怪獣が異世界転生!! ~敗北者をナメるなよ!! 勇者も魔王もドラゴンもみんな潰して異世界崩壊!!!~
その日、銀河系太陽系第三惑星地球日本国東京都某区では怪獣サティンガーと異星超巨人アルティメートメーンが激しい戦いを繰り広げていた。
「フォー!!(くたばれ! アルティメートメーン!!)」
サティンガーはアルティメートメーンに突進する。
「ジュワ!!(スペシャル光線!!)」
アルティメートメーンは腕を十字に構えるとそこから光線が放出されてサティンガーを直撃した。
「フォー!!(な、なに!! か、身体が維持出来ない?! おのれ!! アルティメートメエエエエエエエェェェェェェェーーーーーーーッン!!!!!!!)」
サティンガーは自身の身体の異変に気が付くが自分では抑えきれずエネルギーが暴走しやがて・・・暴発した。
「フォー!!(ぐわあああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!!!!!!)」
サティンガーの身体が木端微塵になり消滅した。
サティンガーの意識が浮き上がってくる。
「フォー(・・・こ、ここは?)」
目を開けるとそこは穏やかな光が照らされた静寂で神々しい空間である。
「気が付かれたかしら?」
サティンガーは慌てて声のするほうに向く。
「フォー!!(な、何者だ?!)」
「私の名は女神レイサ。 この世界の女神です。 あなたからすると異世界の女神になります」
「フォー?(レイサ? おまえが俺に何の用だ?)」
「あなたは元いた世界でアルティメートメーンに殺されてここに来たのです」
「フォー!!(アルティメートメーン!! 貴様!! あいつの仲間か?!)」
サティンガーは敵意を露にするがレイサは落ち着いて言った。
「落ち着きなさい。 話はこれからですよ」
レイサの言葉にサティンガーはなぜか心が落ち着いていく。
「フォー(・・・不思議だ・・・落ち着いていく・・・何をした?)」
「別に何もしていません。 ただ落ち着かせただけです。 話の続きをしますがあなたには私の世界に転生してもらいます」
「フォー?(転生? おまえの世界に?)」
サティンガーは転生と聞いて疑問を覚える。
「そうです。 そこで自由に生きてもらいます」
「フォー!!(ふざけるな! アルティメートメーンに復讐したいから元の世界で生き返らせろ!!)」
「それはできません。 すでにあなたの魂はこちらに来てしまったので元の世界に送り返すことは残念ながらできません」
「フォー(そんな・・・)」
サティンガーは項垂れた。
「だからあなたには第二の怪獣生として私が管理する世界で自由に生きてもらいます」
「フォー?(自由? おまえの世界で暴れてもいいのか? 壊してもいいのか?)」
「ええ、構いませんよ。 何しろ私が管理する世界は弱肉強食の世界ですから。 弱き者は駆逐され強き者だけがすべてを手に入れることができるのです」
レイサはにっこりと微笑みながらサティンガーを懐柔した。
「フォー!!(いいだろう。 おまえの提案に乗ってやる)」
「ありがとうございます。 これで13匹揃いました。 皆さんも待ちくたびれていたので助かりましたわ」
「フォー?(皆さん?)」
「ええ、あの方たちです」
レイサは3時の方向を指さしたので見てみるとサティンガーは驚愕した。
「フォー!!(な?! お前たちは!!)」
「ギャー!!(久しぶりだな。 サティンガー)」
「ガオー!!(よう、お前も死んだのか)」
「ガァー!!(こんなかたちで会うとはな)」
「クワックワッ!!(お前も運がないな)」
「キュオー!!(まさかこんなところで再開することになるとは)」
「キョーキョー!!(元気だったか? 俺は暇だった)」
「クヒュクヒュ!!(やっとこの生活(?)からもおさらばだ)」
「ギエー!!(俺の顔忘れてないだろうな?)」
「シュー!!(ああ、退屈だったぜ)」
「オー!!(珍しいところであったな)」
「グワー!!(はっはっは、お前もアルティメートメーンにやられたか)」
「ルルルルル!!(また会えて嬉しいぞ)」
「フォー!!(ワンダン!! テュリグー!! スリンバ!! フォムフォム!! ファザイゴ!! シスゼグ!! セセンヴァ!! エドトン!! ナジンドゥ!! テレデー!! イブンヌ!! トゥブルル!!)」
そこにはアルティメートメーンに殺された12匹の怪獣がいた。
懐かしい面々である。
怪獣たちはお互いの再開に会話が弾んでいた。
「再開を喜んでるところ悪いのですがそろそろ私の世界に転生させたいと思います」
「フォー!!(む、わかった)」
ワンダンたちもレイサの言葉に頷いた。
「それでは転生しますね。 皆さん、良き異世界怪獣生を送ってください」
レイサは怪獣たちの足元に手を翳すと今度は超巨大な魔法陣が展開された。
「「「「「「「「「「「「「!!」」」」」」」」」」」」」
魔法陣は虹色に発光すると怪獣たちを包み込み一段と強い光を放つと怪獣たちは目を閉じた。
そして、その光に飲み込まれるように消えていった。
「さぁ、私を楽しませてくださいね」
レイサは誰もいなくなった空間で1柱邪悪な笑みを浮かべていた。
サティンガーたちは不意に空気が変わったことを察すると目を開けて周りを見た。
そこは長閑な風景が広がっていた。
お互いを見ると生前と同じ姿だった。
「フォー(ここは・・・)」
「ギャー!!(どうやら異世界とやらに着いたらしいな)」
「ガオー!!(これからどうする?)」
「ガァー!!(自分たちが暴れたいところに行けばいいんじゃねえか?)」
スリンバの意見に全員が首を縦に振る。
「クワックワッ!!(決まりだな)」
「キュオー!!(それじゃみんな暴れようぜ!)」
「キョーキョー!!(死ぬんじゃねぇぞ!!)」
「クヒュクヒュ!!(お前が言うな!!)」
シスゼグの言葉にセセンヴァが突っ込んでサティンガーたちは大笑いした。
「ギエー!!(それじゃ俺はあっちにいこうかな)」
「シュー!!(じゃあこっちにしようかな)」
「オー!!(ならそっちかな)」
「グワー!!(うーんどっちにしようかな)」
怪獣たちは行きたい方向を決めたり悩んだりしていた。
「ルルルルル!!(みんな生きてまた会おうな)」
「フォー!!(それじゃ行動開始だな)」
怪獣たちは雄叫びを上げると一斉に行動を開始した。
進む方向もバラバラ、移動手段もバラバラだ。
怪獣たちによる星の破壊がついに開始される。
そう、怪獣たちが転生した今日この星は最後を迎えるのだ。
王国───
王が支配し統治する国。
それはどこにでもある中世の風景。
だが今日はいつもと違うモノが現れる。
ズシイイイイイイイィィィィィィィーーーーーーーン!!!!!!! ズシイイイイイイイィィィィィィィーーーーーーーン!!!!!!! ズシイイイイイイイィィィィィィィーーーーーーーン!!!!!!! ズシイイイイイイイィィィィィィィーーーーーーーン!!!!!!! ・・・
ワンダンは方角を決めてからただその道を歩いて進んでいた。
ワンダンの身長はおよそ100メートル、体重はおよそ60000トンである。
この世界にいるドラゴンを何倍も大きくした体格と堂々たる風格を兼ね備えている。
歩く度に震度7以上の揺れが周りに響き渡る。
遠くに見るとそこには人間の国があった。
「ギャー!!(人間の国か)」
ワンダンは人間の国を目指しゆっくりと歩いていくのだ。
王城───
ズウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥーーーーーーーン!!!!!!! ズウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥーーーーーーーン!!!!!!! ズウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥーーーーーーーン!!!!!!! ズウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥーーーーーーーン!!!!!!! ・・・
現在王城を襲う謎の地震が頻発していた。
謁見の間では揺れる度に天井から砂埃が少量ずつ地面へと落ちてくる。
この出来事に国王はただ事ではないと察知した。
「何事だ!! これは!!!」
バアアアアアァーーーーーン!!!!!
扉が開くと兵士が大声で叫んだ。
「へ、陛下!! た、大変です!!!」
「その場でよい!!」
兵士の一人が国王の元まで歩こうとするが度重なる地震でうまく歩行できないでいた。
「はっ!! 見たことがない謎の巨大生物がここ王国に近づいております!!!」
「何?! それはドラゴンか?!」
「いえ、ドラゴンではありませんがもしかするとドラゴンよりも図体が大きいです」
「な?! ドラゴンよりもデカいだと!!」
国王はその一言に青褪め驚愕していた。
「時は一刻を争う!! 今すぐ国民を他国に避難させるのだ!! それとその生物を倒すのだ!!」
「はっ!! 畏まりました!! 失礼します!!!」
兵士はもたつきながらも謁見の間から退室する。
「謎の巨大生物だと? いったい何が起きておるのだ!」
今も地響きが鳴り止まない中、国王は頭を抱えていた。
ワンダンは城壁の近くまで歩いていると地面に蟻のように群がる人間たちがいた。
それはこの国の騎士や魔術師、冒険者など戦える者たちがワンダンめがけて攻撃してきたのだ。
「この化け物め!! くたばれ!!」
「打て!! 魔法をありったけ打つんだ!!」
剣先がワンダンの鋼以上の皮膚にあたるが痛む様子はない。
魔法も同じで火炎魔法も暴風魔法もまるで通用していなかった。
「く、なんて化け物なんだ!!」
「ギャー!!(五月蠅いっ!! 人間どもっ!!!)」
ワンダンはその場で足踏みをした。
「ぐわっ!!」
「ぎゃあああぁっ!!」
「た、たすけ・・・」
ワンダンの足元にいた人間たちは踏まれた。
運良く踏まれなくても地面の揺れでまともに立つこともましてや歩くことすら困難なため足踏みをするたびに1人また1人と人間が犠牲になっていた。
ワンダンが足踏みを止めるとそこには生きている人間など1人もいなかった。
多くの人間がワンダンの足の重さに耐えきれず圧死していた。
ワンダンは再び歩くと城壁まで来て止まった。
「ギャー!!(邪魔だっ!!)」
ワンダンは城壁に向かって尻尾を振った。
バゴオオオオオオオォォォォォォォーーーーーーーン!!!!!!!
ワンダンの尻尾の一撃で頑強に見えた城壁は一瞬にして崩れ落ちた。
「きゃあああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!!!!!!」
「だ、誰か助けてくれえええええええぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーっ!!!!!!!」
「うわあああああぁぁぁぁぁっーーーーーん!!!!! おかあさん!! おかあさーーーん!!!」
「ギャー!!(五月蠅いっ!! 黙れっ!!)」
ワンダンは前足で家屋を攻撃する。
屋根などの破片が吹っ飛び王都の至る所に飛び散った。
当然その下にいた人間たちはただでは済まない。
瓦礫に埋もれた者や破片がぶつかり怪我した者など多くの被害を受けていた。
ワンダンは王都を歩いては建物を破壊する。
さらに火災なども発生し王都は正に地獄絵図だった。
ワンダンは城を見つめると口を開いた。
「ギャー!!(くらえっ!!)」
ワンダンの口にエネルギーが充填されてから5秒後、凄まじいビームが王城めがけて放たれた。
ビームは遮蔽物もろとも破壊しながらそのまま王城に直撃した。
ドゴオオオオオオオォォォォォォォーーーーーーーン!!!!!!!
