寝袋を手に入れて
「うーっ、さぶっ!」
プラが体をさすりながら言った。
「……アタシのギャグが、か?」
チナが尋ねた。
「そうじゃなくて……いや、それもそうだけど」
「おい」
「あんたが言ったんじゃないのよ」
「ああ、墓穴を掘ったな。で、何が寒いと言うのだ?」
「この気温よ。ここ最近、さむくて堪らないわ。もう体中鳥肌だらけ。完全に鳥になるのも時間の問題ね」
「いや、それはないだろう」
「……冷静な突っ込みどうも。あんたは平気なの、平然としているけど?」
「当たり前さ。子どもは風邪の子だからな」
「風の子でしょ」
「おっと、そうだったな。何とかは風邪を引かないからな……って誰が何とかじゃい!」
「一人ノリ突っ込みどうも。きっと感覚が鈍すぎて、寒さを感じないのね。うらやましい限りだわ」
「そうだろ」
「……ほめたつもりはないのだけど。まあ、そんなことはどうでもいいわ、何か防寒具が欲しいわね」
「それなら取っておきのがひとつあるぞ」
そう言うとチナはバッグをあさり始めた。
「へぇ、気が利くじゃないの。何かしら?」
プラが尋ねた。
「へへへ、こいつだぁ!」
そう言ってチナがカバンから取り出したのは一人用の寝袋だった。
「……」
「……どうした?」
「……よく、そんなものカバンに入ったわね」
「おいおい、違うだろ。そこは、こんなもん着て歩けるかーい! だろ」
「分かってんじゃないのよ」
「おう」
「おう、じゃないわよ。他に何かないの?」
「あいにく防寒具らしきものはそれぐらいしかないな」
「まあ、ないよりはマシ……とも言いがたいわね。まあ、今夜使わせてもらうわ」
「ぜひ、そうしてくれ」
そして、その日の夜。
「さて、もう寝ましょうかしら」
プラが言った。
「そうだな。お休み」
そう言うとチナは深い眠りに着いた。
「相変わらずのスピードね。こんな寒空の下、毛布もかけずによく寝れるわね」
「……ぐー……ぐー」
「……私も寝よう」
そう言うとプラはチナにもらった寝袋に入った。
しかし、しばらくしてプラは起き上がった。
「さっぶ!! なによこの寝袋、死ぬほど薄いじゃないのよ!」
プラは体をさすりながら言った。
「くぅーっ、油断したわ、完全に鈍感な人間用の寝袋じゃない! こんなの使っても使わなくても同じだわ!」
「なら、一緒に入ろうぜ」
プラが振り返ると、そこには目を開けたチナの姿があった。
「二人一緒にその寝袋に入れば、きっと暖まるさ」
チナが言った。
「……背に腹は代えられない、か」
二人は一人用の寝袋に二人で入った。
「……」
「……」
「……なぁプラ」
「分かってるわ。せーので言いましょう」
「ああ」
「せーの」
「「きっつい!!」」
寒空に二人の嘆き声が響いた。