魔導師にあこがれて
「ふむふむ」
「あら、柄にもなく読書なんかしちゃって、どうしたの?」
プラが黙々と本を読むチナに尋ねた。
「ん? ああ、ちょっと面白い本を見つけたもんでね」
「ほう、どれどれ……何この本、やけに薄くない?」
「そりゃあ、そいつは今週号の分だもん」
「今週号?」
「ああ、「週刊 魔導師入門書」って言ってな。毎週発売される冊子を買い続けて勉強すると、ちょうど一年後に一人前の魔導師になれるって本なのだ」
「はぁ、そんなものがあるの……って、あんたこれ向こう一年買い続けるつもり?」
「そうなるな」
「ちょっと勘弁してよ、そんな訳のわからない本に生活費溶かし続けるなんて、そうは問屋が卸さないわよ」
「ちちち、分かってないなぁお嬢さん。アタシが魔法を使えるようになった暁には、その生活費が庭池に浮かぶ蓮の葉のごとく浮きに浮きまくることになるであろうに」
「それは聞き捨てならないわね、どういうことかしら?」
「簡単なことさ、例えば今アタシが手にしているこの冊子には、水魔法のノウハウが記されている」
「なるほど、自由自在に水を生み出すことができれば、少なくとも飲み水に困ることはなくなるわね」
「だろぅ? 十分に本代のもとはとれると思うが」
「ええ、けれどそれらは、あんたが確実に水魔法を習得できると仮定した上での話よね」
「うぐっ!」
「その本で得られるのは知識が限界。技能の取得の有無はあんたの努力次第よ」
「努力……努力ねぇ。上等じゃないか、必ずや魔法を我が物にし、生み出した流水で貴様の喉をうならせてしんぜよう」
「それは楽しみだこと。けれど、私の喉はそう気が長くないのよね」
「というと……まさか!」
「ええ。一週間でその水魔法をものにして見せなさい。でなければ、そのシリーズ本の購入は金輪際、禁止よ」
「……うぐぐぐ。や、やってやろうじゃねぇか!」
そして一週間後。
「ふふふ、ついにこの日が来たわね」
「ん? なんのことだ?」
「とぼけても無駄よ。さあ、早くその手から見事な流水を生み出し、私の喉をうならせてごらんなさい!」
「流水? 水ならそこにある水筒のを飲めばいいだろう」
「……」
「なんだよ?」
「あんた、もしかして忘れてる。一週間で水魔法を覚えるって約束を」
「……ああ! あったなそんなの。悪い、完全に失念してたわ」
「な、なんですってぇ!」
「なんか初めの内は面白かったんだけど、段々と小難しくなってきて飽きちゃったんだよね」
「……ということはあなたの手からは」
「ああ、水のみ字も出ない!」
「冗談じゃないわ! 魔法で生活費フワフワ作戦はどうなるのよ!」
「なんだそのみみっちい作戦は! 飽きたものは仕方ないだろう!」
「お黙り! こうなったら件の本を貸しなさい! 私が究極の魔導師とやらになってやろうじゃないの!」
この日を境にプラは毎週欠かさずその本を購入するようになった。