城は爆発し土煙が大量に舞い爆風がワンダンのところまで届いた。
しばらくすると土煙が収まり王城があった場所は瓦礫だけしかなく跡形もなく消えてなくなった。
帝国───
力こそが全てと言わんとする風体を醸し出している国。
そこを訪れるのは歴戦の猛者たち。
命知らずの者たちの前に気楽にやって来る者がいた。
ズシンッ!! ズシンッ!! ズシンッ!! ズシンッ!! ズシンッ!! ズシンッ!! ズシンッ!! ・・・
テュリグーは気持ち良さそうに走っていた。
「ガオー!!(気持ち良い!!)」
テュリグーの身長はおよそ80メートル、体重はおよそ50000トンである。
蜥蜴のような格好と走り方が特徴だ。
そして当然のごとくその重さで地面が何度も揺れる。
しばらく走っていると帝都が見えてきた。
「ガオー!!(お、なんか発見!!)」
テュリグーは進路を帝都に変えると再び走り出した。
帝城───
皇帝は城の外を眺めていた。
そこからは帝国の全てが見渡され城壁を超えた先も見通せる。
そして予期せぬ来客も同時に見てしまった。
それはものすごいスピードで帝国目指して走ってくるのだ。
近づくにつれて地響きと揺れがすごいことになっていた。
「なんだ?! あれは?!」
怪獣など見たことがない皇帝は驚きしか出てこなかった。
成長したドラゴンでもあんなには大きくならないだろう。
兵士が慌ててやってくる。
「た、大変です!! 城の外に・・・」
「解かってる!! 国家総動員してあれを討つ!! 戦えない者は捨て置け!!!」
「はっ!!」
兵士が立ち去った後、鐘の音が帝都中に響き渡った。
「なんなんだ?! あの化け物は!!」
皇帝も自ら武器を取ると行動を開始した。
城壁の前まで走ってきたテュリグーは止まろうとした・・・のだが、
ドオオオオオオオォォォォォォォーーーーーーーン!!!!!!!
勢いあまって城壁を破壊して転がった。
ズデエエエエエエエェェェェェェェーーーーーーーン!!!!!!!
これにより帝都の3分の1がテュリグーにより壊滅した。
「ガオー!!(痛い!!)」
テュリグーはその場でゴロゴロと転がる。
これにより帝都の被害が更に悪化し気づけば半壊していた。
「ガオー(うう・・・痛かった・・・)」
帝都の被害状況は悲惨の一言に尽きる。
「ぎゃあああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!!!!!!」
「逃げろおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーっ!!!!!!!」
「あなたあああああぁぁぁぁぁっーーーーー!!!!! しっかりしてえぇ!!」
そこら中から悲鳴が鳴りやまないのだ。
「ガオー!!(ん、おおこんなに人間が!! よし遊んでやろう!!!)」
テュリグーは立ち上がるとそこら辺にある建物を人がコイントスする感じで指で弾いた。
弾かれた建物は水切りのように何バウンドしてから城壁にぶつかる。
そして被害を受けた場所から更に悲鳴が飛び交う。
「ガオー!!(面白い!!)」
そこに皇帝を始め多くの戦える者たちがテュリグーを囲っていた。
「攻撃開始!!」
その一言に剣で接近戦を、弓矢や魔法で遠距離攻撃を開始した。
「ガオー!!(ちょっ!! 痛い痛いっ!!!)」
ダメージは全くと言っていいほど通っていないが剣や矢でチクチク刺されて嫌がるテュリグー。
「ダメージが通っている!! このまま押し続けろ!!!」
勘違いした皇帝が攻撃の指示を続ける。
攻撃の手は緩むどころか激しさを増した。
「ガオー!!(ちょっ!! やめろっ!!! やめろって言ってるだろうがあぁっ!!!!!)」
怒ったテュリグーは大声で叫んだ。
その声量は凄まじく帝都にいた人間全員の鼓膜を破壊してしまった。
そして皇帝を含めた最前線で戦う者たちは脳をも破壊されてしまった。
これにより指揮者がいなくなった帝国軍は瓦解しテュリグーの蹂躙はなお続いた。
皇国───
どこか東洋を思わせる雰囲気をした場所。
変わった衣装でお茶を楽しむ文化を持っている人々。
しかし、今は強風が国全体を襲う。
ビュオオオオオオオォォォォォォォーーーーーーー!!!!!!!
スリンバは空高く飛んでいた。
「ガァー!!(風を切るのは最高だな!!)」
スリンバの身長はおよそ90メートル、体重はおよそ40000トンである。
鳥に似たことから他の怪獣よりは軽いけどその分飛行能力に長けている。
今も両翼を羽搏かせて上空を飛んでいる。
地上を見るとそこには美しい人工物を見ることができた。
「ガァー!!(あれは人間の建物? 行ってみるか)」
スリンバは目標を定めると下降した。
皇居───
本来は静かで落ち着いたところ。
御茶や蹴鞠や俳句、和歌や琴など趣向を楽しむ場であった。
しかし、上空に巨大な影が発生し皇国全体を暗闇に包んだと思えば強風が建物を襲う。
その風速はなんと秒速350メートル!! およそマッハ1の風速が皇国全体を襲ったのだ。
当然その風速に耐えられる人間などいようはずもない。
人々は次々と遥か彼方まで吹き飛ばされていく。
ズウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥーーーーーーーン!!!!!!!
スリンバが地上に降りた衝撃で凄まじい揺れが皇国全域を襲った。
『きゃあああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!!!!!!』
『わあああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!!!!!!』
『怖いよおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーっ!!!!!!!』
建物内では人間たちが騒いでいた。
スリンバは辺りを見回すと頑強な建物以外全てを吹き飛ばしていた。
「ガァー?(あれ? こんなんだっけ? 上から見たときはもっと綺麗だったような・・・)」
スリンバは首を傾げる。
上から見たときは美しい場所だったのになんでこんなに閑散としているのか。
そして、スリンバは知らない。
元凶は自分で、全部吹き飛ばしたことを。
「ガァー!!(まぁいっか)」
スリンバは考えるのを止めた。
そこへ無事な建物から人が出てくる。
「な、なんだこれは?!」
「そんな・・・町が吹っ飛んでる?」
「お、おいあれを見ろ!!」
町の被害にショックを受けているとスリンバを見て皆腰を抜かした。
「け、警邏・・・警邏はどうしたぁっ!!」
「は、早くあの化け物を退治しろぉっ!!」
「逃げろぉっ!! 早く逃げるんだぁっ!!!」
王国や帝国と違い皇国の人間は逃げ出していた。
どこが安全なのかも解からないのに唯々逃げるのだ。
「ガァー!!(鬼ごっこ? 負けないよ!!)」
スリンバは両翼を羽搏かせる。
それだけで逃げた人間は凄まじい勢いで吹き飛ばされる。
そしてスリンバが人間たちのほうに飛んだと同時に追い越していた。
スリンバは気づいた、目の前に人がいない。
「ガァー?(あれ? 人間たちがいない・・・)」
地面に降りると振り返る。
「ガァー?(どこに行ったんだ? 隠れるのがうまいな・・・)」
スリンバは周りを見渡すが誰もいなかった。
「ガァー!!(どこだ!! どこにいる!!)」
スリンバは先ほどの場所に戻ると建物を片っ端から壊していく。
だが、人間は1人も出てこなかった。
それもそのはず、スリンバが壊した建物の下敷きになりほとんどの人間が絶命しているのだから。
全ての建物を破壊するとスリンバは落胆した。
「ガァー(つまらないな・・・別の場所に行くか・・・)」
スリンバは全力で両翼を羽搏くと空高く舞った。
その風圧で建物の瓦礫は凄まじい勢いで飛び散ったのである。
公国───
貴族第一主義で形成された国。
王城や帝城、皇居にも負けないくらい立派な城が多数存在していた。
立派な建造物がたくさんある場所に相応しくない物体がやってくる。
ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ・・・
フォムフォムは身体を丸くして転がっていた。
「クワックワッ!!(進め!! 進め!!!)」
フォムフォムの身長はおよそ90メートル、体重はおよそ50000トンである。
アルマジロみたいな身体を丸められるほど柔らかい怪獣だ。
本人は丸まっているので今どこを転がっているのか理解していない。
とりあえず起き上がろうと試みるが坂を転げ落ちていた。
「クワックワッ!!(と、止まって!!)」
フォムフォムは知らないうちにたくさんの建物をすごい勢いで圧し潰していった。
公国のある城が1つ───
他の貴族が治める領地での出来事が次々と報告されていた。
「報告します!! 謎の巨大な丸い物体が西の領主が治める領地が平たく潰れたとのことです!!」
「報告します!! 謎の巨大な丸い物体が北の町を破壊したとのことです!!」
「報告します!! 謎の巨大な丸い物体が北東に出現し都市を壊滅したとのことです!!」
・
・
・
領主は頭を抱えていた。
本来貴族社会は上下関係や横の繋がりがあってもお互いが牽制しあい邪魔者は表舞台から消して自分が上に登ろうとする輩が後を絶たない。
それはこの公国で今後も続いていくだろうと貴族たちは誰もが思っていた。
だが、怪獣たちがこの世界に来てからは一変する。
各方面から聞こえてくる被害状況を考えると次はうちではないかと不安しかないのだ。
そしてその予感は的中する。
「報告します!! 謎の巨大な丸い物体が我が領土に侵入しました!!!」
「なんだと?! 騎士団! 魔法兵団! あとこの都市にいる冒険者たちや戦えるものを至急集めろ!! 都市が襲われる前にその物体を破壊するのだ!!!」
「はっ!! 直ちに!!!」
部下は領主から命令を受けると直ちに行動に移した。
しかし、違う部下が領主のところにやってくる。
「ほ、報告します!! 謎の巨大な丸い物体が都市に近づいてきています!!!」
「な、馬鹿な早すぎ・・・」
ドゴオオオオオオオォォォォォォォーーーーーーーン!!!!!!!
それはこの都市の城壁に何かがぶつかった音だがそれでは終わらなかった。
今度は建造物やガラスの破壊音や人間たちの悲鳴がそこら中から絶え間なく聞こえてくるのだ。
ガラアアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーン!!!!!!!
パリイイイイイイイィィィィィィィーーーーーーーン!!!!!!!
ドオオオオオオオォォォォォォォーーーーーーーン!!!!!!!
『パパアアアアアァァァァァーーーーーッ!!!!! ママアアアアアァァァァァーーーーーッ!!!!!』
『来るな!!!!! ・・・来るなあああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!!!!!!』
『いやあああああぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!!!! 死にたくなあああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーいぃっ!!!!!!!』
外から絶え間なく聞こえてくる破壊音と悲鳴に領主は手で耳を塞いだ。
(やめろおおおおおぉぉぉぉぉーーーーーっ!!!!! やめてくれえええええええぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーっ!!!!!!!)
だが領主の願いは別の意味で叶うのだった。
外を見た瞬間その巨大な何かが領主もろとも城を破壊したのだ。
そこにいた人もろとも轢き殺しまたは圧死させていた。
謎の巨大な丸い物体は知らない間に領主のある都市を次々と破壊していくのであった。
共和国───
この世界一長閑で平和な国。
他の人間の国とは違い城がない唯一の国でもある。
その国の中心に向かって上空12000メートルから何かが落ちてくる。
ボオオオオオオオォォォォォォォーーーーーーー!!!!!!!
