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Episode 1.『消えたパンジャンドラム』

 西暦1944年、イギリスのとある海水浴場沿岸、ここに一つの上陸艇があった。その船上からは巨大なボビン状の物体が見える。そう、『パンジャンドラム』だ。パンジャンドラムは9回の試験運用の末、遂に『失敗作』の烙印が押されてしまった。にも関わらず、今尚試験運用が行われている。この目的は敵軍であるドイツ軍の目を引くためである。パンジャンドラムはその独特な図体から目立ちやすい。その為、パンジャンドラムを見せびらかしているのだ。

「……これも、フォーティテュード作戦の一貫ですかねぇ?」

 呑気な声で『ロン・E・ハドック』はそう言った。『フォーティテュード作戦』とは、後に行われるであろうフランス奪還作戦の前準備となる作戦ということだ。それ以上の情報は、ハドック自身も知り得ない内容だった。

「……さあな?とにかく、試験運用を始めよう」

 ハドックの隣にいる別の研究者は肩をすくませてそう言った。

「ああ、そろそろ上陸艇のハッチが開く頃だろう。俺達も準備をしないとだな?」

 ハドックは言って、自分の席から立ち上がった。たちまち上陸艇のハッチが開く。

「エンジン点火!!」

 その合図と共にパンジャンドラムの18基のロケットエンジンに火が付いた。凄まじい轟音と共にゆっくりとパンジャンドラムが前進する。その熱気に気圧され、ハドックは体勢を崩してしまった。

「いやぁ、迫力だねぇ……!」

 頭に被るハットを押さえながら、ハドックは体勢を立て直す。パンジャンドラムは既に上陸艇から離れ、海水浴場の砂場を荒らし回っていた。巻き上がる砂埃をものともせず、パンジャンドラムは力強くその大地を走り回る。これだけ見れば、パンジャンドラムは完成された兵器の様に見えた。しかし、

「……軌道が変わったな……」

 ハドックの隣にいた研究者がそう言った。見ると、パンジャンドラムは予定の進路を大きく逸れ、あらぬ方向へ進み出している。そして、曲がりすぎたパンジャンドラムは体勢を保ちきれず、遂に方輪のみの走行となった。

「ありゃりゃ……そろそろ倒れるぞ?」

 ハドックはさも当然の様にそう言った。幾度となく繰り返された試験運用でこの結果は予想できていたのだ。バランスを崩したパンジャンドラムはそのまま横転し、走行不能となった。上陸艇から発進する時はあれほどたくましかったパンジャンドラムだったが、今では見る影も無い。横転してもなお、炎を吹かし続けているロケットエンジンが哀愁を漂わせていた。

「面白くねぇ茶番だったな?行こうか?」

 ハドックの隣にいた研究者がそう言った。この後パンジャンドラムのロケットエンジンは自然消火する……はずだった。

「ん?何だ!?何が起きた!?」

 船上から事の顛末をだらしなく見届けていたハドックが急に声を荒げる。見るとパンジャンドラムそのものが急に輝きだしたのだ。それは、非科学的な光で、その場に居た誰もがその摩訶不思議な現象に仰天した。思わず上陸艇から降りたハドックは、パンジャンドラムの元へ一番乗りで駆けつけていた。

「なんて光だ……」

 夕焼けのような淡い光を放つそれは、パンジャンドラムが兵器であるということを忘れそうになる。ハドックはその優しげな光に手を伸ばすと、目の前に物体が存在しない事に気が付いた。

「一体どうなって……っ!?」

 次の瞬間、ハドックの周囲は光に覆われる。様々な色の光がハドックのあらゆる視界を遮っていた。やがて光が収束していくと、目の前の景色は海水浴場では無く、石造りの建物が見える。後ろを振り返ると、パンジャンドラムが横転状態で倒れていた。

「おお、遂に成功したか!!」

 目の前の人物が歓喜の声でそう言った。その姿はまるで中世ヨーロッパの王族の姿そのものだ。そして、今ハドックがいる部屋にはなにやら豪華な装飾がところどころに備わっていた。まさに『皇室』そのものだ。

「な、何が起きたんだ……!?」

 拍子抜けた顔でハドックはそう言った。


続く……


<今日のパンジャン!!>

“パンジャンドラム” ——それは、第二のユニオンジャック、紳士達の最期の砦……。


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