青空を見上げて
「何て青く澄み渡った綺麗な空なんだ。こりゃ寝るしかないな」
丘ノ上で大の字に寝転がったチナが言った。
「なーに勝手に休憩してるのよ。まだ街から全然歩いてないわよ」
仰向けのチナの顔を上から覗き込んだプラが言った。
「そう固いこと言わずに、お前も大地に身体を投げ出してみろ。気分が晴れるぞ」
「そう、じゃあお言葉に甘えて」
そう、言うとプラも丘の上で仰向けに寝転んだ。
「……相変わらず、話の分かる奴だな」
「そんぐらい柔軟じゃなきゃ、あんたのツレなんか勤まらないわよ」
「ははは そりゃそうだ!」
「ふふ……それにしても、何て青々とした空なのかしら、気持ちがいいわね」
「ああ、日頃の疲れが空に吸い取られていく感じだ」
「……驚きねあんたにも疲れという概念が存在したなんて」
「……相変わらず、失礼な奴だな。私だって疲労ぐらいたまるさ、もう身体中の骨という骨が痛くて痛くて」
「そ、そう。いや、いくらなんでも言い過ぎでしょう。あんたまだ若いんだから」
「ははは、冗談冗談。この通りピンピンしているよ。まさに疲れ知らずって奴だな」
「いや、疲れているのかいないのかどっちなのよ」
「まあ、そんな細かいことはいいじゃないか。この広大な青空に比べたら、そんな些細なことちっぽけなものだよ」
「なーに都合よく空に逃げているのかしら。あんたは鳥でも天使でもないのよ」
「アタシには翼がないって言いたいのか? あいにく翼なんていらないよ。空を飛べるようになってしまったら、二度とこの広大な大地を、わざわざ踏み歩こうとは思えなくなってしまう気がするからね」
「なにそれ。街から数歩のところで休憩とってる奴の言葉とは思えないわね」
「だったらもう行くか?」
「……いや、もう少しこうしていましょう。せっかくの青空だもの」
「おう、羽休めって奴だな」
「いや、だから羽があるのかないのかどっちなのよ」
「まあ、そんな細かいことはいいじゃないか。この広大なそらに比べたら、そんな些細なことちっぽけなもの……」
「おーい、会話がループしてますよー」
「この果てしなく続く青空の様に?」
「そうね」
「おい、そこは流すのかよ」
「ええ、さながら青空を流れる雲の様に、ね」
「上手い。座布団一枚」
「ありがとう。枕代わりに使わせて頂くわ」
「ああ、ずるい! アタシにも座布団おくれよ」
「あんたには羽があるんでしょう。重力なんてなんのその、でしょう?」
「うう、身から出た錆か。じゃあいいや、羽は十分に休めたし、先に行ってるよ」
そう言うとチナは起き上がり、服に着いた土を手ではたきおとした。
「ああ、ちょっと! 待ちなさいよ!」
プラも同じく起き上がった。
「はは! 早く行こうぜ。アタシらはまだ旅の途中だ、立ち止まっている暇なんてないのさ」
チナが笑顔で言った。
「まったく、先に立ち止まったのはどっちよ……ふふ」
プラも笑顔でそう言った。
青空からパワーを貰った二人は再び歩き始めた。