表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
プラとチナの二人旅  作者: ジョン
43/70

オノを拾って

「あー、何か面白いこと起きないかな」

林道を歩くチナが言った。

「あんたの顔より面白いものなんて、そうそうこの世に存在しないわよ」

隣を歩くプラが言った。

「……面白くない冗談言うじゃないか、やる気か?」

「冗談じゃないわ」

「ん? 今の冗談じゃないわ、は何が冗談じゃないんだ?」

「さて、何だったかしら」

「記憶喪失か。お気の毒に」

「そんな毒にも薬にもならない話はいいとして、あれは何かしら」

「ん?」

チナはプラの指さした方向に目をやった。そこには、地面に刃の突き刺さった一本のオノがあった。

「オーノー! あれはオノだぜ」

「ぐわぁあああ! 氷河期! 全生物の命の灯が消えるわ」

「……そんなに今の寒かった?」

「うん」

「即答。シンプルに傷つくな」

「何よ身から出たサビでしょうに」

「サビてるのはあのオノの方だろ? とりあえず見に行ってみようぜ」

二人はオノの元に近寄った。

「んー、特に面白くないな普通のオノだ」

「こんなところに刺さってる時点で普通には程遠いと思うけど」

「あっ、そう言えばオノと言えば、ひとつ面白い話を耳にしたことがあるぞ」

「唐突ね。どんな面白い話なの? あ、面白くなかったら罰ゲームね」

「……」

「……ああ、ごめん。罰ゲームはナシだから話してみて」

「いいだろう。あるとき、とある木こりが湖にオノを落としてしまってな……」

「ああ、湖から女神が出てきて」

「おい! ネタバレするな!」

「ネタバレではないでしょ。あと、ごめんその話知ってるわ」

「なんだ面白くないな。このままじゃ面白くないことの集中攻撃でアタシはどうにかなってしうぞ」

「いや、あんたデフォルトでどうにかなってるじゃないの」

「ははは、面白いこと言うじゃないか」

「よかったわね。面白いことが見つかって」

「いや、良くない! ……こうなったらこのオノを近くの湖に落とすしかないな」

「なぜそうなる」

「本当に湖に女神がいるか確かめるんだ。面白そうだろ?」

「あんたも堕ちたわね。ただの好奇心で湖にオノを不法投棄した挙げ句、女神の眠りを妨げようというなんて」

「……それはそうだな」

「よかった。踏み止まってくれたようね」

「ああ。ありがとう、プラ。おかげで人の道を踏み外さずにすんだよ」

「いや、とっくの昔に脱線してると思うけど」

「何か言ったか?」

「別に。もう一度言うほど面白いことじゃないわよ」

「ならいい。で、このオノはどうする?」

「次の町で専門店に引き取って貰いましょう……それに運がよければ……」

「よければ?」

「買い取り金が手に入るかもしれないわ」

「ははは! そりゃいい! 女神から金のオノを頂くより現実的だ!」

二人は邪悪な笑みを浮かべながら町へ向かった。

しかし、そのオノは一文にもならなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