない状況になってしまった。


「ぐは、ぐはっ、がはああーー!」


 俺は訳のわからないままに玄関を飛び出し、家の前の路地へと出る。

 するとそこに丁度車がやってきていて、俺は思いっきり撥ねられてしまった。


「え?」


 こんな、こと……

 何がなんだか分からないまま、俺は全身に痛みを感じつつ息を引き取っていった。









「ふむ、目覚めたかの」


 気づけば俺は雲の上にいた。

 水色の空が眩しく、雄大な世界観の中に俺はいる。

 え……どういうこと?


「混乱するのも無理はないじゃろうて。まぁ落ち着くまで待ってやるから安心せい」


「あの、あなたは……ここは一体……」


 この状況で唯一すがりつける人物へと質問を投げかける。

 その人物は白い服に白い髭を生やしている、老人だった。優しそうな雰囲気を放っているため、そんなに悪い人には見えない。


「ふむ、まぁ儂は何者かということじゃが、まぁ簡単に言ってしまえば『神』じゃな。こちらの次元ではちょいとニュアンスは違うのじゃがの。それとここは天国じゃ。お主は死に、魂はこの場へと導かれた。良かったのう、お主はいい人間という判斷が出たようじゃ。地獄は大変と聞くからのう」


 ……え、なんだ、神……? それに天国って、なんだよそれ、ジョークだったりするのか? でも今思い出したけど俺シンプルに車に轢かれたよな……あれは確実にただ事じゃすまないぶつかり方だった。それにあれがなくなって喉をつまらせて死んでしまっていたかもしれない。あながち嘘と言い切れるものでもなさそうだ。


「その、天国……だとして、神様が私になんの用なんでしょう?」


「ほうほう、意外と切り替えがきくではないか、少し見直したぞ。じゃあ早速本題に入らさせて貰うが、実はお主には一つミッションを頼みたいと思うてのう」


「ミッション……ですか?」


 いきなりのこと過ぎて目を丸くしてしまう。


「うむ。実はの、地球以外にもたくさんの異世界があるのじゃが、そのうちのひとつが現在かなりピンチになっておってのう。お主にその世界を救ってもらいたいのじゃよ」


「異世界?」


「その世界はいわゆる剣と魔法の世界となっておるんじゃがの。そこで魔王と呼ばれる人間の宿敵が勢力を増してきておるのじゃ。これが育ちきるともう誰も手がつけられんくなる。人間は滅びのルートまっしぐらじゃ。その魔王を、お主には討伐してもらいのじゃ」


 ……なんかいきなりすごい話になってるな。


「えっと、いろいろ分からないんですけど、まずどうして僕なんですか?」


「お主には多大なる勇者の適性があるからじゃよ。そんなもの感じたことないと思うじゃろうが、人の適性というのは世界によって全く異なるものじゃ。お主はその世界ではほとんど最強に近い力を行使できるというデータが出ておる」


「神様が直接魔王とやらを討伐してしまえばいいのでは?」


「それは世界の規律上できんのじゃ。そんなことが許されればなんでもありになってしまうからの、世界を作って観測しとる意味がなくなる。それゆえ決まりはきっちりしておっての、今回は人間の転生という技を使うことでルールの穴を縫っておるというわけじゃな」


「いきなりでよく分からないというか、自信がないんですけど……」


「それは大丈夫じゃ。みんな最初は不安になるものじゃよ。それにお主は最強なんじゃ、魑魅魍魎集う異世界といえどすぐに順応するであろう。それでどうじゃ、引き受けてくれるか?」


 ええー、なんか急すぎて心の整理がつかないんだよな……本当に転生するの俺? 確かに望んでいたことではあるけどもだな……というかこれって夢じゃないよな? はぁ、だめだな、いろいろ考えてたら本当にわからなくなる。とにかく俺の心に従うとしよう。

 異世界に転生したいか、したくないかの二者択一。うん、答えは簡単だ。


「……何ができるとも思いませんが、僕でよければぜひやらせてください」


「ふむ! その意気じゃ、流石儂が見込んだ男」


 神様は嬉しそうだった。


「それじゃあ時間も時間じゃから転生させるからの」


「あれ、説明とかは……」


「それはまぁ転生すればなんとかなるじゃろ。ほいならなー」


 その言葉を最後に俺の視界が光に覆い尽くされていった。

 おいおい、マジかよ、こんなんで転生するの俺?


 はぁ、まぁいいか。なんか異世界に転生するとかいうことになっちゃったけど、せっかくの機会だ、前向きに生き抜いてやろうじゃないか。その方がきっと暇じゃないだろうしな。


 そうして俺は期待を胸に意識を閉ざした。

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