ハンモックを買って
「まーた、何か変なもの買ったんでしょ」
森の中を歩くプラが言った。
「ん? どうしたのだ突然?」
隣を歩くチナが尋ねた。
「いや、いい加減あんたの行動も読めてきたのよ。そろそろ変なものを買って来るころだと思ってね」
「なんだその些細な先読みは。勝手に私の未来を決めつけるんじゃない」
「それは……そうね。謝罪するわ、他人の運命を決めるなんて傲慢にも程があったわね」
「分かればよろしい。というわけでこんなもんを買ってきたのだが」
「うぉい! やっぱ買ってきてるんじゃないの!」
「ハハハ、流石プラ様。私のやることなすことお見通しというわけだな」
「何が流石よ、ちっとも嬉しくないわ。して、何をご購入なさったのかしら?」
「ふふふ、こちらだよ」
そう言うとチナは荷物から折り畳まれた布を取り出した。
「うわっ、なんてナンセンスな服!!」
「おい! 何がナンセンスだ! ……って違う! こいつは服じゃない!」
「だったら何なのよ?」
「え? ハンモックだよ」
「半モック? 半分のモック?」
「モックって何だよ! ハンモック! 木の間に設置する寝具だ!」
「知ってるわよ。なめないでちょうだい」
「まったくお前という奴は、無駄な体力を使わせおってからに」
「あら、お疲れ? だったらちょうどいいじゃないの。さっそくそれに寝てみれば?」
「おっ、ナイスアイデア……ってお前まさか、このためにわざと私を疲れさせて?」
「……うん」
「絶対ウソだな」
「バレた?」
「バレバレだ」
「まあ、いいじゃないそんなことは。早くそれに寝かせなさい」
「お前が寝るのかよ!!」
「さあ、セッティングは完了だ」
近くの樹木にハンモックを取り付けたチナが言った。
「存外、大きいのね。これならのびのび寝られそうね」
プラが言った。
「寝る気満々だな。買ったのはアタシなのだが」
「分かってるわよ。お先にどうぞ」
「やれやれ。まあ、お言葉に甘えるとしよう」
そう言うとチナはハンモックの上に横になった。
「……どうよ?」
プラが尋ねた。
「……いいんじゃないの?」
チナがハンモックを揺らしながら答えた。
「何よそのコメントは。何がいいのかを言いなさいよ」
「そう言われてもな。上手く言葉に表せないがいいんだよ、なんか」
「はぁ、レポーター失格ね。どきなさい、私がお手本を見せてあげるわ」
「……いつからハンモックのレポート勝負になったのだ。まあ、いいけど」
チナとプラを入れ替わった。
「……」
「……どうよ?」
チナが尋ねた。
「……ええんじゃないの?」
「おい! 同じ! まったく同じ感想! ちょっと方言入れてるけど!」
「しょ、しょうがないじゃない。上手く言えないけどいいんだから」
「まったく。まあ、分かってくれたらいいよ。もう一度私にも寝かせて……」
「……」
「……プラ?」
「……スー……スー」
「……やれやれお疲れなのはどっちだよ」
そう言うとチナはもうひとつのハンモックを取り出し、プラのそばの木に設置すると、そこに横になった。