戻った力と新たな誤解
思いがけない部下の登場で内心喜びに溢れている。コーツは俺に似て真面目な奴だ。だからこそ信用出来る。融通が効かない節はあるが……。
――――よし、面倒くさいことはあいつに丸投げしよう!
「……ガイン様、今、良からぬことを考えていたでしょう?」
「か、考えてなどおらん!それよりも確認したいことがある。俺の神力についてだ」
「はい、今のガイン様には以前の1割ほどの神力しか感じられません」
分かってはいたが、それほどまでに力を失っていたとは。この先が思いやられる。
この様子だとコーツの力には俺の神力は無関係なのだろう。楽観視していたが、少しアテが外れてしまったが仕方ない。他を探そう。
だが、手掛かりも情報も少な過ぎて、何から手をつけて良いのか検討もつかない。まずは歪みを直すために、ピースのかけらが最優先なのだが、教会も無ければ神像もない街だ。
――――くそ、もっと俺様を信仰しろよ!
少し苛立ちながら考え込んでしまったが、ふと、コーツの顔を見ると何やらあいつも考え込んでいるようだ。
「あの、少しよろしいですか?」
「どうした?腹でも減ったか?」
「違いますよ!まったく。これはあくまで仮説ですが、ガイン様の神力は失われたのではなく、封印の類ではないでしょうか?」
「封印だと!?」
「ゴルゾナでの少女の話ですが、実は思い当たる点があるのです。それは神の力が宿ったという者が現れたという風の噂を聞きました。これは以前から耳にしておりましたが、たかが噂と考えておりました。ですが、私にも少しではありますが変化を感じておりました」
「それは私の神力が強まっているのです。最初は小さな変化で気付かなかったのですが、日に日に力が増していくのです」
どういうことだ?神力は神が生まれ持って得た力だ。成長とともに増えることは無くもないが、これほどまでに急成長することなど有り得ない。
「これもまた、仮説ですが、ガイン様の力を封じ込めたのはアーネット様ではないでしょうか?ガイン様の神力の超える者などおりません。ならば、そのガイン様に対抗できる方はアーネット様しか考えられません」
確かに、姉貴なら俺のことを理解しているし、能力も姉貴のほうが上だ。
「小賢しい女だな」
「ガイン様、言葉が過ぎますよ!あとで怒られるのは私なんですから……」
「ん?怒られる?誰にだ?」
「いえ、話を戻します。ガイン様の封じられた力ですが、今は一部戻っていますよね。それはゴルゾナの少女と接触してからの事です。」
そういえば、マリーを抱き抱えた時に力が戻ったような気がする。てっきり、マリーから力を取り戻したと思っていたのだが。
「いえ、ガイン様からは微量ではありますが、神力が漏れ出ております。きっと同じ能力を持った人間と接触することがトリガーとなって、力を取り戻したのではないかと」
「ならば、俺がお前に触れれば一つ力を取り戻せるかもしれないということだな」
「ご明察です」
「ならば、来い!俺が抱き締めてやるわ!」
「が、ガイン様!!!!」
マリーの時も抱き抱えたのだ。この方法が一番確実なのだろう。うん、きっとそうだ!なぜかコーツが頬を赤らめて喜んでいるように見えたのだが……きっと、そう、きっと気のせいだ!
神力が共鳴するかのように俺たちは金色の光に包まれていった。なんだか暖かくて、そう、遠い昔から1億とにせ……、いや、力がみなぎってくるのがわかった。
光が落ち着くと、俺の身体が軽くなったように感じた。
「戻ったのか?」
「多分……なんだかとても疲れまし……」
コーツが話し終える前にノックの音とセバスの声が……。
コンコン!ガチャ!
「失礼します。新しいお茶をお持ち……いえ、失礼しました。いつでもお呼び付けくださいませ」
「ちょ、待て!違うぞ!勘違いするな!てか、手伝え!重てぇんだよ、こいつ」
コーツは俺の胸の中でぐったりして動かない。なんとも嫌な光景なのだろう。
くそ、力が戻ったばかりなのに。クソだりぃな……。
エナジードリンクを飲みすぎて体調崩しました……。気をつけよう。




