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ここはどこだぁ?

わからん


 「ここは?」


「おー、にいちゃん起きたか?にいちゃんずっと寝てたぞー」


ジジイの声に反応するように目を開く。


「ここはぁ!どこたぁ!どこなんだあー!!」


「うるせえよ!クソガキ!!」


がんっ!と言う衝撃を受けて、目の前が真っ白になった。


…………



「…ゔぅ、頭が、痛い」


「頭が痛いんじゃねーよ、頭が悪いんだ」


「そっか、頭が悪いのか、俺」


「そーだ、悪いんだ」


木の匂い、木の天井。

暖かいこの部屋は一体どこだろう。

それから、俺は明日から夏休みで…。


「なあ、じじい、ここはどこだ?」


「お前、口に気をつけろよ?」


口の悪いジジイに今の状況を尋ねるけれど、まともな話ができそうにもない。だから、身体を起こして部屋の周囲を確認する。

 トカゲの標本に、人間の頭蓋骨。

大きな釜に、その窯から顔を出しているのは黒い猫。

俺よりも随分と小柄なジジイは、俺を背に、埃の被った本を熱心に読んでいる。

それに、俺の腰に巻きついたロープは一体なんだ?

俺が見た状況の点と点を結んで行く。

すると、浮かび上がってきたのは…。


「お!おい!俺を殺す気か!?」


「いいや違うぞ!馬鹿めっ!実験台っっだ!!」


何かよからぬことを察した俺が叫ぶと、ジジイはナタを両手に振り返った。それは、俺を悪魔のような目つきで見つめている。


「やめてえ!俺まだ死にたくない!」


「あっはははは!あっははははは!」


一瞬の恐怖に、直ぐに泣き叫び出した俺。

だんだんと俺に迫ってくるじじいは、確実に俺を仕留めにきている。だから俺は最後の最後まで諦めずに説得をする。


「待って待って!なんでもするから…そ、そうだ!あれだ!なんかする!うん!なんかするから!」


「ごめんな、にいちゃん!あひゃひゃひゃ!うひゃっひゃっ!」


とうとう俺の目の前にやってきてジジイは足を止める。

それでも俺は、なんとか動かせる両腕で今にでも振り下ろされそうなナタにストップを掛ける。


「待って!ジジイ!俺美味くないぞ?まじで!ほんっとに美味くないから!」


気を狂わしたジジイの笑いに対して何を言っても無駄そうだった。

冷や汗と共に、もうこの瞬間が嫌になって、身体の反応とは別に、俺の心は諦め掛けていた。

 あー、これで死ぬんだ。

そうだ、死ぬ寸前なら走馬灯かなんか、見れるかな?いや、俺そんな大した人生歩んでないから、いい思い出を見るとしても、ファーストキスのことくらいか?いや待てよ?ファーストキスって母さんじゃん。


『お母さんへ、僕のファーストキス奪ってくれてありがとうございました』

今にでも最悪な走馬灯が発動しそうだった。


「あははは!ギャハハ!グハアアア!ぐはぁっ…」


「えっ?」


心に身体が追いついた頃だった。顔を庇うように上げていた両腕を下ろして、目を瞑って死ぬのなら人想いにやってくれと思わぬばかりに首を曝け出していたんだ。


「ぐふぁ…」


目の前で血を吐き倒れたジジイを前に、一度は死ぬと覚悟した俺の頭の中に混乱が襲ってきていた。


「ちょっとジジイ?ここはどこです?」


「おまえ…やっぱ頭悪いだろ…ぐはぁ…」


やっぱり会話は成り立たなそうだった。






わからん

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