それはファザイゴが大気圏を越えて跳躍したあとは重力に身を任せて落ちていた。
「キュオー!!(熱い!!)」
ファザイゴの身長はおよそ80メートル、体重はおよそ60000トンである。
甲殻類を思わせるような外皮が特徴的な怪獣だ。
大気圏に突入したファザイゴの体表面温度は軽く10000度近くまで上昇した。
普通の人間であればこの時点で焼死間違いなしだ。
しかし、怪獣は違う。
熱さは感じてもその頑強な皮膚を傷つけることはできないし、この程度の熱では殺すことすらできないのだ。
「キュオー!!(熱い!! 熱い!! 熱い!!!)」
ファザイゴは熱に苦しみつつ共和国の中心に落ちていった。
国の中心部、そこは多くの人が賑わっていた。
そこでは買い物をする人、観光で回っている人、商売をする人、中には窃盗や誘拐、殺人などの犯罪をする人もいた。
そんな賑わいをみせるところに黒い点が国を覆った。
人々はなんだろうと太陽を見る。
黒点・・・にしては時間が経過するにつれ大きくなっていく。
そして気づいた、気づいてしまった。
巨大な何かが落ちてくることに。
「おい、なんとかしろよ!!」
「水や氷の魔法使える人はいないの?!」
「早くあれを壊せぇ!!」
気づくのが遅すぎて今から逃げても助かる確率は0%だ。
そうなるとあれを破壊するしか生き残る術はない。
善人も悪人も関係ない。
ここで協力しなければ明日どころか今日生きることすらできない。
その国にいる魔法を使えるものが全力で対応することになった。
何千何万という数の水や氷の魔法をこれでもかと上空に放つ。
限界を超えて放つ者や威力を最小限に連発する者などその落ちてくるものに当てまくった。
だがその程度の魔法では焼け石に水であった。
これ以上は無理と判断した者は土の魔法で上空に防御壁を展開し始めた。
これで持ちこたえるつもりでいるが落ちてくる物体の全長と重さに耐えきれる訳がない。
防御壁を易々と破壊してファザイゴが地上に激突する。
その瞬間衝撃と熱風が地表を駆けた。
風速はスリンバが起こした風と同じくらいで秒速360メートル、被害範囲は半径40キロメートルにまで及んだ。
それだけで済まずその熱風によって木々に熱が伝わり火災が至る所で発生したのだ。
また、他の怪獣たちと同じかそれ以上の地震を引き起こした。
落下地点には約2キロメートルの大きなクレーターが出来ていた。
「キュオー!!(ああ、熱かった)」
直撃をくらった人たちは一瞬で圧殺されただろう。
またあまりの温度に全身の水分が蒸発して干からびて死ぬ者たちも多かった。
「キュオー!!(それじゃ、次行ってみよう!!)」
ファザイゴは再び大気圏へと思い切り跳躍した。
中立国───
人間の国の中で人間以外の種族が最も多い北国。
見渡す限り氷に覆われている。
産業としては世界最大級の特殊なダンジョンがあり、レアアイテムを1つでも持ち帰れば2~3年は余裕で暮らせるほどのモノがわんさか眠っている。
ダンジョンをクリアした人は誰1人もいなくて冒険者の間で名誉を得るのに挑む人も多い。
この場所に国ができたのもここのお宝目当ての人が後を絶たないからだ。
そんな一面氷に閉ざされたところをシスゼグは氷の上を滑っていた。
シューーーーーーー
「キョーキョー!!(つるつるする)」
シスゼグの身長はおよそ100メートル、体重はおよそ65000トンである。
見た目はあまり可愛くない残念ペンギンだ。
この極寒の中防寒対策をしていない者はもれなく氷漬けになるがシスゼグの皮膚はこの程度では凍らない。
なぜなら宇宙空間の気温は-273度、ほぼ絶対零度に近い気温だからだ。
それに比べればこの程度の寒さなど無いに等しい。
氷の上で滑っていたが目の前に氷の壁が立ち塞がる。
「キョーキョー!!(ぶ、ぶつかる)」
しかし、シスゼグの身体を撥ね返すどころか逆に粉々に砕け散った。
そして勢いを止められずにそのままの勢いで滑り続けるのであった。
『キョーキョー!!』
ドゴオオオオオオオォォォォォォォーーーーーーーン!!!!!!!
遠方で謎の鳴き声と大きな衝撃音が聞こえてきた。
建物内で冒険者たちは皆顔を合わせて何が起きたのか不思議そうな顔をしていた。
「おい、今の鳴き声と何かが壊れる音はなんだ?」
「わからねえ。 もしかしてダンジョンに何かあったのか?」
「ダンジョンからボスか何か出てきたとか?」
冒険者たちは皆笑い飛ばしていた。
仮にダンジョンから出てきても10000人以上いる冒険者相手にボス1匹程度では勝てないだろうと高を括っていた。
この数十秒後、彼らは後悔する。
自分たちが相手にするのはモンスターではなく怪獣だと。
シューーーーーーー
何かが滑ってくる音がだんだんと近づいてくる。
「なんか滑る音が聞こえないか?」
「誰かが滑ってんじゃねえの?」
「だけどこんなに大きく聞こえるか?」
だんだんと大きく聞こえてくる、そして・・・
ドゴオオオオオオオォォォォォォォーーーーーーーン!!!!!!!
突然建物が破壊され氷の粉塵が待った。
「うわあああああぁぁぁぁぁーーーーーっ!!!!!」
「な、なんだあぁーーーーーっ?!」
「視界がっ!!!!!」
冒険者たちは壊されたところを見るとそこにはシスゼグが滑って行った。
「な、なんだあれは?!」
「まさか本当にダンジョンから出てきたのか?!」
「それにしてもデカすぎるだろ?!」
シスゼグは手を前に出すとなんとか氷の壁があるところに触って止まることができた・・・わけではない。
その手が方向を変えたのだ。
「ちょっ?! 待て!! こっちに来るぞ!!!」
「やばい!! 逃げろ!!!」
冒険者たちは建物から急いで逃げ出した。
その数秒後に建物が倒壊した。
「あ、危なかった・・・」
「! おい!! 周りをよく見てみろ!!!」
「! な、なんだこりゃ?!」
シスゼグによりここら辺一帯の建物が軒並み潰れていた。
いや、建物だけじゃなく人もたくさん潰されていた。
シスゼグは壁まで辿り着くとまたも方向を変えて突っ込んでくる。
「まずい!! ここにいるとあの化け物に殺されるぞ!!」
「ならあんな化け物やっつけてしまいましょう!!」
「そうだぜ!! 冒険者をナメるなよ!!」
再度襲い掛かるシスゼグに冒険者たちは剣や魔法で攻撃を開始するがそのどれもが弾かれる。
「なっ?!」
「うそだろぉっ?!」
「弾かれたぁっ?!」
それと同時に地上にいるものは轢かれ、空中にいるものは放物線を描いて吹き飛ばされる冒険者たち。
「・・・おい・・・あんなの勝てるわけないだろ!!」
「逃げるぞ!! みんな逃げるんだ!!」
冒険者たちは攻撃が通じないことを悟ると一斉に逃げ出した。
だが悲しいかな人間の走るスピードとシスゼグの滑るスピードでは圧倒的にシスゼグに軍配が上がった。
それから一方的な轢き殺しが始まった。
シスゼグはピンボールのように自分が玉になって行ったり来たりしていた。
そこからは冒険者たちの悲鳴しか聞こえてこなかった。
「は、早く逃げないと・・・」
「ダメだ!! 追いつかれる!!」
「こっちに来るなあああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!!!!!!」
次々とその巨体で轢き殺していくシスゼグだが・・・
「キョーキョー!!(と、止まってえええええええぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーっ!!!!!!!)」
ただスピードがつきすぎて止まれなかっただけだ。
こうして怪獣の威厳を見せる前に冒険者たちを全滅させたシスゼグだった。
エルフの隠れ里───
森の中に結界を張って暮らしている誇り高き種族エルフ。
彼らは少数民族で滅多に子供ができないことでも有名である。
自然豊かで何人も立ち入らせない自慢と自信がある結界で外界とは遮断して静かに暮らしていた。
ズシイイイイイイイィィィィィィィーーーーーーーン!!!!!!! ズシイイイイイイイィィィィィィィーーーーーーーン!!!!!!! ズシイイイイイイイィィィィィィィーーーーーーーン!!!!!!! ズシイイイイイイイィィィィィィィーーーーーーーン!!!!!!! ・・・
セセンヴァは屈むと両手両足に力を入れてピョンピョン跳ねながら移動していた。
跳んで着地する度に地響きが辺り一帯を襲っていた。
「クヒュクヒュ(人がいないな・・・)」
セセンヴァの身長はおよそ70メートル、体重はおよそ50000トンである。
怪獣の中では小柄で蛙みたいな見た目をしている。
とりあえず前を進むセセンヴァだがそこで変な感触を受ける。
「クヒュクヒュ?(なんだ? ここの足元が変だぞ?)」
地面につく前に足が透明な何かに触れてそれ以上は足を下におろせない。
不思議に思ったセセンヴァはその透明な何かの上に乗ると何度もジャンプした。
一方エルフの里では上空に現れた謎の生物に恐怖していた。
「な、なんなのあれ?」
「ドラゴンより大きいんじゃない?」
「私たち大丈夫よね?」
セセンヴァがジャンプする度に里全体が大きく揺れ続ける。
そして結界に少しずつ亀裂が入っていく。
「! ねぇ、あれ見て!!」
「結界に亀裂が!!」
「ど、どうしよう!!」
遥か昔、エルフの祖先がこの地に来て何百人のエルフと膨大な魔力と巨大な魔方陣で構成され、今まで一度も外敵から壊されたことがない結界に亀裂がどんどん入っていくのだ。
「クヒュクヒュ?(ん? なんか亀裂みたいなものが入ったな?)」
セセンヴァは更にジャンプを続けた。
ジャンプする度に亀裂がどんどん広がっていく。
『みんな地面に魔力を流し込んで!!』
長老が風魔法で里にいるエルフ全員に魔力を流すよう促す。
エルフたちは地面に手をつくと魔力を流し始める。
結界が光りだし逆再生のように亀裂が少しずつ治っていく。
しかし、セセンヴァがジャンプする度に再生よりも裂傷のほうが上回っていた。
「もう、魔力がない・・・」
「私も・・・」
「つ、疲れた・・・」
先に根を上げたのはエルフたちだ。
最初は少数だったがだんだんと増えていき、終いにはほとんどのエルフが魔力切れを起こしてしまった。
最後まで頑張っていたのは一番の魔力量を持ち魔法の使い手でこの里を創成し預かる長老だった。
「「「「「「「「「「長老!!」」」」」」」」」」
「ぐぅ・・・」
長老の額からは脂汗が大量に流れていた。
すでに限界以上の魔力を流していた。
「も、もう・・・無理・・・」
長老の魔力が途切れた。
それはこの里の結界が維持できないと同義である。
魔力の供給が途切れたため結界にどんどん亀裂が入っていく。
「あたしたちどうなっちゃうの?!」
「ここにいたら危険よ!!」
「逃げましょうよ!!」
里内は大パニックだった。
今まで外に出たことがない箱入りの娘ともいえるエルフたちはどうすればいいのかわからなかったのだ。
『みんな逃げて!!』
長老の側近が風魔法で里から逃げるように指示した。
エルフたちは四方八方へと散り散りに逃げたのだ。
次々に逃げるエルフたち。
長老を含む全員がなんとか里を脱出してから数分後、
パリイイイイイイイィィィィィィィーーーーーーーン!!!!!!!
