表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
プラとチナの二人旅  作者: ジョン
49/70

仮面を着けて

「どうよこれ?」


チナが言った。


彼女の顔には仮面が取り付けられていた。


「……どこのゴミ捨て場から拾ってきたの?」


プラが尋ねた。


「ゴミ扱いは心外だな。さっきの町の露店商から買ったんだ。割りと高かったがな」


「まーた無駄遣いして。今夜は飯抜きね」


「そりゃあんまりだ。この顔に免じて勘弁してくれ!」


「……肝心のその顔が見えないのだけど」


「おっとそうだった……これでいいか?」


仮面を外したチナが言った。


「……あからさまに不便そうなんだけど。なんでそんなもの買ったわけ?」


プラが尋ねた。


「深い理由はないよ。ただかっこよさげだから買ったんだ」


「ほんとに深くない理由ね。仮面なんて着けてても、前が見えにくくなるばかりで、いいことなんてないと思うけど」


「そんなことはない、仮面があれば本来の自分を隠して別人になれるだろ。いつもの自分では不可能なことも可能にできるようになるのさ」


「常日頃から厚顔無恥なあんたにできないことなんてないでしょ」


「それ、誉めてるのか?」


「ある意味、ね」


「……素直に喜べないな」


「ぜひとも喜んでちょうだい。あんたのそのワニ並に厚いのツラの皮。時々羨ましく思うのだもの」


「羨ましい? 何故だ?」


「だって、そんなに恥知らずなら、悩みの種も朽ち果ててることでしょ?」


「相も変わらず失礼な奴だ。アタシにだって悩みのひとつやふたつ存在している」


「え!」


「うわっ、すごい驚愕したな。そこ、驚くとこじゃないだろ」


「……失礼、私としたことが、大声出してはしたなかったわね」


「まったくだ。アタシじゃないんだから」


「自分が厚顔無恥なことは認めるのね」


「彼を知り己を知れば百戦あやうからずだからな」


「何と戦っているのよ?」


「昨日の自分自身」


「わぁ、ストイック。ふざけた仮面着けてる奴の台詞とは思えないわね」


「別にふざけてはいないだろ。今世紀最大にいかしてるの間違いだ」


「ふーん。ま、何でもいいけど足元には気を付けなさいよ」


「おい! なんだその冷めた反応……うわっ!」


チナは石につまずいてその場に転んだ。


「ほら、言わんこっちゃない。大丈夫?」


「あ、ああ。仮面のおかげで顔を打たずにすんだ。買って正解だったぜ」


「いや、その仮面のせいで転んだんじゃないのよ」


「……返す言葉もない」


チナは紅潮した顔を仮面で隠した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