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Prolog


びええええん、とけたたましい赤ん坊の鳴き声に苛立ちを覚える。

文面だけ見てしまうと最悪な人間のように感じるが、勘違いしないでいただきたい。

私だってそれなりの道徳心と良心を備えたまともな人間だ。赤ん坊が泣いていても「元気だねぇ」と微笑ましく思うくらいの心はある。

だがしかし、この赤ん坊の声は、紛うことなき自分が発しているのだ。


一体なぜ。

どうして。

先程までの自分の行動を思い返す。

学校を終え、家に帰り___ああそうだ。

アイツがいたから殴られたんだ。

しかも酒を切らしているからだとかでものすごく機嫌が悪かった。

ビールの空き瓶で頭を殴られて、地面に倒れて、またことごとく殴られて___以降記憶が無い。


死んだのか。私は。

冷静に(今のこの状態で冷静な思考回路を保持出来ているかについては疑問が残るが)考えて、あれで生きている筈がない。

頭からはありえない量の血が流れていたし____ああ、思い出した。

アイツは、私の記憶が途切れる瞬間に、瓶の破片を手に持って、私に振りかざしていた。

死んだ、と言うよりは殺されたと言った方がいい。


となればこれは__巷で噂の異世界転生と言うやつだろう。


なぜそう理解出来るか?

私のこの状況は、まさにいつだか読んだ異世界転生ストーリーのラノベのプロローグと、全く同じだからである。



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