創成以来一度も破壊されることがなかった結界が崩壊した。
「・・・そんな・・・」
長老はその場で膝から崩れ落ちた。
何万年以上も里を外敵から守ってきた結界が完膚なきまでに破壊されたのだ。
「長老!! ここは危険です!! 逃げましょう!!!」
「・・・わかったわ。 みんな逃げるわよ!!」
こうしてエルフたちは里を失った。
「クヒュクヒュ!!(やっと壊れた。 さてここには何があるかな?)」
セセンヴァは見渡すと先ほどまではただの森にしか見えなかった場所から急に何棟もの建物が現れた。
「クヒュクヒュ!!(おお、人間の里か。 とりあえず破壊しておくか)」
セセンヴァは1棟1棟律儀に壊していくのだった。
ドワーフ王国───
火山の近くで天然の要塞と化してるドワーフの国。
彼らは火と共に生きる種族だ。
その卓越した腕は名立たる武器を世に広め、若手のドワーフたちは日夜匠になるべく修業し、冒険者たちは匠の武器を手に入れようと訪れる者が後を絶たない。
ザクザクザクザクザクザクザク・・・
エドトンは地中に潜り穴を掘っては進んでいた。
「ギエー?(ここどこ?)」
エドトンの身長はおよそ80メートル、体重はおよそ45000トンである。
見た目は土竜そのままだが、外皮は他の怪獣たちと変わらない。
エドトンはとりあえず掘って掘って掘りまくって前に進んでいくと突然大きな空洞に繋がるところを掘り当ててそのままマグマの海へダイビングした。
「ギエー!!(マ、マグマ?! びっくりした!!)」
他の怪獣もそうだがエドトンは星に降りる際、何の対策もなく大気圏を突入して地上まで降りてくる。
10000度の摩擦熱に比べれば1500度のマグマなど大したことはないのだ。
エドトンはマグマの海から出るととりあえず上を目指すことにした。
ドワーフ国では地面が大きく揺れていた。
ドワーフたちはいつものように活火山が活動していると勘違いしている。
何十年に1回は噴火しているがそんな昔のことなどドワーフたちが気にも留めないだろう。
仮に今噴火しても明日には『噴火したんだ、それで?』というのがドワーフの考えである。
例外としては大好物の酒だ。
酒の恨みは末代まで続く、ドワーフにとって酒は命と同等の価値があるのだ。
そんな感じでいつも通りの日常と受け取るドワーフたち。
しかし、次の瞬間彼らは信じられない光景を目にする。
まず地面が大きく揺れるがその長さがいつまで経っても収まらない。
活火山が噴火して火山灰だけでなく溶岩石がドワーフたちの国に降ってくる。
そして最後に活火山の中から怪獣が現れたのである。
それを見たドワーフたちは騒めいていた。
「おい、何だあれは?」
「ドラゴン・・・じゃないよな?」
「あんなところに化け物なんていたのか?」
ドワーフたちがザワザワしているとエドトンは大声で叫んだ。
「ギエー!!(やっと出られた!!)」
そして燥ぐ。
エドトンがその場で足踏みして喜びを露にしているが地揺れと地響きと地割れによりあちこちからマグマが噴出していた。
「ぎゃあああああぁーーーーーっ!!!!! マグマが流れてくるぞぉ!!」
「やばい!! 早く逃げろ!!!」
「わしがこんなところで死んでいいはずがない!!」
地震でまともに逃げられないところにマグマに飲まれるドワーフが続出していた。
エドトンは眼下に眺めるとドワーフたちの国がそこにはあった。
「ギエー!!(お、建物発見!! 行ってみよう!!)」
エドトンは斜面を降りようと山肌を一歩踏み出すと滑った。
まるでバナナの皮を踏んだ結果滑って転ぶように。
そのまま尻をついた状態で斜面を滑っていく。
「あの化け物がこっちにくるぞぉーーーーーっ!!!!!」
「ダメだ!! 逃げられない!!!」
「もうお終いだ・・・」
エドトンはドワーフの国をそのまま滑ってほぼ全壊させた。
「ギエー(うぅ、まさか滑るとは・・・)」
なんとか止まるとエドトンは振り返る。
そこにはドワーフだった国の残骸しか残っていなかった。
「ギエー(なんてことだ・・・)」
エドトンは悔やんでいた。
それは自分の手で破壊できなかったことを・・・
獣人王国───
平原にある人とは少し異なる種族が集まった国。
犬人族、猫人族、猿人族、兎人族、象人族、虎人族、狼人族、熊人族・・・様々な獣人がいる国だ。
年に1回行われる部族大会で優勝したものがその国の代表者になる人族にはない風習がある。
ドゴオオオオオオオォォォォォォォーーーーーーーン!!!!!!! ドゴオオオオオオオォォォォォォォーーーーーーーン!!!!!!! ドゴオオオオオオオォォォォォォォーーーーーーーン!!!!!!! ドゴオオオオオオオォォォォォォォーーーーーーーン!!!!!!! ・・・
ナジンドゥは走っていて途中の岩に足を引っかけたあとゴムボールのように弾んでいた。
「シュー(ぐるぐるぐるぐる・・・め、目が回る・・・)」
ナジンドゥの身長はおよそ90メートル、体重はおよそ55000トンである。
見た目は完全に丸々太った猫。
ナジンドゥはなんとか止まろうと手足をばたつかせるがうまく止まってくれない。
転がしたボールはいつしか威力が落ちて止まるもの、ついに弾むのを止めてナジンドゥは止まるのに成功したのだ。
「シュー(ああ、目が回った・・・?)」
周りを見渡すとそこには獣の顔をした人が大勢いた。
「かかれ!!!!!」
獣人の長が号令をかけると多くの獣人がナジンドゥに対して剣で切りかかり矢を射ってきたり攻撃魔法を放ってきた。
ナジンドゥはその攻撃を受けたくないのか軽く跳躍する。
それでも1000メートルは跳んでいた。
そして重力に伴い落下する。
獣人たちはその場を急いで離れる。
退避した直後にナジンドゥは地面に着地する。
ズシイイイイイイイィィィィィィィーーーーーーーン!!!!!!!
震度4以上の揺れが獣人たちを襲うが、これを予期していたのか皆ジャンプしていた。
一部の者は揺れが落ち着く前に着地して横転していたがすぐに反撃に移る。
「シュー!!(やるな!!)」
ナジンドゥは身体を震わせた。
接近戦を仕掛けた者たちが次々と当たり剣を弾かれる。
ナジンドゥは尻尾を横に振る。
獣人たちは迫りくる尻尾を受け止めたり回避しようと試みる。
受け止めたものは威力を殺せず吹っ飛ばされ、回避したものも風圧に耐え切れず飛ばされた。
「攻撃を続けろ!! ここで倒さなければ我々に未来はない!!!」
獣人たちは必死になってナジンドゥに攻撃した。
しかし、どの攻撃もナジンドゥには痛痒すら与えていなかった。
しばらく好きなように暴れさせたがあまりにも非力すぎて欠伸が出たほどだ。
「シュー(飽きた・・・)」
ナジンドゥは右前足を大きく振り上げるとそのまま地面を叩いた。
ドゴオオオオオオオォォォォォォォーーーーーーーン!!!!!!!
獣人たちは慌てて上空へ跳んで回避するがナジンドゥは続けて尻尾を振った。
大半の者は確認する暇もなく直撃を受けていた。
先の一撃で絶命した者が大多数いて、生き残った者も地面に強く叩きつけられて二度と立ち上がることはなかった。
「なっ?! このままでは・・・みんな逃げろぉ!!!!! 逃げるんだあああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!!!!!!」
獣人の長は倒すのを諦めて国を捨てて逃げる道を選んだ。
生き残った獣人たちも賛成したのか四方八方散り散りに拡散して逃げ始めた。
「シュー!!(鼠みたいにちょこまかと逃げるなぁ)」
ナジンドゥは軽く走ると一番後方にいた獣人に追いついて軽く小突く。
「ぐわぁっ!!」
ナジンドゥからしてみれば軽く触れた程度だが獣人からは即死に至る一撃だった。
そのあともナジンドゥは軽く走っては獣人を小突いていた。
しばらくするとナジンドゥは飽きたのかどこかに歩いて行ってしまった。
「このままでは世界が・・・」
獣人の長はあの化け物を倒すには自分たちだけではどうしようもないことを悟った。
翼人王国───
そこはこの世界でも1、2を争う断崖絶壁だ。
壁の高さは約9600メートル。
烏人族、鷹人族、鷲人族など翼を持つ翼人が外敵から守るために作られた国だ。
ガシガシガシガシガシガシガシ・・・
テレデーは両手両足を使って器用に登っていた。
「オー?(この先には何があるかな?)」
テレデーの身長はおよそ100メートル、体重はおよそ70000トンである。
見た目は猿で怪獣たちの中では人間のように手を使っていろいろできる器用な怪獣だ。
「オー!!(山頂目指して登ろう)」
テレデーは断崖絶壁を器用に登って行った。
一方翼人たちは下界からの地響きがなんであるか斥候を飛ばしていた。
「大変です!! 謎の巨大生物がこの断崖絶壁を登ってきます!!」
「何?! こんな辺鄙なところをか?!」
「はい!! 足場を上手く利用して次々と上のほうに移動しています!!」
翼人の長はこんな場所を攻めてくるのはドラゴンくらいだと思っていた。
「・・・ここまであと何分くらいで着く?」
「早くてあと10分ほどかと」
「10分か・・・よし各員に告ぐ!! 現在我が国に進行している侵略者を迎撃する!!」
「「「「「「「「「「はっ!!」」」」」」」」」」
翼人たちはテレデーを討ちに向かった。
その頃テレデーは順調によじ登っていた。
現在は4000メートル付近だ。
「オー!!(結構高いな)」
テレデーが感心していると翼人たちが背中に移動していた。
「撃てぇ!!!」
翼人の長は部下たちに攻撃命令を出す。
皆暴風魔法や羽での風圧を使った攻撃をテレデーに向けて放った。
普通の人間ならこの時点でバラバラのミンチ状態になっているだろう。
だがテレデーにとってはただの風と大して変わらなかった。
その後も何百何千とテレデーの背中に撃ち続けるがダメージを全く受けなかった。
「なっ?! 化け物め!!!」
翼人の長は剣を抜くとテレデーに切りかかった。
他の翼人たちも剣や槍を構えると長に続いてテレデーに突進した。
無防備なテレデーに次々と剣や槍が刺さるが皮膚に裂傷はつかなかった。
「オー!!(痛!! 痛い!! なっ?! お前ら何してんだ?!)」
翼人たちに気づいたテレデーは左手で牽制した。
「総員退避!!」
翼人たちはテレデーの攻撃を見事に回避した。
本来なら回避できずに一撃死だったが今いる場所と不安定な攻撃から翼人たちは辛うじて避けられたのだ。
「オー!!(おのれ! ちょこまかと!!)」
テレデーは何度も左手をぶんぶん振り回して攻撃するも大雑把なため悉く回避された。
「総員攻撃開始!!」
翼人たちは再び暴風魔法や羽での風圧を使った攻撃をテレデーに向けて放った。
しかし、攻撃する場所は背中ではなくテレデーの右手だった。
「オー!!(ちょっ?! 何するんだ?!)」
テレデーはあまりのことに右手を放してしまった。
自身の重さに耐えられずテレデーは地面に向かって落ちていった。
「オー!!(なんだと?!)」
翼人たちは落ちていくテレデーを見て歓喜していた。
「やった!! やっつけたぞ!!!」
「我らに敵うはずがない!!」
「これであの化け物も終わりだよ!!」
しばらくすると地面にテレデーが叩きつけられた音が鳴り響く。
ドゴオオオオオオオォォォォォォォーーーーーーーン!!!!!!!
