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『第二話 豪華客船酔い』

『第二話 豪華客船酔い』


「うえええええぇぇぇぇぇぇぇぇ……。」

第一話から一夜明けた午前10時27分現在。

俺達は次の町へ向かうため船に乗ったのだが、

「ルークてめぇ、俺が乗り物に弱いの知ってんだろうが!」

船が揺れるたび胃から吐き気がこみ上げてくる。

「そうだね。知ってたよ。」

「ちくしょー……。」

ちなみにこの船は豪華客船で、俺は船の外の手すり近く。

ルークは船の柱に腕を組んで寄りかかっている。

「残念ながら、次の街への交通手段がこれしかなかったんだ。」

なんて不便なんだ。うぇっ……。

「酔い止めあるか探してくる。」

ルークがぱたぱたと室内に入る。俺は不意に力が抜けてその場に

座り込んだ。ほんっとマズイなこれは……。


数分たってもルークが帰ってこない。

そんなに熱心に探しているのだろうか?

こういう時だけ頼りがいのある奴だな……。


と、思っていたその時だった。


目の端っこに鋭い光を感じて、俺は条件反射で横にとぶ。

んだよこんな時に……。


刃渡り30cmはあるだろう鋭利なナイフをもった

3人衆。おそらく全員女だろうか。


なんだこいつら……。いきなり人を襲うか?

しかもナイフで。殺す気満々じゃねえか。

じっと相手の動きをうかがっていると、また吐き気が

こみあげ、思わず海に顔を向ける。

それを狙っていたのか、女のうちの一人が

すさまじい速さでこちらに向かってきた!

「っ!」

マジでヤバイって!ちょっとだけ服の袖が切れる。

ちっ、遅かったか。俺は腕で口を押さえる。

こいつらの目的はなんだ?

ルーク、早く来い!

とりあえず吐き気を抑えながら相手の攻撃をかわす。

ていうか3人もいるから動きが読みにくい。


「ぐっ!!」


知らないうちに後ろに回られてしまったらしく、

腕を一発やられた。この船は一般の客も乗っている。

今ここには俺しかいない。


客が来るまでに片付けなければ……。


腕から大量の血が流れ出る。ちなみに言うと

利き手の右は無事で、左手をやられた。

左手を右手で押さえる。と同時に吐き気がこみあげる。

あまり俊敏には動けなさそうだ。

「おめえら……目的はなんだ……?」

女三人衆は無言でこちらを見続けている。

とたん、三人衆の一番右はじの女が口元を三日月形に変えた。

俺には……ほとんど体力は残されてはいなかった。


もうよけるのはやめにしよう。


俺はそのまま目をつぶって下を向いた。



「うっく……っ!」

俺じゃない、聞き覚えのある声が聞こえた。

それと、金属どうしがこすれあう音。

上を見れば、やっぱりコイツか。

「ビラくん。君は死ぬ気かい?」

余裕な表情のルークが、そこに立っていた。

俺をかばうようにして立ち、なにやら剣みたいな

細くて鋭いもので相手のナイフを受けている。

「死ぬ気はなかったんだがな……うっ。」

安心したらまた吐き気が。腕も痛い……。

ルークはそのまま相手のナイフをはじいた。

けっこうルークはすばやい動きをする。

相手のナイフをはじいては後ろに回りこみ、

相手をなるべく傷つけないように体術をかます。


あっけなく女三人衆はふらふらになっていた。

「君は僕らに用を成すことはできなくなった。」

ルークが女を上から見下ろす。

「船から出て行け。今すぐ。」

は?船からって、無理があるだろ……。

「さっさと出て行け。飛び込むなり何なりしろ。」

マジかよ!しかし、べらんめえ口調になったルークは相当怖い。

女三人衆はおとなしく手すりに近づく。そして手をかけて

一度舌打ちをする。


ざっぱぁぁぁんっ!


三人とも船から飛び降りた。


「ルーク、おまえ鬼だな。」

「鬼?僕は単に相方を助けたんだよ。善良な心だよ。」

いや、しかしあそこで飛び込めだなんて……。

「にしても、あいつら何だったんだ?」

う〜んとかルークが軽くうなってこちらに目線だけを向ける。

「おそらく、シャオー族を妨害しに来たんだろう。」

「妨害?歌姫の一味とかか?」

「いや、そうじゃないんだよ。シャオー族って色々と

 人民に反対されやすいことしてるからね。」

そうだったのか。

「ところで、さっきは遅かったじゃねえか。」

あぁ、とか言ってポケットに手を突っ込む。

そこから一つの、黄色い小さな箱を取り出す。

「酔い止め。」

「遅せえよ。」

「ごめんごめん。ところで、まず腕をどうにかしないとね。」


左手がじんじんと痛んだ。



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