マリを手にして
「おい、プラ」
街中を歩くチナが言った。
「何よ、チニャ」
その隣を歩くプラが言った。
「……」
「……」
「……噛んだね」
「ええ……死ぬほど恥ずかしいわ」
「おい命を絶つのにはまだ早いぞ。私の質問に答えてからにしてくれ」
「質問? こんな時になによ?」
「何って、これが何か教えてほしいのだ」
そう言ったチナの右手には、小さなマリが乗っていた。
「……ゴミ?」
「……死ぬほど失礼な奴だな。もらいものだぞ」
「誰からのよ?」
「福引き屋」
「ただの景品じゃないのよ! ……というかいつの間にそんな所寄ってたのよ」
「鬼のいぬ間に」
「あ?」
「ごめんなさい。許して鬼さん」
「だから鬼いうなや! 流石に泣くわよ」
「鬼の目にも涙と」
「……金棒でぶっ飛ばすわよ」
「ステイステイ。鎮まれ鎮まれ」
チナはプラの振り上げた右こぶしをつかんでおろさせた。
「で、そのゴミの正体が知りたいと?」
「だから、ゴミというな。して、これはなんなのだ?」
「何って、マリよ」
「マリー? 海外の方か?」
「そうそう、ナイストゥーミチュー! ……じゃない!」
「わお。グローバルなノリツッコミどうも」
「ありがとう。って、違うわよ。マリよマリ」
「なるほどね。どうやって使うのだ?」
「どうやってって……別に決められた用途はないわよ。投げるなり蹴るなり好きにすれば?」
「煮たり焼いたり?」
「……それは流石に変な物質が発生しそうだからやめて」
「オーケー。要するに発想次第で何にでも使えるというわけだな」
「うーん。ちょっと大袈裟な気もするけど、間違ってないわ」
「よし、じゃあ早速!」
そういうと、チナはマリを前方に放り投げた。
「……」
「……」
「……で?」
チナが尋ねた。
「いや、こっちの台詞よ。何を無意味極まりない行動しているのよ」
「うーん難しいな。ただ投げるだけでは無意味か」
「いや、ちょっと考えればそれくらいわかるでしょ」
「では、蹴っても結果は同じだな。はて、どうしたものか?」
チナはしばらく考え込んだ。
「……はぁ、仕方ないわね」
そういうとプラはチナからマリを取り上げ、彼女から少し距離をおいた。
「ん? 何をするつも……おっと!」
チナはプラが投げたマリを両手で受け止めた。
「ナイスキャッチ」
プラは笑顔でそう言った。
「……ふふふ、なるほどな」
チナも笑顔でマリを投げ返した。
二人はしばらくキャッチマリを堪能した。