翼人の長は一息つくと、
「皆良くやってくれた!! これから地上に行きあの化け物が生き・・・」
ドオオオオオオオォォォォォォォーーーーーーーン!!!!!!!
音が鳴り5秒も経たないうちにもの凄いスピードで翼人たちのいるところを軽く超えて何かが上に移動していった。
通り過ぎて行った後に暴風魔法を遥かに超える風が翼人たちを襲った。
「「「「「うわあああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!!!!!!」」」」」
「「「「「きゃあああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!!!!!!」」」」」
翼人たちは墜落しないように必死に風に抗った。
やがて風も収まりいつもの和んだ風が吹いていた。
「くぅっ!! な、なんなんだ?! 今のは?!」
翼人の長は上空を見上げる。
いつもは雲に覆われているが、今は雲が霧散し頂上まで見える。
そこには先ほどの化け物が頂上にいた。
「オー!!(何するんだ?! この蠅ども!!!)」
テレデーは怒っていた。
それはもうカンカンに。
テレデーは下方を眺めると口を開いた。
そしてエネルギーが口に集束されていく。
「オー!!(くたばれ!! この蠅ども!!!)」
テレデーは口からビームを放った。
ドゴオオオオオオオォォォォォォォーーーーーーーン!!!!!!!
その3秒後には地面に到達していた。
だがテレデーは今もビームを放ち続けていた。
翼人たちがいると思われる場所を徹底的に攻撃し続けた。
30秒ほどで地面からの土煙がテレデーの近くまで舞い上がってきた。
視界も悪くこれ以上は無意味と判断してもなお怒りが勝っているのかテレデーは攻撃の手を緩めなかった。
攻撃が終わったのはそれから10分後だった。
「オー!!(ふぅ、すっきりした!!)」
テレデーの眼下にはいくつものクレーターができていた。
海人王国───
大海の中にある神秘的な国。
魚のままの姿もいれば人魚や半魚人など海に関する種族がいる国だ。
ゴポゴポゴポゴポゴポゴポゴポ・・・
イブンヌは海の中を優雅に泳いでいた。
「グワー!!(澄んでていい場所だ)」
イブンヌの身長はおよそ90メートル、体重はおよそ60000トンである。
その姿は亀に酷似している。
海の中をすいすい泳いでいると前方から人食い鮫が出てきてイブンヌに噛みついた。
しかし、人食い鮫のほうの歯が全て砕けた。
人食い鮫は恐怖し逃げて行った。
「グワー!!(逃がすか!!)」
イブンヌは口を開けると海水を吸い込んだ・・・
海底人たちは今日も今日とて穏やかな日々を暮らしていた。
水中の奥まで攻めてくる外敵などドラゴン以外にはいないのだ。
そう、あれが現れるまでは・・・
遠方から巨大な生物が海底人たちのいるほうへとゆっくり進んでいる。
そして異変が起こった。
最初は潮の流れが少し変わった程度だった。
だが1分、2分、3分と経つにつれ潮の流れが徐々に強くなっていった。
10分後、海底人たちが住む国は複数の竜巻に襲われていた。
こんな現象は過去に一度もなかったことだ。
これで終われば酷い災害だといって復旧して終わりだろう。
しかし、本番はこれからである。
20分後、海底人たちは次々とイブンヌの口に吸い込まれていく。
それは老若男女、善人悪人、無垢煩悩、富豪貧乏、強者弱者問わず吸い込んでいくのだ。
抵抗力の弱いものから被害を受ける。
「姉ちゃぁーーーーーっん!!!!! うわぁーーーーーっ!!!!!」
「坊やぁーーーーーっ!!!!! 坊やぁーーーーーっ!!!!! きゃあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!!!!!!」
「あなたぁーーーーーっ!!!!! 助けてぇーーーーーっ!!!!!」
「おまえぇーーーーーっ!!!!! 行くなぁーーーーーっ!!!!!」
「お兄ちゃーーーーーっん!!!!! 助けてよぉーーーーーっ!!!!!」
父が、母が、兄が、姉が、弟が、妹が、祖父が、祖母が、夫が、妻が、息子が、娘が、赤子が、恋人が、友人が次々と犠牲になっていく。
言葉も、悲鳴も、音すらも吸い込まれていった。
助けたくても助けられない。
止めたくても止められない。
何もかも吸い込んでいく、ブラックホールのように。
30分後、そこは穏やかな海があった。
否、生物という生物が存在しない海水以外は唯々何もない海底空間が出来上がっていた。
イブンヌは口を閉じた。
「グワー?(とりあえず鮫は吸い込めたかな?)」
人食い鮫など30秒もしないうちにイブンヌの胃の中だ。
「グワー!!(そういえば海には何もないな)」
海底人たちの国などすでに壊滅どころか吸収したことすら自分は気づいていなかった。
亜人王国───
ジャングルの奥地にはひっそりと暮らす亜人たちが集まっていた。
ここは他の国と違い、鎖国的だ。
なぜならここにいるのはゴブリン、オーク、オーガなど人と形は同じだがその本能は魔族に近い。
シュルシュルシュルシュルシュルシュルシュル・・・
トゥブルルは地面を這い移動している。
「ルルルルル!!(ちょっと蒸し暑いな)」
トゥブルルの身長はおよそ70メートル、体重はおよそ55000トンである。
蛇のそれと同じだがトゥブルルには手足が存在していた。
プレシオサウルスに似ているかもしれない。
「ルルルルル!!(もうちょっと進んでみるか)」
トゥブルルはジャングルの奥を進んでいった。
亜人たちはジャングルに住む肉食動物や木の実などを採取して日々暮らしている。
その日もいつもと変わらない日常がそこにある・・・はずだった。
「ジャングルサワガシイ」
「ジャングルウルサイ」
ジャングルの中では小鳥や動物の声が絶え間なく聞こえてくるのがいつものことだが、今日は声が全然なく代わりに葉っぱが揺れる音だけがやけに大きく聞こえる。
「ジャングルオカシイ」
「ジャングルヘン」
亜人たちはジャングルがいつものそれとは違うのに気づくと集落へと急いで戻ろうとした。
そして、目の前に蛇の頭が見えた。
「ヘビ?!」
「デカイ!!」
「ルルルルル!!(いただきます)」
トゥブルルは亜人の1人を素早く口の中に入れ飲み込んだ。
「ニゲロ!!」
「クワレル!!」
亜人たちは獲物を置いて逃げようとするが1人、また1人とトゥブルルに喰われていく。
最後の1人が集落に戻る寸前に喰われた。
「ルルルルル!!(ごちそうさま)」
トゥブルルは集落へと足を踏み入れた。
「ナンダアノヘビハ?!」
「タベモノ!!」
「コロシテタベル!!」
好戦的な亜人たちはトゥブルルの力量も考えずに突っ込んでいった。
トゥブルルは先ほどの飲み込んだ者たちよりは強いと判断した。
とりあえず相手の力量がどれくらいかを計るために攻撃を受けることにした。
トゥブルルの皮膚と亜人たちの武器がぶつかり合う。
しかし、トゥブルルの皮膚には傷1つついていなかった。
亜人たちは効いてると判断してか攻撃を続けた。
が、どれも傷つけることはなかった。
「ルルルルル!!(この程度か? もうお前たちに用はない)」
トゥブルルは一番好戦的な亜人を一瞬にして丸呑みした。
それを見ていた亜人たちは驚いた。
なぜなら今トゥブルルに喰われた亜人がこの集落で一番強かったからだ。
亜人たちは叫んで逃げた。
「ココカラニゲロ!!」
「アノヘビニクワレル!!」
トゥブルルは1人1人時間をかけて喰っていく。
亜人たちは必死になってトゥブルルから逃げる。
足の速い亜人はジャングルをすでに抜けて遠くまで走って逃げていた。
トゥブルルは追いかけずに放置した。
なぜならトゥブルルたち怪獣が最後にこの星を破壊するのだから。
「ルルルルル!!(楽しみは少しでもとって置かないとな)」
トゥブルルは愉快そうに笑った。
巨人王国───
そこは森の奥にある古代遺跡。
亜人たち同様にひっそりと暮らすのは巨人たちだった。
子供の巨人でも身長およそ3メートル、大人になると身長およそ10メートルくらいだ。
ズシイイイイイイイィィィィィィィーーーーーーーン!!!!!!! ズシイイイイイイイィィィィィィィーーーーーーーン!!!!!!! ズシイイイイイイイィィィィィィィーーーーーーーン!!!!!!! ズシイイイイイイイィィィィィィィーーーーーーーン!!!!!!! ・・・
サティンガーはとりあえず森の中を王者の風格を漂わせて歩いていた。
「フォー!!(綺麗な景色だ)」
サティンガーの身長はおよそ120メートル、体重はおよそ100000トンである。
見た目はティラノサウルスというかステゴサウルスというかとにかく恐竜である。
サティンガーは気が付く。
遠方に煙がでていることに。
それは巨人たちが起こした火だった。
「フォー!!(煙? 行ってみるか)」
サティンガーは興味を持ったのか煙のほうへと歩いていく。
巨人たちは渓谷で川魚を採取したり湖で貝を拾ったり森で狩猟や木の実などで日々の生計を立てていた。
今日もいつも通りに狩りに行こうとするが・・・
バサバサバサバサバサバサバサ・・・
森から大量の小鳥が一斉に逃げ出した。
そして大地が揺れて遠方から何かが近づいてくる。
ズシイイイイイイイィィィィィィィーーーーーーーン!!!!!!! ズシイイイイイイイィィィィィィィーーーーーーーン!!!!!!! ズシイイイイイイイィィィィィィィーーーーーーーン!!!!!!! ズシイイイイイイイィィィィィィィーーーーーーーン!!!!!!! ・・・
「ナンダ?」
「オレタチイガイノキョジンガココニクルノカ?」
たまに嫌がらせする他の部族の巨人がくるのだ。
巨人たちは他の部族の巨人が来たと勘違いしていた。
今回もどうせ嫌がらせだろうと一番背の高い大人の巨人が地響きのほうを見て腰を抜かした。
ズデエエエエエェーーーーーン!!!!!
