ビッグになりたくて
今日もプラとチナは森の中を歩いていた。
「……」
「……おっとと」
「……」
「……ととと」
「……そろそろ突っ込もうかしら。なんであんたつま先立ちで歩いているの?」
プラが尋ねた。
「……ふぅ、随分と長い間、放置してくれたな。おかげで私はいい晒しもんだ」
つま先立ちを止めたチナが言った。
「あんたが勝手にやってたんでしょうが。で、なにゆえ?」
「シンプルな解さ。少しでも自分を大きく見せたくてね」
「いや、その為につま先立ちをするっていくらなんでも地味過ぎるわよ。というか、あんた私より身長あるじゃないのよ。贅沢言ってるとはたいて、その背、縮めるわよ」
「やれやれ、これだから最近の若者は、身長だけでなく気も短くてしかたない」
「あんただって最近の若者じゃないのよ」
「そりゃそうか。じゃなくてだな」
「何よ」
「お前に勝つ程度の体の大きさじゃ、この危険ばかりの潜む世界で生きて行けないと言いたいんだ」
「随分はっきり言ってくれるじゃないの、むしろ清々しいわ。でもどうせやるならもっと思い切ってでかくなりなさいよ」
「ほう、例えば?」
「そうねぇ……もっと筋肉をつけるとかは?」
「面倒臭そうだな。却下」
「いきなり努力を拒否!? 小さい! 体以前に人としての器が小さい!」
「そんなこと言ったって、努力するのは面倒臭いに決まってるだろ?」
「そうね」
「……認めるのかよ。お前も大概、器がミニマムだな」
「いいのよ、態度はでかいから」
「自覚があったのか」
「まあね。で、結局の所、あんたは努力なしの、付け焼き刃のデカさが欲しいって訳ね」
「バラのようにトゲのある言い方だが、まあそう言うことだ」
「そうなると手段は限られて来るわね」
「というと?」
「……ズバリ! ファッションを変えるしかなさそうね」
「金がかかるな。却……」
「少しは妥協しろ! というかあんたはいつも独断で変なモン買ってるでしょうが!」
二人は次の街に着くと、服屋に寄った。
「……で、散々迷ったあげくに選らんだのがそれだと」
服屋を後にし、再び森の中を歩くプラが言った。
「おう」
そう答えるチナの両肩には大きめの肩パッドが装着されていた。
「あの店、何でこんなもの置いてるのかしら……一応、それを選んだ理由を聞かせて頂こうかしら?」
「シンプルな解さ。肩幅が広いと体が横に大きく見えるからだ」
「ホントに単純な思考回路してるわね。それにそれ、結構いいお値段したし」
「そんな小さいことはいいじゃないか、今のアタシの大きさで元を取ってやるからさ」
「元って……どうやってそんなもの取るっていうのよ」
「それはだな……おっ、こっから先は細道だな」
そう言うとチナは両肩の肩パッドをはずした。
「は? なんではずすのよ?」
プラが尋ねた。
「なんでって、こんな細道歩くのにこんなものつけてたら邪魔で仕方ないだろ」
「……だったら最初からそんなもの買うなぁ!」
プラの怒号が森中にこだました。