表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
プラとチナの二人旅  作者: ジョン
51/70

綱に導かれて

「何だ、この白いのは?」


チナが言った。


彼女の足元に白い綱の様な物が置かれている。


「ここから……随分先まで伸びているわね。先端が見えないわ」


プラが言った。


「まるでアタシらの行く末を暗示しているかの様だな」


「……急に重いこと言わないでくれない? 心なしか両足が重くなった気がするわ」


「それはただの太りすぎだろ」


「わぉ、ストレートね。ならお返しに私もストレートを」


「こらこら、暴力反対だ」


「反対? 暴力の反対って何かしら?」


「暴……技?」


「暴技。まさに力と技は表裏一体といったところね」


「どちらも相手に危害を加えそうな語感をしているが?」


「悲しいけど、人は争いを避けられない存在なのかもね」


「そんな悲しいこと言うなよ。泣けてくるじゃないか」


「あら? いつ玉ねぎを切ったのかしら?」


「おいおい、ヘビーな雰囲気が台無しだな」


「私達に重苦しい空気という名のドレスは似合わないわ」


「ドレスだと? どこかでパーティーでも行われているのか?」


「愚問ね。あんたはいつでもどこでもパーティー気分でしょ?」


「つまり、アタシ自身がパーティーだと?」


「……ああ、そっちの解釈になるのね」


「ふむ、常日頃からパーティーモードという訳か……それは少し疲れそうな気もするな」


「贅沢な悩みね」


「悩みより贅沢な食事が欲しいよ」


「あらま、贅沢な要求」


「もしかしたら、この綱を辿っていった先にご馳走があるかもしれない」


「それはなんともまあ、前向きな妄想ね」


「アタシを妄想家扱いするか。いいだろう、妄想かどうか確かめに行こうじゃないか」


「……この綱をたどって行くと?」


「ああ」


「はぁ、あんたも暇人ね」


「他にやることがあるとでも?」


「……ないけど」


「ならお前も暇人だな。暇人どうし、仲良く綱に導かれようじゃないか」


「まったく、しょうがないわね」


二人は綱をたどりながら歩き始めた。




「……おお、これはなんとも」


「ええ、見事なものね」


二人のたどっていた綱は海沿いの崖で途切れていた。


そして、その崖の向こうの海から、真っ赤な夕日が顔を出していた。


「綱をたどっていたら、いつの間にか夕暮れ時になってしまったな」


チナが言った。


「まったくね。でも、そのせいで素敵な物をお目にかかれたわ」


プラが言った。


「だな。さてと、それじゃあ引き返すか?」


「……いや。せっかくだし、もうちょっと太陽とにらめっこしましょう」


「オーケー。付き合うぜ」


二人はしばらく、夕日を眺め続けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