「オイ、ドウシタ?」
「バ・・・」
「バ?」
「バケモノガヤッテクル」
その言葉に皆驚いた。
何を見たのかわからない大人の巨人は子供を肩車した。
「トウチャン、デッカイイキモノガコッチニクル」
「スゴイ、オオキイ」
「トウチャンヨリ、デカイヨ」
肩車された子供たちは次々と感想を述べる。
子供たちはサティンガーを見て興奮していた。
しばらくすると普通の大人の目線からでもわかった。
「ナニアレ?」
「コッチニムカッテクルゾ!」
「タイヘンダ!」
サティンガーを見た大人たちは大慌てしていた。
それはそうだろう。
巨人を超える生物などこの世界ではドラゴンくらいなものだ。
巨人たちは女子供を遺跡の中に逃がしていた。
老人なんかは老い先短いのを理由にいざとなれば老兵として戦うことを選ぶのが多かった。
巨人たちはそれぞれ武器を取るとサティンガーを待ち構えた。
サティンガーは煙の出ているところを見るとそこには人がいた。
人といっても違うところは普通よりも大きいくらいだろう。
「フォー?(人? あんなに大きかったっけ?)」
そんなことを考えていると何かが飛んできた。
サティンガーは避けられずにそれが胸に当たった・・・が、強靭な外皮で弾いてしまった。
「フォー!!(痛いな!! 何するんだよ!!)」
実際には無傷だがサティンガーは怒りを露わにすると巨人たちのところに走り出した。
「ヤリガキカナイ!!」
「カタイイキモノ!!」
「ユミヤヲモッテコイ!!」
巨人たちは対ドラゴン用に開発したビッグボーガンを開けた場所に移動させると弦を引いた。
続いて特製の矢(というよりも鉄の槍?)をセットする。
サティンガーが走ってここまでやってこようとする。
射線上にサティンガーが現れるまで待つ。
しばらくすると射線上にサティンガーを捉えた。
「イマダ!! ウテ!!!」
ビッグボーガンのトリガーを引いた。
ヒューン!!!
矢はサティンガー目がけて飛んで行った。
そして矢がサティンガーの腹に命中した・・・が、またも弾かれてしまった。
「フォー!!(痛い!! さっきのより痛い!!)」
それでも傷一つついていないサティンガー。
「コレデモダメカ」
「アキラメルナ」
「ミンナブキヲモテ!!」
所詮は自分たちの力が加わっていない道具、だから自分たちの力が加わればサティンガーに傷を負わせ倒すことも容易だと巨人たちは考える。
巨人たちは剣や槍、斧などを持ってサティンガーに対抗しようとしていた。
そしてついに巨人たちの目の前にサティンガーが立った。
巨人たちは唾を飲み込み見上げていた。
なぜなら自分たちの10倍以上の身長だったからだ。
一番背の高い巨人ですらドラゴンよりわずかに背が劣る程度なのにそれでも6倍の身長差があった。
サティンガーは右前足で一番背の巨人の1人を潰そうとする。
両手で受け止めるがあまりの重力に早くも膝をついた。
「タスケテクレ!!」
「マッテロ!! イマ、タスケル!!」
「コウゲキダ!! コウゲキシロ!!」
巨人たちは次々とサティンガーに剣や槍、斧で攻撃する。
だがどの武器もどんな攻撃もサティンガーには効いていなかった。
巨人たちは更に力を加えて攻撃するが結果は伴わなかった。
「ヤ、ヤメロ!! アアアアアァーーーーーッ!!!!!」
サティンガーの右前足を受け止めていた巨人は耐え切れず潰されてしまった。
「「「「「「「「「「!!」」」」」」」」」」
サティンガーが右前足を上げるとそこには無残な巨人の姿があった。
一目で絶命したことがわかる。
「ヨ、ヨクモドウホウヲ!!」
「ユルサナイ!!」
「ゼッタイニコロス!!」
若い巨人たちが怒りにまかせて攻撃を続けるがサティンガーには一切通じていなかった。
「オマエタチ、ヤメロ!!」
「ワカイノニゲル!!」
「ココハトシヨリニマカセロ!!」
年寄りたちが若者を何とか和ませて逃げるように促す。
「ダケド・・・」
「オマエタチ、キボウ!!」
「オマエタチ、ミライ!!」
「イキロ!!」
老兵は自分の死と引き換えに若者たちを生かそうとしている。
必死さに胸を打たれたのか若者たちはサティンガーから離れて逃げ始めた。
己の悔しさと無力さから若者たちの目には涙が溢れ頬を流れていた。
「アトハタノンダゾ」
「ミンナヲタノム」
「タッシャデナ」
老兵たちは若者たちには聞こえない程度の声で呟いていた。
別れが済んだ老兵たちはサティンガーに攻撃するもそれは若者たちには遠く及ばない。
サティンガーは老兵たちを無視すると口を開いた。
外部からエネルギーが集束されると、
「フォー!!(はああああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!!!!!!)」
その掛け声とともに口からビームが放った。
ただしビームは老兵たちにではなく若者たちに向けられた。
若者たちが逃げているところに直撃する。
ドゴオオオオオオオォォォォォォォーーーーーーーン!!!!!!!
ビームが当たった辺りの森は爆発し土煙が大量に舞い爆風がサティンガーや老兵たちを襲う。
「「「「「「「「「「!!」」」」」」」」」」
老兵たちは何かを叫んでいるがそれはうまく言語化できていなかった。
爆風が収まるとそこには小さなクレーターができていた。
「ソンナ・・・」
「キボウガ・・・ミライガ・・・」
「・・・ウッウッウッ・・・」
老兵たちは生かそうと逃がした若者たちが先に死んだことにショックを受けている。
「フォー!!(安心しろ、おまえたちもすぐに後を追わせてやる)」
サティンガーはその場にいる老兵たちに無慈悲な攻撃を開始するのであった。
魔族領───
不毛な大地は以前は見る影もないが、現在魔族を束ねる王が豊かな国へとその尽力を注いでいた。
それと同時に他国の領地も隙あらば狙っていた。
そんなこんなで他国には大勢の部下をスパイとして派遣し、定時連絡と逐一報告を入れるように徹底していた。
魔王城───
魔王サンターナは今日も今日とて早朝土量改良し、執務室で必要な書類整理をしてから謁見の間で部下たちの報告を聞いていた。
いつも通りの日常と思われたのだが、そこに諜報課の魔族が慌しい様子でやってきた。
「魔王様、緊急連絡が入りましたので報告いたします!! 人間族の王国が崩壊しました!!」
「! なんだと?! 王国が崩壊しただと?!」
サンターナは驚いた。
王国はそれなりに国力・武力があり、人も多く豊かな国なのでできれば手中に収めたい国の1つだった。
それが崩壊したと聞かされれば驚くなというのが無理である。
「はっ!! 密偵によりますと謎の巨大生物により城が一撃で消滅したとのことです!!」
「謎の巨大生物?! まさかドラゴンかっ?!」
「いえ、ドラゴンに似ていましたがまったくの別物です!!」
サンターナは部下が持ってきた水晶玉を受け取り魔力を流すと謁見の間に映像が流れた。
そこにはドラゴンの5~10倍も大きい化け物がいた。
化け物がビームで王城を破壊していた。
「たしかに見たことがない生物だ。 いったい何者だ?」
が、これはまだほんの序の口だった。
別の諜報課の魔族がやってきたのだ。
「魔王様、緊急連絡が入りましたので報告いたします!! 人間族の帝国が崩壊しました!!」
「なっ?! 今度は帝国だと?!」
同じように水晶玉を受け取り魔力を流すとそこには蜥蜴が帝都を破壊していた。
「さっきのとは違うのが国を荒らしているな」
そして次々と諜報課の魔族が水晶玉を持ってやってくる。
「魔王様、緊急連絡が入りましたので報告いたします!! 人間族の皇国が崩壊しました!!」
「魔王様、緊急連絡が入りましたので報告いたします!! 人間族の公国が崩壊しました!!」
「魔王様、緊急連絡が入りましたので報告いたします!! 人間族の共和国が崩壊しました!!」
「魔王様、緊急連絡が入りましたので報告いたします!! 人間族の中立国が崩壊しました!!」
「魔王様、緊急連絡が入りましたので報告いたします!! エルフの隠れ里が崩壊しました!!」
「魔王様、緊急連絡が入りましたので報告いたします!! ドワーフ王国が崩壊しました!!」
「魔王様、緊急連絡が入りましたので報告いたします!! 獣人王国が崩壊しました!!」
「魔王様、緊急連絡が入りましたので報告いたします!! 翼人王国が崩壊しました!!」
「魔王様、緊急連絡が入りましたので報告いたします!! 海人王国の皇国が崩壊しました!!」
「魔王様、緊急連絡が入りましたので報告いたします!! 亜人王国が崩壊しました!!」
「魔王様、緊急連絡が入りましたので報告いたします!! 巨人王国が崩壊しました!!」
「待て待て待て!! そんな一遍に報告するな!!!」
サンターナはとりあえず持ってきた順番に水晶玉に記録されている情報を見る。
そこには烏が、アルマジロが、蟹が、ペンギンが、蛙が、土竜が、太った猫が、猿が、亀が、蛇が、そして恐竜が他種族を大虐殺して国を滅ぼしていた。
どいつもこいつもドラゴンの5~10倍の大きさだった。
「・・・」
「魔王様?」
「・・・ああ、すまない・・・あまりの出来事に何を言えばいいのか言葉が出てこなかった」
「これからどうするのですか?」
「もしかするとここにも攻めてくる可能性があるな」
サンターナが思案していると諜報課の魔族とは別の城の警備兵が慌ててやってくる。
「魔王様、緊急事態です!! 金色のドラゴンが魔族領に侵入し王城に向かってきます!!」
「ゴールドドラゴンが? わかった、俺が対応する」
「なっ?! 危険では・・・」
「要件はなんとなくわかっている。 それよりも人間や他の人種が壊滅的なダメージを受けている。 魔族全員に警戒レベルを最大にするよう伝えろ」
「はっ!!」
警備兵が去るとサンターナはテラスに移動する。
そこは魔族領を一望できる場所だ。
領地を見つめる先には警備兵が伝えた通りゴールドドラゴンが魔王城目指して物凄いスピードでやってくる。
ゴールドドラゴンは魔王城に到着すると中庭に降りた。
こんなことをすれば本来は敵意ありと捉えて魔族Vsドラゴンになるだろうが相手の慌てようから今回はそれはないと断定する。
「久しいな、魔王サンターナ。 息災で何よりだ」
「ふ、ルドウィンか・・・それで何ようだ?」
「突然の非礼を詫びる。 今日は今世界で起きていることについてだ」
「ああ、俺の耳にも情報が絶え間なく届いている」
「それなら話は早い。 我らに力を貸してほしい」
ルドウィンは駆け引きなしでストレートに助力を求めた。
「断る・・・と本来なら言いたいが、あれらは全てを破壊している。 俺1人ではどうにもならない」
「では・・・」
「ああ、今回は手を取らざるを得ない。 俺の野望以前にこのままでは星が滅んでしまうからな」
「お前の野望である世界征服は知っている。 我らドラゴンを筆頭に人類の全てを手に入れようと目を光らせているのもな」
「それはあの化け物たちを葬ってから時間をかけてやっていくつもりだ」
「できればここで決着をつけたいが今は1人でも優秀な人材が欲しいところだ」
サンターナとルドウィンは牽制しあうが今はそれどころではない。
「それであと誰に声をかけているんだ?」
「人間族の勇者、エルフの族長、ドワーフの生き残りに獣人族や亜人種と人種は問わないで片っ端から強者に声をかけている」
