ザコーツ
連行された先にあったのは、塀で覆われた大きな家だった。もう、これを家と呼んでいいのかわからないほどの大きさだ。見た感じは城や豪邸ではなく、刑務所のようなイメージだ。
取り調べということは、きっと地下にある薄暗い拷問されるようなところなのだろう、俺はちょっと……ちょっとだけ、ビビっていた。……だって痛いの嫌いだし。
だが、予想に反して連れて行かれたのは綺麗な応接室。派手さはないが、ふかふかのソファに腰を下ろし、俺は執事からの説明を聞いた。
「本日は、このようなお招き方をして申し訳ございません。私はザコーツ様にお仕えしております、セバスと申します。どうぞ、よろしくお願いお願い致します」
「俺に何の用だ?さっさとその、ザコーツ様とやらを連れてこいよ」
出された紅茶とお菓子で空腹を満たし、イライラが少し落ち着いた頃に部屋の扉が開き、テンションの高い笑い声と共に現れた男。
――――このだりぃ笑い方、こいつ、どこかで……
「HAHAHAHAHAHAHAHA!!やぁやぁ!!よく来てくれたね!!お菓子食べた?これ美味しいよね!あ、みんな、二人で話したいから外してくれるかい?」
金髪で背が高く、モデル体型のイケメンが部屋に入ってきた。やはりどこかで見たことがある気がする。どこだ……たしか、どこかで……。
セバスたちが部屋から退室した途端、ザコーツは俺の目の前で姿勢を正し、頭を下げた。
「ガイン様、お久しぶりに御座います。あなた様の第一天使『コーツ』です。ご壮健で何よりです」
「ゲッ!お前コーツか、こんなとこで何してんだよ」
「いやいや、ふざけないでくださいよ。ガイン様がこの世界の管理をしろと、この世界に私を落とし、名前まで雑魚天使から文字ってザコーツって名付けたんですよ!忘れないでくださいよ!」
こいつ、泣いてやがる、本当に嫌だったんだな。なんか悪いことしたな。でも、俺のネーミングセンスは完璧だな。
まさかの部下との再開に喜びたいところだが、なによりまず、串や……いや、歪みの原因を探らないといけない。
「コーツ、お前が管理していたにも関わらず、この状況はなんだ、答えろ」
「はい、ご説明させて頂きます。まず、この異変を調べたのですが、どうやら2年前から始まっております。この街は貿易都市として賑わっていましたが、ある時期から出稼ぎに来る者たちで溢れ返りました。そこから競い合うように商売が激化していき、商人達は身体を酷使してでも働くようになりました。」
「それは多分、ゴルゾナの人達だろうな」
「はい、そんな中、私に出来るのは少しでも皆さんに元気になってほしくて、この街の名前を借りて『エナージ』と名付けました」
「なんでエナージなんだ?それならモンエ……むぐっ!」
「ガイン様!それ以上はダメです!いろんな意味で消されてしまいます!」
よくわからないが、これが大人の事情なのだろう……気をつけよう。
「話を戻します。このドリンクのおかげで前よりは倒れる者は減りましたが、根本的な問題は解決されていないのです。出稼ぎに来ていた人達も何故か帰ろうとしないのです」
「私としても自身で調査に行きたいのですが、立場上、ここに滞在しなくてはならないのです。エナージを作るには私の神力が必要ですから」
「コーツ!?お前、神力を使えるのか!?」
まさか、俺の神力を宿していたのはコーツなのか?いや、コーツは元、天使。元々力を使えても不思議ではない。
くそ、コーツのおかげで楽出来ると思ったのに、だりぃな。
またまた遅くなりすみません。エナジードリンク飲んで頑張ります!