「正解だな。 今は1人でも強者が欲しいところだ。 種族の諍いをやっている場合ではないからな。 主戦場は?」
「これから話し合って決めるところだ」
「まず俺のいる魔族領かお前が住んでる龍王国のどちらかになるだろうな」
「ああ、不本意だけど他の国が壊滅や崩壊してるから未だに被害を受けていないどちらかになるだろう」
そんな話をしているとお互い嫌な顔をした。
「話し合いにお前を連れていきたいんだが・・・」
「構わない。 時間もないし早速行くか・・・とその前に、伝令!!」
側近の魔族がすぐにやってくる。
「俺はこれから龍王国に行くから留守を頼む」
「畏まりました、魔王様」
サンターナはそれだけ伝えるとルドウィンの背中に乗った。
「じゃあ、頼むぜ」
「ああ、任された」
ルドウィンは離陸するとサンターナを連れて龍王国へ向かった。
龍王国───
全長10~20メートルくらいのドラゴンが群れを成して暮らしている国。
標高がそこそこ高く外敵からは攻め辛く、自分たちには守り易い難攻不落な鉄壁な天然要塞だ。
本来ならドラゴンしか存在していないその国に人間、エルフ、ドワーフ、獣人、亜人など他の種族が集まっていた。
種族によってはここで争いが起きてもおかしくないが、今は誰もがそれどころではないと理解していた。
そんな中、ルドウィンは魔族の王サンターナを連れて龍王国に帰還する。
ルドウィンが着陸するとサンターナは背中から降りた。
「ほう、ここがかの有名な龍王国か・・・」
「本来は手札を晒したくないのだがな」
「仕方ないだろ? 恨むならあの化け物どもを恨め」
「ま、そうなんだけどな」
サンターナは周りを見渡す。
人間族の勇者ロードン、エルフの長老ルーウ、ドワーフ王ドーイン、獣王ビンセルト、天空王バーディス、海王シーズ、亜人将スターヴァ、超巨ジャント。
その国では超有名人たちが雁首揃えて集まっていた。
(さてと・・・どうしたものか・・・)
サンターナが話しかけるか考えているとロードンから話しかけてきた。
「魔王サンターナ。 まさかお前がここに来るとはな」
「人間族の勇者ロードンか・・・何用だ?」
「本来であれば世界の平和のために貴様を切る!! ・・・と言いたいところだが今はあの化け物たちを倒すのが最優先だ」
「癪に障るが同感だ。 あれは生かしておく訳にはいかない。 この星が破壊され消滅してしまうだろう」
サンターナの言葉にロードンだけでなく話を聞いていた他の者たちも一斉に頷いた。
「どうやら皆も意見が一致しているようだな」
そこへこの龍王国の長である光龍ラーティムが人間の姿に変化して現れた。
「ラーティム」
「サンターナ、お前の危惧するようにあれらは危険すぎる」
「それでどうするつもりだ?」
「まあ待て。 あっちで座りながら落ち着いて話そう」
そこには円卓が用意されていた。
サンターナは円卓に向かうとさっさと座ってしまった。
ラーティムやロードンたちも各々が好きな場所に座る。
「それでどこで迎え撃つ?」
サンターナはいきなり本題を切り出す。
「ここしかあるまい。 魔族領でもいいが防壁に難ありだ。 その点ここなら籠城しても耐えられる」
ラーティムが即答する。
「そいつは助かる。 それなら俺の領地にいる戦力をここに集結させても構わないか?」
「許可する」
サンターナの問いにラーティムは頷いた。
「なら後でここに召喚するとして、俺が得ている情報をお前たちに開示する」
サンターナは空間から13個の水晶玉を取り出すとそのうちの1つに魔力を流すと映像が流れた。
王国、帝国、皇国、公国、共和国、中立国、エルフの隠れ里、ドワーフ王国、獣人王国、翼人王国、海人王国、亜人王国、巨人王国。
この世界の代表的な国がサティンガーたちに全壊されていく。
それと同時にドラゴンの5~10倍の大きさのサティンガーたちに驚いていた。
ロードンたちは祖国が破壊される場面を見ると俯いた。
サンターナは全ての映像を一通り流すと話を切り出す。
「俺が持っている情報は以上だ」
「こちらで確認した情報とも一致しているな」
ラーティムもサンターナの情報が正確なものだと裏付けた。
「これを踏まえた上で戦術を考えたいのだが・・・武器に関してはドーインの力を借りたいところだ」
「ああ、俺たちドワーフが作り出した武器が残っていれば提供しよう。 悪いが何人か俺と一緒にドワーフ王国へ行ってほしい」
ドーインは祖国にある武器が無事なら提供してくれることを約束した。
武器の回収にロードン、ビンセルト、バーディス、スターヴァ、ジャントが名乗りを上げる。
「足止めの魔法は俺とルーウ、あとはシーズだな」
「あなたの魔法はともかく私の魔法は通じなかったわ。 だからサポートに回るわ」
「わたしもどれだけ役に立つかわからない」
プライドの高いルーウは祖国を守れなかったことを実感しているのか彼女らしくない発言だった。
シーズもルーウに負けず劣らず高い魔法力を持っているが弱気な発言だ。
「まぁ、いいだろう。 あとはここを攻めてくるのにどのくらい時間があるかだな」
「一応私の配下のドラゴンに足止めをさせているがいつまで持つかわからない」
「さすがはラーティムだな。 なら俺もさっさと始めるとしよう」
言うが早いかサンターナは席を立つと通信魔法で部下に連絡をとりつつ空いてる空間に召喚用の魔方陣を展開し呪文を唱え始めた。
「私たちも動くとしよう」
ラーティムはルドウィンとルバンを呼んでドーインたちと共にドワーフ王国にある武器を回収するために向かわせた。
ルーウとシーズはラーティムの補助に回った。
魔方陣からはサンターナの部下が次々と召喚される。
彼らはすでに武装済みでいつでも交戦可能であった。
1時間後、最終的に10000人の魔族を召喚した。
サンターナはついでに空間から自分が愛用している武器を取り出す。
召喚を終えたサンターナは通信魔法でドーインたちに連絡を取ると一般の武器庫と宝物庫は無事だったようで武器を全部回収して戻ってくるそうだ。
更に30分後、ドーインたちが戻ってきて戦えるものに武器を提供した。
そしてついに戦の準備が整った。
「あの化け物たちが来る前に準備が整って良かったぜ。 あとは作戦を指揮する司令官だがラーティムが適任だな」
「サンターナ、お前がやらないのか?」
「ん? まぁ俺はどっちでもいいけどな。 ただ戦場では指揮を一本化しておいたほうが混乱せずに済むし足止めには俺自ら赴かないといけないだろう」
「確かにそうだな。 わかった、私が引き受けよう」
話がまとまったところで伝令が慌ててやってきた。
「で、伝令!! 巨大な化け物13匹がこちらに向かってきております!!」
「わかった、ありがとう。 皆聞いてくれ! 今この地に敵が攻めてくる! 相手は未知の力を持った13匹の化け物だ! だが恐れることはない! 我々が力を合わせれば奴らを討つことなど容易いことだ! 奴らを倒し我々は勝利を掴むのだ!!」
「「「「「「「「「「おおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーっ!!!!!!!」」」」」」」」」」
ラーティムはサティンガーたちがここに攻めてくることを伝えると同時にここにいる者たち全員を鼓舞した。
ロードンは考えていた。
サティンガーたちを倒せるのかを。
「どうした勇者ロードン。 ビビってるのか?」
「・・・魔王サンターナ・・・」
サンターナがロードンに話しかけてきたのだ。
「正直言うぜ、俺はビビってるよ」
「!!」
サンターナの内心を聞いて非常に驚いた。
(あの魔王サンターナが恐怖しているだと?!)
「あの体格、あの破壊力・・・はっきり言って殺りあいたくないね。 だけどここで戦わないと俺の未来がない」
「・・・」
サンターナが・・・いつも横暴としているあの魔王が勇者であるロードンに弱音を吐いていた。
「俺にはまだ世界征服というやらなきゃいけないことがあるんだ。 それは誰にも邪魔させない」
「そんな事は僕がさせない!!」
「ならこの戦いが終わったら決着をつけよう」
「望むところだ!!」
サンターナはにやりと笑うと手をヒラヒラさせて持ち場に戻った。
それから数分と経たないうちにサティンガーたちは姿を現した。
遠方からでもサティンガーたちの大きさはドラゴンの5~10倍もあるのが解かる。
龍王国にどんどん近づいてくる。
開戦開始の合図はドラゴンたちによるブレスの一斉攻撃だ。
ドラゴンブレスは温度にすると約3000度だ。
それが何百というドラゴンから一斉にサティンガーたちに向けて放たれる。
相手に届く前に減温されるだろうがその中心部の温度は累計すると最低でも100000度以上には達するはずだ。
ドラゴンたちのブレスが終わった。
攻撃を仕掛けたドラゴンたちはもちろんロードンやサンターナたちでさえもこの攻撃には耐えられないだろうとサティンガーたちを侮っていた。
この世界の人たちは怪獣を知らない。
怪獣は弱いのか?
否!! 断じて否である!!!
考えてみてほしい、怪獣の特徴を。
宇宙空間の-273度の超低温や大気圏突入時の10000度を超える高熱だけでなく、大気圏突入時の重力や海底の水圧、乱気流の中の雷、果ては隕石の衝突にも耐えられる頑強な身体を持っている。
普通の人間が生身で体験したらほぼ即死だろう。
マッハ1以上の走行力に、宇宙空間まで跳べる跳躍力、鋼鉄をも軽々と握り潰す握力、そしてエネルギーを集束させて放たれる推定500000度のビーム、どれをとっても危険である。
そんな怪獣たちがついに牙を剥いたのだ。
サティンガーたちのところはまだ炎が残っていた。
しばらくすると炎が弱まりやがて消える。
「「「「「「「「「「!!」」」」」」」」」」
そこには無傷のサティンガーたちがいた。
「ギャー!!(何をする!!)」
「ガオー!!(あいつらやるな)」
「ガァー!!(燃えるかと思った)」
「クワックワッ!!(不意打ちとか卑怯だ!!)」
「キュオー!!(熱い!! 熱い!!!)」
「キョーキョー!!(今度はこちらの番だ)」
「クヒュクヒュ!!(覚悟しろ!!)」
「ギエー!!(殺すならこれの10倍はないとな)」
「シュー!!(やったらやりかえす)」
「オー!!(この程度じゃ倒されないぞ)」
「グワー!!(今の攻撃はびっくりした)」
「ルルルルル!!(至近距離で喰らってたらやばかったかも)」
「フォー!!(脅かしやがって)」
サティンガーたちはドラゴンたちの攻撃に怒りを露わにした。
ラーティムは現状を冷静に受け止めロードンたちに作戦を伝える。
「作戦通り化け物の中でも1匹だけ突出して高い奴を先に叩く!! 他の12匹は邪魔されないように分断してくれ!!」
ロードンたちはサティンガーさえ倒せば瓦解すると考えていたがそれは大きな間違えだった。
サティンガーたち怪獣には友情や仲間意識など存在しない。
存在するのは破壊衝動のみ。
今はまだこの世界に来たばかりで何も知らないし一緒に行動するのが得策と考えただけだ。
ドラゴンの誘導でサティンガーはワンダンたちと隔離されてしまった。
いや、サティンガーは解かっていて自ら相手の策略にはまったのだ。
サティンガーの周りにはドラゴンが何十匹、地上にはロードンたちが包囲していた。
ロードンは改めてサティンガーを見る。
(ドラゴンがまるで子供に見えるくらいにでかい、でかすぎる。 ドラゴンの何倍あるんだ?)
ドラゴンをも上回る大きさに驚愕するもロードンは自分の頬を叩いて気持ちを引き締め直す。
余談だがこの世界のドラゴンは全長はおよそ20メートル、体重はおよそ3000トンである。
そして戦いが始まる。
全方位からドラゴンブレスの一斉攻撃。
これによりサティンガーの上半身が煙で見えなくなる。
そこへロードンたちがそれぞれの武器や魔法でサティンガーを攻撃する。
斬撃、刺突、火炎、氷結、暴風、雷撃などなど様々な攻撃がサティンガーに直撃する。
だが、全ての攻撃が外皮で弾かれてしまう。
ロードンは得意の雷魔法をサティンガーに向けて連発しながら近づくとミスリルの剣で切りつけた。
しかし、剣によるダメージを与えるどころか武器のほうが折れた。
ガキイイイイイイイィィィィィィィーーーーーーーン!!!!!!!
「なっ?!」
目の前の光景にロードンは目を見開き驚いた。
ロードンは魔法よりも剣のほうが得意である。
長年大事にそして愛用してきたミスリルの剣が折れるとは思ってもみなかった。
「ロードン!! これを使え!!」
「?! 助かる!!」
ドーインはオリハルコンの剣を投げて渡した。
ロードンは鞘から剣を抜くと再びサティンガーに攻撃する。
だが傷をつけることはなかった。
「なんて固い皮膚だ」
ロードンは早々に奥の手を使った。
剣に雷を纏わせる。
「喰らえ!!」
ロードンの雷の剣がサティンガーを切り裂いた・・・はずだった。
その攻撃をも弾いたのだ。
それどころかオリハルコンの剣が欠けたのだ。
「なんだと?!」
ロードンは目の前の事実に唯々唖然としていた。
それも一瞬のことロードンはすぐさま後退すると今度はサンターナが積層型魔方陣を展開した。
「あれは禁呪?!」
ロードンは更に後退する。
「喰らえ化け物!!!!!」
サンターナの黒光弾がサティンガー目がけて放たれた。
着弾するとサティンガーが黒い球体に包まれる。
その中は全てを燃やす黒炎で埋め尽くされていた。
本来はドラゴンでも、ものの数秒あれば皮膚を焼き、骨を焼き、全てを灰にするほどの威力だ。
球体の中のサティンガーは・・・まったくの無傷である。
未だに燃え続けているなかサティンガーに動きが生じた。
サティンガーは口を開けたかと思うと次の瞬間球体から光線が飛び出て破壊した。
それだけでなくその光線が龍王国を直撃した。
ドゴオオオオオオオォォォォォォォーーーーーーーン!!!!!!!
龍王国から凄まじい爆発音と爆風ともに超巨大なキノコ雲が発生し大量の土砂が上空から降ってきた。
「うわあああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!!!!!!」
ロードンだけでなく怪獣以外の者たち全員が爆発と爆風に耐えていた。
3分後、粉塵が消えるとそこには龍王国は存在しなかった。
あるのはクレーターがただ1つだけだ。
「「「「「「「「「「ラーティム様!!!!!」」」」」」」」」」
ドラゴンたちはラーティムの名を叫ぶが返事はこなかった。
「わ、我々の龍王国が・・・」
ドラゴンの1匹が呆けているとサティンガーが右前足で捕まえた。
「なっ?! 放せ!! この野郎!!!」
ドラゴンは何とか抵抗するも圧倒的な力の前に無意味だった。
ミシ・・・ミシミシミシ・・・
ドラゴンの身体から嫌な音が聞こえてくる。
「や、やめろ!! やめてくれぇーーーーーっ!!!!!」
ドラゴンは命乞いをしたがサティンガーは右前足を握った。
バキボキ・・・グシャ・・・
暴れていたドラゴンは全身から流血するとそのまま物言わぬ骸になった。
サティンガーはドラゴンを放り投げた。
ロードンはドラゴンを見た。
あの強靭なドラゴンの肉体を簡単に握り潰したのだ。
ロードンは今更ながらに恐怖を感じた。
サティンガーは再び口を開けると数秒後にサンターナがいる方向にビームを放った。
サンターナは自身とドラゴンたちを守るために全魔力を消費して何十枚という防壁を最大限に展開した。
しかし、ビームはその障壁を軽々と貫いていく。
全ての障壁を破壊してなおサンターナの身体を貫いただけでなく後方のドラゴンたちをも貫き遥か彼方まで飛んでいった。
「サンターナアアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーッ!!!!!!!」
サンターナは重力に則って地上に落下して地面に叩きつけられる。
ドサアアアアアァーーーーー!!!!!
ロードンはサティンガーに攻撃するのを止めてサンターナのほうに駆け出していた。
息も絶え絶えにやってくるとその光景に息をのんだ。
サンターナは下半身と両腕を失い全身大火傷を負っていた。
この傷ではもう助からない。
「・・・ば・・・ばか・・・や・・・ろう・・・な・・・なぜ・・・こ・・・こうげ・・・き・・・し・・・ない・・・」
「喋るな!! 今助けてやる!!!」
ロードンは回復魔法をサンターナにかける。
「・・・む・・・むり・・・だな・・・わ・・・わか・・・る・・・ぜ・・・も・・・もう・・・たすか・・・らない・・・と・・・」
「諦めるな!! 絶対に助けてやる!! 絶対にだ!!!」
「・・・も・・・もう・・・いい・・・もうい・・・いいんだ・・・ゆう・・・しゃ・・・ロードン・・・」
「・・・サンターナ・・・」
「・・・で・・・でき・・・れば・・・お・・・おまえの・・・て・・・てで・・・たおされ・・・た・・・かっ・・・た・・・」
サンターナは事切れるとそれ以上言葉を口にすることはなかった。
「サンターナ?! サンターナアアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーッ!!!!!!!」
いくら叫んでもサンターナから返事がない。
敵であった。
いつも人間の国を脅かす者だった。
いつか世界の平和のために倒すはずだった。
ロードンは剣を握るとサティンガーに再び突っ込んでいった。
サティンガーの足元まで来るとロードンはありったけの魔法と剣をその化け物に叩き込む。
何度も何度も繰り返し攻撃を続けた。
だがダメージを与えるどころか自分が疲弊していた。
そこにサティンガーの尻尾の一撃が飛んできた。
ロードンは回避しようと咄嗟に横跳びをしたが攻撃がほんの少し掠っただけで思い切り吹っ飛ばされた。
ダアアアアアァァァァァーーーン!!!!! ダアアアアアァァァァァーーーン!!!!! ダアアアアアァァァァァーーーン!!!!! ・・・
水切りのようにロードンは3回ほど地面にバウンドして止まった。
「・・・うぅ、くっ・・・」
ロードンは剣を杖代わりに立ち上がった。
そして目の前ではサティンガーがこちらを見て口を開けていた。
(・・・く、喰われる・・・)
サティンガーの口の辺りに光が集まったと思ったらその光がロードン目掛けて襲い掛かってきた。
30分後、そこには多くのドラゴンが血塗れになって倒れていた。
ドラゴンだけではない、この世界の頂点に位置する者たちであるルーウもドーインもビンセルトもバーディスもシーズもスターヴァもジャントもそしてロードンも殺された。
この世界の強者が一丸となって戦った結果全滅した。
その場に立っているのはサティンガーたち13匹だけだった。
「ギャー!!(終わったな)」
「ガオー?(これからどうする?)」
「ガァー!!(もうこの星にも飽きた)」
「クワックワッ!!(ならこの星を出るか)」
「キュオー!!(それでいいんじゃないか)」
「キョーキョー!!(賛成)」
「クヒュクヒュ!!(星をでようか)」
サティンガーたちは足に力を籠めるとジャンプした。
大気圏を超え、あっという間に宇宙空間に飛び出した。
今まで暴れていた星を見る。
そこにはサティンガーたちが傷つけた跡が無数に点在していた。
サティンガーたちは頷きあい口にエネルギーを集束させると星に向かって一斉にビームを放った。
それら1つ1つが絶望の光となって星の至る所に降り注ぐ。
地上では生き残った人間たちが逃げ惑っていた。
いや、人間だけではない、エルフもドワーフも獣人も翼人も海人も亜人も巨人も魔族もそしてドラゴンまでもがパニックに陥っていた。
そしてビームの一つが星の地殻を破壊しマントルを破壊しそしてついに核に直撃した。
ビームを受けた核が膨張し星のあらゆる場所から間欠泉のようにマグマが噴出する。
星は収縮を繰り返し光輝きだすと急激に増光していく。
サティンガーたちは爆発に備えて星から離れる。
十分な距離をとるとついに超新星爆発が発生し星は木端微塵になった。
爆発した際の温度は最低でも100万度以上あり、そこに住む者たちは星の爆発に抗えず死滅した。
仮に生きていたとしても宇宙空間には酸素もなければ食料もないので窒息死か餓死は免れないだろう。
サティンガーたちも爆風に飲み込まれたがその強靭な身体で吹き飛ばされるだけで済んだ。
やがて爆発の影響が収まり怪獣たちの目の前には星は跡形もなく消し飛んでいた。
その日、サティンガーたちにより1つの星が消滅した・・・
サティンガーたちはこれからのことを話していた。
「ギエー!!(次はどうする)」
「シュー?(みんなでバラバラに星を攻めればいいんじゃないか?)」
「オー!!(そうしよう)」
「グワー!!(それじゃみんな元気でな)」
「ルルルルル!!(死ぬんじゃないぞ)」
「フォー!!(またな)」
サティンガーたちはそれぞれが次の星を目指した。
レイサは自分の神域からサティンガーたちを見ていた。
「ふふふ、やはり私の目に狂いはなかったわ。 あの子たちをこの世界に転生させたら面白いものが見れると思ったけど、まさか超新星が見られるなんてね」
レイサは邪悪な笑みを浮かべていた。
「いいわよ。 どんどん壊しなさい。 必要なら私がいくらでも替えを用意してあげるから」
レイサは愉快そうにいつまでも笑い続けた。
この後もサティンガーたちはレイサが管理する世界の星々を荒らしては次々と破壊していったがその話はまた別の機会にでも話すとしましょう。
最後までお読みいただき、誠にありがとうございます。
みなさん『怪獣が異世界転生!! ~敗北者をナメるなよ!! 勇者も魔王もドラゴンもみんな潰して異世界崩壊!!!~』はいかがでしたでしょうか?
異世界ものの定番といえば人間、エルフ、魔王、ドラゴンが主ですが筆者はやられ役の怪獣に着目してみました。
『小説家になろう』内を検索したのですが怪獣が異世界転移するのはあるのに異世界転生がないので試しに書いてみました。(もしかしてあるけど探し方が下手なのかも・・・)
怪獣はいつも正義のヒーローにやられて可哀想だなと思って今回やられ役である怪獣を主役にしました。
本当はもっと短くしようとしたのですがいろいろアイデアが浮かんだので詰め込んだら長文になってしまいました。
長々しすぎだと思う方、ごめんなさい。
筆者の文才の無さに猛省しております。
この作品が少しでも面白く感じて頂ければ筆者としても嬉しい限りです。